相関×勝ち筋検証2026-06-14 公開 ・ 2026-06-27 改訂
SOXと相関が高い半導体株は勝てたのか?日本の半導体8銘柄を20年検証
「半導体株はSOX(フィラデルフィア半導体指数)を見ろ」——投資家の定番です。たしかに連動は本物で、東京エレクトロンはSOXと+0.855と当サイト最強。ではSOXと相関が高い半導体株を買っていたら、市場平均に勝てたのか。20年で検証すると、相関0.6超でそろって連動するのに、市場平均を上回った銘柄(検証上の本命)と、相関は高いのに勝てなかった銘柄(罠)にくっきり分かれました。相関・買っていた場合の成績・勝てた局面・罠を順に見ます。
| わかること | わからないこと |
|---|---|
| 過去に市場平均を上回った半導体株 | 今後上がる銘柄 |
| SOXと相関が高かった銘柄 | 現在買うべき銘柄 |
| 勝てた局面・弱かった局面 | 個別の売買タイミング |
| 相関だけで選ぶ罠(下落しやすかった条件) | 空売りを勧める銘柄 |
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 検証テーマ | SOXと相関が高い半導体株は、買っていたら市場平均に勝てたか |
| 相関も市場超過もあり(検証上の本命) | 東京エレクトロン・アドバンテスト・SCREEN・ディスコ・レーザーテック |
| 相関は高いが市場超過は弱い(罠) | ルネサス・村田製作所・ローム(いずれもデバイス系) |
| 市場超過が出やすかった局面 | SOXが前年に下がっていた(下向き)局面で買ったとき |
| 注意点 | 全8社が同じSOXサイクルで動く=急落年は一斉に▲37〜71%(隠れた集中) |
半導体株は一括りにしない。同じSOX連動でも、製造装置(東エレ・アドバン等)は市場平均を上回り、デバイス系(ルネサス・村田・ローム)は相関が高いのに届きませんでした。
まずは表の〈判定〉〈平均超過〉〈最悪年〉の3つだけ見ればOK。用語は用語ミニ辞書へ。「勝てた」=市場平均を上回った意味で、儲かったとは限りません。
① SOX相関上位8銘柄を買っていたら、市場平均に勝てたのか
結論から見ます。SOXと相関が高い半導体8銘柄を、毎年1月に等金額で買って1年保有した場合(2005〜2025年)の成績です。比較する「市場平均」は、当サイトの検証対象199社を等金額で保有した平均で、TOPIXや日経平均ではありません。
| 銘柄 | SOX との相関 | 市場平均に 勝った年 | 市場との差 (年・平均) | いちばん下げた年 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| レーザーテック | 0.618 | 11/15 | +52.3% | 2024年 ▲61% | 相関も市場超過もあり |
| アドバンテスト | 0.769 | 11/21 | +19.5% | 2007年 ▲61% | 相関も市場超過もあり |
| ディスコ | 0.645 | 10/21 | +17.8% | 2008年 ▲51% | 相関も市場超過もあり |
| SCREEN | 0.674 | 12/21 | +16.8% | 2008年 ▲69% | 相関も市場超過もあり |
| 東京エレクトロン | 0.855 | 9/21 | +10.3% | 2008年 ▲46% | 相関も市場超過もあり |
| 村田製作所 | 0.666 | 10/21 | −0.3% | 2007年 ▲37% | 相関は高いが市場超過は弱い |
| ローム | 0.653 | 8/21 | −5.6% | 2024年 ▲41% | 相関は高いが市場超過は弱い |
| ルネサス | 0.685 | 7/21 | −7.9% | 2008年 ▲71% | 相関は高いが市場超過は弱い |
相関が高い=市場平均に勝てた、ではありませんでした。相関が最強の東京エレクトロン(0.855)は市場超え9/21・平均+10.3%と中位どまり。逆に、相関0.685と高いルネサスは平均−7.9%で市場を下回り、村田(0.666)・ローム(0.653)も市場超過はマイナス。勝てたのは製造装置メーカー、勝てなかったのはデバイス系という、相関の数字には出ない線で分かれました。

② なぜこの8銘柄なのか——SOXとの相関ランキング
そもそも「SOXと相関が高い株」は何を根拠に選んだのか。前年同月比どうしの相関(株価データ起点〜2026年)で並べると、こうなります。
