トラックレコード検証2026-06-26 公開

「この指標を見れば勝てる」の8割は、ものさしを変えると逆転する——連動シグナルを199社・21年で実測

「この指標と連動が強まったら買う」——バックテストで“勝てる指標”を見つけた、という話はあふれています。でも、その『勝ち』は本物でしょうか。199銘柄×46指標で実測すると、市場平均に勝って見えた指標の79%が、窓やしきい値という“ものさし”を少し変えるだけで負けに転じました。しかも連動が一番強い株ほど勝てるわけでもない。①強さ ②向き ③頑健性の3つで確かめた結果です。

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何を検証したのか

連動は「過去に一緒に動いた」という記述です。それが「これから儲かる」という予測に使えるかは、まったく別の話。そこを混同しないために、結果を見る前にルールを固定した上で、完全に機械的(目視ゼロ)に検証しました。共通の作りはこうです。

検証1:連動の「強さ」で買う

連動が強い(|r|≥0.5)レジームに入った株を買う群、無相関(|r|<0.2)の対照群、全銘柄のベースラインを比べます。6ヶ月保有:

6M勝率6M中央値
①相関あり(|r|≥0.5)59.7%+4.55%
②相関なし(対照)58.5%+3.68%
③ベースライン(全銘柄)59.3%+4.30%

3群はほぼ区別不能。「連動が強い」というだけでは、市場平均を上回りませんでした。

検証2:連動の「向き」で買う

強さに予測力がないなら、向きを条件づければどうか。シグナル方向 = sign(相関r) × sign(統計の直近変化) で株の動く方向を当てにいき、当たれば勝ち(無スキルなら勝率50%が基準)。

1M勝率3M6M
①方向一致50.1%50.0%49.1%
②対照(無相関)49.7%49.8%50.1%

向きを当てにいっても、勝率は50%=コイン投げ。連動の符号は将来の方向を教えてくれませんでした。

検証3(本丸):その「勝ち」は8割が“切り取り”次第だった

ここが本丸であり、この記事のいちばん言いたいところです。指標を46本に増やすと、シグナル時が市場平均に勝って見える指標も出てきます(豪ドル円 +7.7pt など)。SNSやバックテストで「この指標で勝てる」と言われるのは、たいていこの段階の数字です。でも——窓やしきい値という「ものさし」を少し変えれば、どの指標でも勝って見せられるのでは? それを潰すため、同じシグナルを窓(24/36/48ヶ月)× しきい値(0.4/0.5/0.6)=9通り期間の前半/後半で測り直しました。本物の予測力なら、どの切り取り方でも一貫してプラスのはずです。

調べたこと結果
窓・しきい値を変えるとエッジの符号が反転した指標48本中38本(79%)
9通りの平均エッジ(シグナル勝率−市場平均勝率)中央 +0.59pt/平均 +0.15pt = ほぼゼロ
前半・後半とも市場平均を上回った指標9/37本
「9通り全勝」かつ「前後半とも勝ち」の両方を満たした指標実質1本(豪ドル円)だけ

79%の指標が、ものさしを少しずらすだけで勝ち負けが逆転しました。これは「切り取り方しだいで何でも勝って見える」というノイズの典型的な姿です。46本も試せば、偶然どれかが全テストを生き残るのは当たり前(多重比較)。唯一しぶとく残った豪ドル円も、「資源国通貨↔資源・商社株」という構造的に説明のつく既知の連動であって、「連動が強い株なら何でも買えば勝てる」という汎用法則の証拠ではありません。

3本通しての結論

強さ・向き・頑健性のどれで見ても、連動シグナルは将来の株リターンを当てませんでした(一貫して null)。これは残念な結果ではなく、誠実な結果です。

同じ指標を自分で動かして確かめられる連動シグナル シミュレーターと、会社名つきで噛みくだいた記事の株を毎年1月に買ったら?もあわせてどうぞ。

基準日:2026年6月26日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。数字の読み方もあわせてご覧ください。

出典:株価=Yahoo Finance(月次・調整後終値・199銘柄)。統計=e-Stat(政府統計ダッシュボードAPI)等の月次系列46本。検証コードは公開リポジトリの scripts/trackrecord_eventstudy.py・trackrecord_v2_directional.py・trackrecord_robustness.py。

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