相関×勝ち筋検証2026-06-14 公開 ・ 2026-06-28 改訂
「銅は景気の博士(Dr.Copper)」は本当か——銅先物×非鉄・電線株5銘柄で実測
「銅は景気の博士(Dr.Copper)」——銅価格は世界景気の体温計だという定番の言説があります。銅は建設・インフラ・家電・自動車など幅広い用途に使われるため、需要が増えれば世界景気が好調、という発想です。大手メディアでも繰り返される通説ですが、当サイトは一次データで実測して初めて「本当かどうか」を判断します。本記事では銅先物(Yahoo Finance・HG=F)の月次YoYと、非鉄・電線株5銘柄の株価YoYを同月で照合しました。関連として、銅カナリア記事(銅×日経=温度計)が日経との連動を検証していますが、本記事は非鉄・電線個別株版として連動辞書に登録します。
| わかること | わからないこと |
|---|---|
| 過去に市場平均を上回った非鉄・電線株 | 今後上がる銘柄 |
| 銅先物と相関が高かった銘柄 | 現在買うべき銘柄 |
| 連動の強さと市場超過が一致しなかったこと | 個別の売買タイミング |
| 相関だけで選ぶ罠(三菱マテリアルが市場超過マイナスだった実証) | 空売りを勧める銘柄 |
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 検証テーマ | 銅先物(Dr.Copper)と相関が高い非鉄・電線株5銘柄は、買っていたら市場平均に勝てたか |
| 相関も市場超過もあり(検証上の本命) | 住友鉱山(+5.9%) |
| 相関は高いが市場超過は弱い(罠ゾーン) | 三菱マテリアル(−3.8%) |
| 相関は低いが市場超過あり(別要因) | 住友電工(+3.1%)・フジクラ(+32.6%)・古河電工(+1.9%) |
| 注意点 | 全5社が2007〜2008年に▲46〜55%の一斉下落(同じ世界景気サイクルへの隠れた集中) |
銅は非鉄株の温度計。でも買いサインではありません。連動の強さと市場超過は別物です。連動最強の住友鉱山(銅相関+0.624)は市場超過もプラスの本命でしたが、連動2位の三菱マテリアル(+0.508)は市場超過−3.8%の罠でした。電線株フジクラの平均超過+32.6%は、銅ではなくデータセンター・光ファイバー需要という別要因です。
まずは表の〈判定〉〈平均超過〉〈最悪年〉の3つだけ見ればOK。用語は用語ミニ辞書へ。「勝てた」=市場平均を上回った意味で、儲かったとは限りません。
検証方法
- 銅先物:Yahoo Finance(HG=F・月次・前年比YoY)を使用
- 各銘柄の株価:Yahoo Finance(調整後終値・月次YoY)
- ラグ0〜6ヶ月で走査——全銘柄でlag0(同月)が最強または同水準
- 全期間(約2001年〜2026年・n=212)とコロナ除外(2020〜2021年除く)を併記
- 銘柄選定:採掘・製錬側の非鉄株(住友鉱山・三菱マテリアル)と、銅を材料として使う電線株(住友電気工業・フジクラ・古河電気工業)の5銘柄
結果:非鉄株は素直に連動、電線株は中程度
| 銘柄(業種) | 全期間 同月 | コロナ除外 | 分類 |
|---|---|---|---|
| 住友鉱山(5713) | +0.624(n=212) | +0.604 | 非鉄・鉱業 |
| 三菱マテリアル(5711) | +0.508(n=212) | +0.545 | 非鉄 |
| 住友電気工業(5802) | +0.374(n=212) | +0.365 | 電線 |
| フジクラ(5803) | +0.325(n=212) | +0.317 | 電線 |
| 古河電気工業(5801) | +0.260(n=212) | +0.269 | 電線 |

非鉄(採掘・製錬)の住友鉱山+0.624・三菱マテリアル+0.508は当サイトの基準(|r|≧0.40)を超え、判定は「過去連動あり」です。電線株3社は+0.26〜+0.37で中程度。出典:銅先物 Yahoo Finance(HG=F・月次)、株価Yahoo Finance、相関は当サイト算出(YoY×YoY同月)。基準日2026-06-14。
なぜ非鉄株が連動するのか(見立て)
住友鉱山・三菱マテリアルは銅の採掘・製錬が本業です。銅価格が上がれば直接的に収益が増え、株価もそれを映します。銅を世界市場から買ってくる側であるため、「銅価格が景気を映す → その銅の採掘・製錬株も景気を映す」という伝達経路がシンプルです。
ただしこれは「見立て(仮説)」です。実際には銅以外の金属(ニッケル・金など)の価格動向、為替、個社の生産体制なども影響します。
電線株はなぜ中程度か(見立て)
住友電気工業・フジクラ・古河電気工業は銅を材料として使う側です。銅価格が上がると、材料コストが増加します。一方で製品価格への転嫁が遅れることもあり、採掘・製錬側ほど素直に銅価格と連動しません。
⚠️ただしフジクラについては、近年データセンター向け光ファイバーや電力インフラ需要という別要因も業績に影響していると見られます(あくまで見立てです)。電線株3社の+0.26〜+0.37は「連動あり」の基準には届かない水準です。
最重要:「先行でなく同月一致」——先回りはできない
全5銘柄でlag0(同月)が最強でした。これは銅価格が動く月にすでに非鉄・電線株も動いていることを意味します。「銅先物が上がったら翌月に非鉄株を買う」という先回りの使い方はデータで支持されません。
銅価格と非鉄株は「同じ世界景気の動きを同時に反映している」のです。当サイトが繰り返してきた「観測値は先行しない」という知見は、この教科書的なペアでも変わりません。
コロナ除外でも結論は変わらない
