統計検証2026-06-19 公開
企業倒産が増えると弁護士・法務株は上がるのか——倒産件数×リーガル2社を実測
「企業倒産が増えれば、法的手続きへの需要が高まり、弁護士・法務サービス株が恩恵を受ける」——この連想は直感的に筋が通るように見える。だが過去データはどう答えるか。倒産件数(月次)と弁護士ドットコム・アシロの株価前年比を突き合わせたところ、どちらも負の相関が出た。仮説は実測では逆だった。
検証方法
- 統計:企業倒産件数(e-Stat「企業倒産件数」月次、負債1,000万円以上)の前年同月比
- 期間:倒産件数は2004年1月〜2026年5月(全281ヶ月)
- 株価:各社の月次終値(調整後)の前年同月比。Yahoo Finance経由
- 測定窓:全期間(full)・COVID除外(2020〜2021年除く)の2パターン
- ラグ走査:0〜6ヶ月(表のrはベストラグの値)
- 基準:|r|≧0.40=連動あり / 0.25〜0.39=弱い傾向 / 0.25未満=ほぼ無相関(当サイト基準)
⚠️ 弁護士ドットコム(6027)の上場は2014年12月で、データ重なりはn=126ヶ月(full)。アシロ(7378)は2022年7月上場でn=45(参考値。n<60は当サイトでは参考値として扱う)。
実測結果
| 銘柄 | コード | r(full) | ラグ | n | r(COVID除外) | ラグ | n |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 弁護士ドットコム | 6027 | -0.25 | 0ヶ月 | 126 | -0.23 | 0ヶ月 | 102 |
| アシロ | 7378 | -0.50※ | 3ヶ月 | 45 | -0.50※ | 3ヶ月 | 45 |
※ アシロ(7378)はn=45(参考値。n<60のため確定的判断は留保)。
弁護士ドットコムのr=-0.25は当サイトの「弱い傾向」ゾーン下端。アシロのr=-0.50はn不足で参考値扱いだが、方向性は一致して負の相関(倒産増=法務株安)だ。仮説(倒産増→株高)と逆の結果になった。
なぜ仮説と逆が出るのか
倒産件数が増加する局面は、通常景気後退期と重なる。景気後退では全体的にリスク資産が売られ、中小型株・成長株は特に下落圧力を受けやすい。弁護士ドットコムもアシロも規模が小さく、「倒産案件の需要増という実態」よりも「景気悪化によるリスクオフ」のほうが株価に強く効いた可能性がある。
また実際の破産・倒産案件は弁護士個人(法律事務所)に流れることが多く、プラットフォーム型の法務サービス株への直接的な収益貢献は限定的だという事業構造上の問題もある。
これは「直感的に筋が通る仮説でも、データが逆を示すケースがある」という典型例で、連動辞書として残す価値がある実測結果だ。
「倒産件数×銀行株」との比較
同じ倒産件数を使って銀行株(三菱UFJ・三井住友など)を測定した別記事では、メガバンクで最大r=+0.23(正の方向・連動弱い)が出ている。セクターによって方向さえ変わることは、統計×株の連動が単純な話でないことを示す。
データの制約と注意
- 弁護士ドットコム上場(2014年末)以降のデータしか存在せず、リーマンショック前後(2008〜2009年の大倒産増加期)を含まない
- アシロのn=45は当サイト基準(n≧60)を下回るため参考値
- 相関係数は時期によって変化・消失する。2026年現在の連動が将来も続く保証はない
- 過去データの記録であり、特定銘柄の売買推奨ではない
基準日:2026年6月19日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。数字の読み方もあわせてご覧ください。
出典:倒産件数: e-Stat「企業倒産件数」(0701060100000010010)2004年1月〜2026年5月。株価: Yahoo Finance(月次調整後終値)。測定: 2026年6月19日。