統計検証2026-06-12 公開

クリーニング代と理美容支出——出社回帰・外出回帰は株価に効くか

スーツをクリーニングに出す回数は「出社の頻度」を、床屋に行く頻度は「人と会う・外に出る頻度」を映すはず——コロナ後の出社回帰・外出回帰が進めば、紳士服店や通勤路線、理髪チェーン、化粧品の株も動くのでは? そう考えるのが自然です。家計調査(二人以上世帯)の「洗濯代」(クリーニング・洗濯支出)と「理髪料」(理美容サービス支出)の全国・月次系列のYoYを、関連する5銘柄の株価YoYと突き合わせました。

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検証方法

事前の仮説(判定前に固定)

判定する前に、こう予想しました——クリーニング支出はスーツ出社の代理指標。出社が戻れば、スーツを着る機会が増え、クリーニング代も増える。ならば紳士服の青山商事・AOKI、通勤路線のJR東日本と正の相関が出るはず。一方、理美容支出は外出・対面回帰の代理指標。人と会う機会が増えれば床屋・美容室の利用も増える。ならば理髪チェーンのQBハウス(キュービーネットHD)、化粧品の資生堂と正の相関が出るはず。いずれも判定前に固定した仮説です。

結果①:クリーニング支出 — 紳士服も鉄道も、いずれもほぼ無相関

銘柄r(COVID除外)ラグ
青山商事 8219(紳士服)+0.064ヶ月
AOKIホールディングス 8214(紳士服)+0.064ヶ月
JR東日本 9020(鉄道)+0.066ヶ月
クリーニング支出(家計調査・洗濯代)と各銘柄の株価YoYの相関。青山商事・AOKI・JR東日本いずれも+0.06前後でほぼ無相関。出社回帰の代理指標は株価に効かなかった。
クリーニング支出(家計調査・洗濯代)と各銘柄の株価YoYの相関。青山商事・AOKI・JR東日本いずれも+0.06前後でほぼ無相関。出社回帰の代理指標は株価に効かなかった。

符号はすべて仮説どおりの正でしたが、強さは3銘柄とも+0.06前後とほぼゼロ。コロナ期を含めたフル期間でも青山商事+0.18・AOKI+0.16・JR東日本+0.13止まりで、いずれも基準(|r|≧0.40)に遠く届きません。「スーツをクリーニングに出す=出社が戻る=紳士服・通勤鉄道株が動く」という連想は、過去データでは確認できませんでした。

結果②:理美容支出 — QBハウスがフルで+0.45まで届くが、中身は参考値

銘柄r(COVID除外)ラグ
キュービーネットHD 6571(QBハウス・理髪)+0.386ヶ月
資生堂 4911(化粧品)-0.13同月

理美容サービスに最も直結するQBハウス(理髪チェーン)は、コロナ期を含むフル期間で+0.45(ラグ6ヶ月・n=82)と基準の0.40を超えました。ただし中身を見ると、これは頑健な連動とは言えません。理由は3つです。①QBハウスは2018年上場で、YoYが取れるのは2019年3月以降=サンプルがコロナ期に偏った短い系列(n=82)。②コロナ期を除くと+0.38(n=58)に下がり、基準を割り込みます(しかもn<60の参考値)。③同月〜ラグ2ヶ月では相関ほぼゼロで、ラグを6ヶ月まで延ばしたときだけ数字が立ち上がる形で、これは見かけのトレンド一致の可能性が高い動き方です。一方、化粧品の資生堂は-0.13とむしろわずかな逆相関で、こちらは仮説と逆でした。

なぜ効かない/頑健にならないのか(考えられる理由)

結論:「出社回帰・外出回帰」は、まだ株価のシグナルになっていない

クリーニング支出(洗濯代)は紳士服・鉄道いずれともほぼ無相関、理美容支出(理髪料)はQBハウスがフル期間で+0.45に届くものの、コロナ期に偏った短い系列・コロナ除外では基準割れ・ラグ6ヶ月限定という頑健性の欠ける参考値でした。化粧品の資生堂はむしろわずかな逆相関です。「スーツをクリーニングに出す」「床屋に行く」といった生活の動きが出社・外出の回帰を映していたとしても、それが紳士服株・鉄道株・理髪チェーン株・化粧品株の値動きを説明する力は、過去データでは確認できませんでした。当サイトの方針どおり、効かなかった結果もそのまま記録します。

基準日:2026年6月12日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。数字の読み方もあわせてご覧ください。

出典:クリーニング支出(洗濯代)・理美容支出(理髪料)は家計調査(総務省/e-Stat 統計表0004023601・品目分類別支出金額・二人以上の世帯・全国・月次)、株価はYahoo Finance(調整後終値)

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