2020〜2021年のコロナ期を除外しても、非鉄2社の連動は頑健です。住友鉱山(+0.624→+0.604)・三菱マテリアル(+0.508→+0.545)——コロナを除いても+0.5以上の水準を維持します。コロナの大振れに支えられた見かけの数字ではありません。
相関の結論:銅は非鉄株の温度計(連動の有無)
まず連動の面では、「銅は景気の博士(Dr.Copper)」という定番は非鉄(採掘・製錬)株では本当でした。住友鉱山+0.624・三菱マテリアル+0.508で連動。電線株は材料を使う側で+0.26〜+0.37の中程度。ただし先行でなく同月一致であり、先回りには使えません。銅は非鉄株の「温度計」として機能しており、世界景気と非鉄株のどちらを見ても同じ方向に動いている確認手段としての価値があります。
この5銘柄を買っていたら、市場平均に勝てたのか
銅先物(Dr.Copper)と相関が高いこの5銘柄を、毎年1月に等金額で買って1年保有した場合(2005〜2025年・21年)の成績です。比較する「市場平均」は、当サイトの検証対象199社を等金額で保有した平均で、TOPIXや日経平均ではありません。平均超過(各年の株リターン−市場平均の平均)がプラスかどうかで判定します。
| 銘柄 | 銅先物 との相関 | 市場平均に 勝った年 | 市場との差 (年・平均) | いちばん下げた年 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 住友鉱山(5713・非鉄) | +0.624 | 11/21 | +5.9% | 2008年 ▲50% | 相関も市場超過もあり |
| 三菱マテリアル(5711・非鉄) | +0.508 | 4/21 | −3.8% | 2008年 ▲46% | 相関は高いが市場超過は弱い(罠) |
| 住友電気工業(5802・電線) | +0.374 | 7/21 | +3.1% | 2008年 ▲55% | 相関は低いが市場超過あり(別要因) |
| フジクラ(5803・電線) | +0.325 | 11/21 | +32.6% | 2018年 ▲55% | 相関は低いが市場超過あり(別要因) |
| 古河電気工業(5801・電線) | +0.260 | 9/21 | +1.9% | 2007年 ▲47% | 相関は低いが市場超過あり(別要因) |
「連動が強いから買えば市場に勝てる」は、成立しませんでした。連動最強の住友鉱山(+0.624)は平均超過+5.9%・市場超え11/21で本命でしたが、連動2位の三菱マテリアル(+0.508)は平均超過−3.8%・4/21と市場平均を下回りました。同じ「銅と連動する非鉄株」でも結果が分かれます。電線株のフジクラは平均超過+32.6%と突出しますが、これは銅価格ではなくデータセンター・電力インフラ向け需要という別要因が主因で、銅相関自体は+0.325と基準(0.4)未満です。相関の数字だけでは本命と罠を見分けられませんでした。

相関 × 市場超過(4象限で見る)
銅先物との相関の高さと「市場平均に勝てたか(平均超過がプラスか)」は別物でした。掛け合わせると、こう分かれます。
| 平均超過がプラス | 平均超過がゼロ以下 | |
|---|---|---|
| 相関が高い(|r|≧0.4) | 検証上の本命:住友鉱山 | 罠ゾーン:三菱マテリアル |
| 相関が低い | 別要因:住友電工・フジクラ・古河電工 | 説明しにくい:(今回は該当なし) |
銅の採掘・製錬が本業の非鉄2社でも、住友鉱山は本命・三菱マテリアルは罠ゾーンと分かれました。電線株3社は銅相関こそ基準未満ですが、市場超過はプラス(別要因)——特にフジクラはデータセンター需要で近年大きく市場超過を稼いでいます。連動の強さと市場超過は一致しません。
「罠ゾーン」は売り候補ではありません。相関だけで銘柄を選ぶと過去に市場平均を下回ることがあった、という注意ゾーンを指します(避ける・保有を点検する材料であって、空売りを勧めるものではありません)。
| 見ること | 意味 |
|---|---|
| ① 相関だけで選ばない | 相関が高くても市場平均に勝てない銘柄がある |
| ② 平均超過を見る | 勝った年数より、平均して市場を上回ったかを見る |
| ③ 最悪年を見る | 勝ち筋があっても、急落時に深く沈む銘柄がある |
| ④ 連動最強 ≠ 成績最強 | 相関No.1の銘柄が、市場超過でもトップとは限らない |
| ⑤ 罠ゾーンを避ける | 高相関でも市場に勝てない銘柄に、飛びつかないための材料にする |
"Dr.Copper"に最も連動したのは住友鉱山で、市場超過もプラスの本命でした。一方、連動2位の三菱マテリアルは市場超過マイナスの罠。銅は非鉄株の温度計ですが、連動の強さと市場超過は別物です。使い方はシンプルです。相関で探す。平均超過で絞る。罠と最悪年で冷ます。この順番です。
基準日:2026年6月14日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。相関は仕分け装置であって、買いサインではありません。数字の読み方もあわせてご覧ください。
主要相関の検定:住友鉱山(5713) r=+0.624(95%CI [+0.534, +0.700]、n=212、p<0.001)。古典的Pearson両側検定で、月次YoYの系列相関や多重検定は未調整のため目安です。相関≠因果・多重検定
出典:銅先物(HG=F):Yahoo Finance・月次・前年比(YoY)。株価:Yahoo Finance(調整後終値・月次YoY)。相関は当サイト算出(YoY×YoY・ラグ0〜6走査・全銘柄でlag0=同月が最強または同水準)。期間は約2001年〜2026年・n=212。基準日2026-06-14