| 銘柄 | 全期間 同月(n) | コロナ除外 | 事業の性格 |
|---|---|---|---|
| 東京エレクトロン(8035) | +0.855(n=306) | +0.839 | 製造装置 |
| アドバンテスト(6857) | +0.769(n=306) | +0.773 | 製造装置(検査) |
| ルネサス(6723) | +0.685(n=264) | +0.646 | 半導体(MCU) |
| SCREEN(7735) | +0.674(n=294) | +0.678 | 製造装置(洗浄) |
| 村田製作所(6981) | +0.666(n=294) | +0.662 | 電子部品(MLCC) |
| ローム(6963) | +0.653(n=294) | +0.647 | 半導体(アナログ) |
| ディスコ(6146) | +0.645(n=294) | +0.670 | 製造装置(ダイサー) |
| レーザーテック(6920) | +0.618(n=185) | +0.646 | 製造装置(EUV検査) |

半導体は世界共通の市況商品で、設計から製造・検査・実装まで世界市場の需要サイクルで動きます。日本の半導体銘柄が国内指標(鉱工業在庫率など)より世界のSOXと強く連動するのはこのため、と見立てられます(国内指標では連動が弱かった対照実験)。製造装置(東エレ・アドバン・SCREEN・ディスコ・レーザー)は世界の設備投資サイクルを直接受け、デバイス系(村田・ローム・ルネサス)も最終需要を世界の電子機器経由で共有します。ただしこれは見立てで、為替・金利・個社の受注も絡みます。コロナ期(2020〜2021)を除いても全銘柄+0.6以上で、見かけの数字ではない頑健な連動です。
③ 相関 × 市場超過(4象限で見る)
SOXとの相関の高さと「市場平均に勝てたか(平均超過がプラスか)」は別物でした。掛け合わせると、こう分かれます。
| 平均超過がプラス | 平均超過がゼロ以下 | |
|---|---|---|
| 相関が高い(|r|≧0.4) | 検証上の本命:東エレ・アドバンテスト・SCREEN・ディスコ・レーザーテック | 罠ゾーン:ルネサス・村田・ローム |
| 相関が低い | 別要因:(今回の8銘柄では該当なし) | — |
今回は8銘柄すべてが「相関が高い」側に入り、その中で本命(製造装置5社)と罠ゾーン(デバイス系3社)に割れました。製造装置は設備投資の波に乗って市場平均を上回りやすく、デバイス系は同じSOXに連動して大きく動くのに、価格競争・在庫循環で市場平均には届きにくかった、と読めます(見立て)。
「罠ゾーン」は売り候補ではありません。相関だけで銘柄を選ぶと過去に市場平均を下回ることがあった、という注意ゾーンを指します(避ける・保有を点検する材料であって、空売りを勧めるものではありません)。
④ 市場超過が出やすかったのは、どんな局面か
同じ8銘柄でも、買った年の「SOXの局面」で結果が変わりました。買付(その年の1月)時点で分かっている前年12月のSOX前年比で、上向き(プラス)か下向き(マイナス)かに分けます。
| SOXの局面(買付時点で判明) | 市場平均を上回った割合 |
|---|---|
| SOXが上向きの年に保有 | 45%(46/102) |
| SOXが下向きの年に保有 | 53%(32/60) |
過去データでは、SOXがすでに上がっている年より、前年に下がっていた局面の方が、市場平均を上回る割合が高くなりました。半導体は世界サイクルの振れが大きく、SOXが落ちた後に保有した年のほうが相対的に報われやすかった、という構図です。これは機械受注×FA株で見えた「改善を確認してからより悪化・底ばいの局面の方が市場超過は出やすい」と同じ向きの結果です。
局面の判定には買付時点で公表済みの数値(前年12月のSOX前年比)のみを使用し、買付時点で未確定の値は使っていません(先読み防止)。割合は8銘柄×該当年の観測数ベース。
⑤ 相関が高くても市場に勝てなかったパターン(罠)
- デバイス系を相関だけで選ぶ=ルネサス(相関0.685・平均−7.9%)・村田・ロームのように、SOXと強く連動するのに市場平均には届かない銘柄を踏む。連動の数字は本命と変わらないのに結果は逆。
- 急落年の一斉下落=8社すべてが同じSOXサイクルで動くため、2008年はSCREEN▲69%・ルネサス▲71%・東エレ▲46%などが同時に沈んだ。半導体株を何銘柄並べても「同じ波」で落ちる(分散できているつもりの集中)。直近では2024年にレーザーテック▲61%・ローム▲41%。
- 最強の連動=最強の成績ではない=相関0.855の東エレが市場超え9/21、相関0.674のSCREENが12/21。相関の順位と勝てた順位は一致しない。
⑥ 今の環境を見るなら、どこを見るか
過去に市場超過が出やすかった条件に近いかは、次の3点で整理できます(“今買える”という話ではなく、過去パターンとの近さを見る視点です)。
| チェック項目 | 見るポイント | 過去の傾向との関係 |
|---|---|---|
| SOXの方向 | 前年から上昇/下落 | 下落していた局面で買ったほうが、過去は市場超過の割合が高かった |
| 装置かデバイスか | 製造装置/デバイス系 | 過去は製造装置のほうが市場平均を上回りやすかった |
| 半導体への集中 | 半導体株ばかりに偏っている/分散 | 偏っていると、急落局面で一斉に下げやすい |
補足:「先行」ではなく「同月一致」——先回りはできない
相関は全8銘柄でlag0(同月)が最強でした。SOXが動く月には、すでに日本の半導体株も動いています。SOXを1ヶ月前に観測して先回り買いをする使い方は、データでは支持されません。SOXと日本の半導体株は「同じ世界サイクルを同時に映している」だけで、最強の連動でも“先回り”の道具にはなりません。SOXの役割は、半導体サイクルの温度計であり、銘柄の動きの“なぜ”を同月で腑に落とすことです。
| 見ること | 意味 |
|---|---|
| ① 相関だけで選ばない | 相関が高くても市場平均に勝てない銘柄がある |
| ② 平均超過を見る | 勝った年数より、平均して市場を上回ったかを見る |
| ③ 最悪年を見る | 勝ち筋があっても、急落時に深く沈む銘柄がある |
| ④ 今の環境が近いか見る | 過去に強かった局面と似ているかを確認する |
| ⑤ 罠ゾーンを避ける | 高相関でも市場に勝てない銘柄に、飛びつかないための材料にする |
半導体株は「SOX連動」だけでなく、平均超過と最悪年まで確認します(製造装置は本命寄り・デバイス系は相関が高くても罠が多い)。使い方はシンプルです。相関で探す。平均超過で絞る。罠と最悪年で冷ます。この順番です。
まとめ:この指標の使い方
「半導体株はSOXを見ろ」は、連動としては本当でした。ただし相関が高い=勝てた、ではありません。市場平均を上回ったのは製造装置5社(検証上の本命)、相関は0.65超でも市場超過がマイナスだったのがデバイス系3社(罠)。現実的なのは、SOXで連動銘柄を見つけ→過去に市場平均を上回った銘柄と相関は高いのに弱い銘柄を分け→SOXが下がっていた局面という市場超過の出やすかった条件まで確認する、銘柄を絞り込むフィルターとしての使い方です。詳しくは全体の実証、銘柄横断の整理は過去検証スコア、指標横断は指標別「相関ランキング×勝てたか」で確かめられます。
基準日:2026年6月27日(相関の基準日は2026年6月14日)。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。相関は仕分け装置であって、買いサインではありません。数字の読み方もあわせてご覧ください。
主要相関の検定:東京エレクトロン(8035) r=+0.855(95%CI [+0.822, +0.883]、n=306、p<0.001。Fisher z変換)。古典的Pearson両側検定で、月次YoYの系列相関や多重検定は未調整のため目安です。相関≠因果・多重検定
出典:SOX=フィラデルフィア半導体指数 ^SOX(Yahoo Finance・月次・調整後終値・前年比)。株価=Yahoo Finance(調整後終値・月次YoY)。相関は当サイト算出(YoY×YoY・ラグ0〜6走査・全銘柄でlag0=同月が最強)。「買っていたら」検証=2005〜2025年・毎年1月に等金額で買い1年保有・株価のみ(配当・売買手数料・税金は含まず)。「市場平均」=当サイト検証対象199社を等金額で保有した平均(TOPIX・日経平均ではありません)。局面判定は買付時点で公表済みの前年12月SOX前年比に限定(先読み防止)。算出=scripts/build_regime.py。銘柄により株価データ取得期間が異なるためnは銘柄ごとに異なります。