相関×勝ち筋検証2026-06-29 公開

工作機械受注と相関が高い株は勝てたのか?JMTBA統計で6銘柄を検証

「工作機械受注が増えれば工作機械メーカーの株も上がる」——直感的には正しそうです。ではJMTBA(日本工作機械工業会)の受注速報と相関が高い株を保有していたら、市場平均に勝てたのか。2009年1月から2026年4月の約17年分(196ヶ月の有効サンプル)で検証すると、相関が0.74と突出して高かったツガミ、0.54のファナック・0.52の牧野フライスという序列が出ました。一方でDMG森精機は相関がほぼゼロ——同業4社の中で最も受注連動が弱い結果でした。相関・保有成績・勝てた条件・負けたパターンを順に見ます。

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はじめに — このページの位置づけ
本記事は過去データの検証です。ここでいう「勝てた」は、検証期間に同じルールで保有した場合に市場平均(検証対象199社の等金額平均)を上回ったことを指し、将来の利益を意味しません。特定銘柄の現在・将来の売買を勧めるものではありません。当サイトは相関を「買いサイン」ではなく、検証対象を絞る入口(仕分け装置)として扱います。
このページでわかること/わからないこと
わかることわからないこと
過去に市場平均を上回った銘柄今後上がる銘柄
JMTBA受注速報と相関が高かった銘柄現在買うべき銘柄
受注増局面で強かった・弱かった銘柄個別の売買タイミング
相関だけで選ぶ罠(DMG森精機の例)空売りを勧める銘柄
先に結論(過去検証)
項目結果
検証テーマJMTBA工作機械受注と相関が高いFA・工作機械株は、保有していたら市場平均に勝てたか
相関も市場超過もあり(本命)牧野フライス(r=0.52、超過+4.3%)、安川電機(r=0.31、超過+9.3%)
相関は高いが市場超過は弱い(罠ゾーン)ファナック(r=0.54、超過−1.5%)
工作機械株最強の受注連動ツガミr=0.74(年次保有検証は別途・下記参照)
実質不連動(連動の罠)DMG森精機(実効r≈0相当・lagが増えると負側に移動)
内需vs外需外需比率70〜75%のため総額≒外需。外需でも相関順位は変わらず
今日の持ち帰り
ツガミr=0.74は工作機械株の中で突出した受注連動。ただし「相関が高い=買って勝てた」ではない——ファナックは相関0.54でも市場超過は平均−1.5%。相関は銘柄を仕分けるフィルターであって、買いサインではありませんでした。
まずは表の〈判定〉〈平均超過〉〈最悪年〉の3つだけ見ればOK。用語は用語ミニ辞書へ。「勝てた」=市場平均を上回った意味で、儲かったとは限りません。

① 相関上位銘柄を保有していたら、市場平均に勝てたのか

JMTBA工作機械受注と相関が高い銘柄を、毎年1月に等金額で買って1年保有した場合(2005〜2025年・21年間)の成績です。比較する「市場平均」は、当サイトの検証対象199社を等金額で保有した場合の平均で、TOPIXや日経平均ではありません

※ツガミ(6101)は当サイトの199社パネルに含まれていないため、年次保有検証(市場超過・勝った年数)のデータは現時点で未算出です。相関値は実測済み(r=0.74、下記の相関ランキングに掲載)。

銘柄JMTBA受注
との相関(全期間)
市場平均に
勝った年
市場との差
(年・平均)
いちばん下げた年判定
安川電機 65060.3110/21+9.3%2008年 ▲70%相関は低いが市場超過あり(別要因)
牧野フライス 61350.528/21+4.3%2008年 ▲69%相関も市場超過もあり(本命)
オークマ 61030.396/21+2.5%2008年 ▲68%相関も市場超過もあり(本命)
DMG森精機 6141実効≈09/21±0%2008年 ▲61%相関は高くても市場超過は弱い(罠ゾーン)
ファナック 69540.5411/21−1.5%2008年 ▲41%相関は高いが市場超過は弱い(罠ゾーン)

相関が高い銘柄ほど市場平均に勝てたわけではありませんでした。相関0.54のファナックは平均−1.5%と市場を下回り、相関0.31の安川電機(+9.3%)の方がはるかに上。安川の上昇は工作機械受注ではなく中国ハンセン指数(r=0.53)やロボット需要が牽引した別要因でした。

「市場との差(年・平均)」は各年の銘柄リターンと199社平均の差を21年で平均。配当・売買手数料・税金は含まず。判定の「相関」基準はJMTBA受注との相関。

② なぜこの銘柄を見るのか——JMTBA受注速報との相関ランキング

JMTBA受注速報(月次・受注総額)の前年同月比と各銘柄の株価前年同月比の相関を、2009年1月〜2026年4月(n=196)とコロナ期を除いた窓(n=172)で計算しました。ラグは0〜6ヶ月を走査し、|r|が最大のラグを採用しています。

銘柄全期間(n=196)コロナ除外(n=172)最良ラグ事業の性格
ツガミ 61010.740.78同月(lag=0)NC旋盤・自動旋盤専業
ファナック 69540.540.53同月(lag=0)NC装置・ロボット・工作機械
牧野フライス 61350.520.53同月(lag=0)マシニングセンタ専業
オークマ 61030.390.36同月(lag=0)旋盤・マシニング専業
安川電機 65060.310.29同月(lag=0)サーボ・ロボット(工作機械は売上の一部)
DMG森精機 61410.10※0.02※工作機械(日独合弁・多角化)

※DMG森精機は lag=0 で r=+0.10(全期間)・+0.02(コロナ除外)。ラグを増やすと単調に負側へ移動し lag=6 で −0.15/−0.22 になります。これは時系列の構造的なアーティファクトの可能性が高く、実質「受注との連動なし」と解釈するのが適切です。表のCSV記録値(lag6)ではなく実態(lag0)の数値を参考に示しています。

専業旋盤メーカーのツガミが突出して高いのは事業の直結度で説明できます。ツガミの受注の大部分は工作機械そのもので、JMTBA統計が測る対象と事業がほぼ重なります。一方、安川電機は工作機械向けサーボが主力の一つですが、ロボット・インフラ向けなど事業が広いため、JMTBA受注との一致度が下がります。

③ 相関 × 市場超過(4象限で見る)

相関の高さと「市場平均に勝てたか」は別物でした。掛け合わせると4つに分かれます。

市場平均を上回った(平均超過プラス)市場平均を上回らなかった(平均超過ゼロ以下)
相関が高い(r≧0.4)検証上の本命:牧野フライス罠ゾーン:ファナック
相関が低い(r<0.4)別要因ゾーン:安川電機・オークマ説明しにくい:DMG森精機

オークマは平均超過+2.5%でプラスですが相関基準未満のため「別要因ゾーン」に分類しています(JMTBAではなく内閣府機械受注で相関がより高い:r=0.44)。

「罠ゾーン」は売り候補ではありません。相関だけで銘柄を選ぶと過去に市場平均を下回ることがあった、という注意ゾーンを指します(避ける・保有を点検する材料であって、空売りを勧めるものではありません)。

④ DMG森精機:「工作機械株なのに連動しなかった」のはなぜか

DMG森精機(6141)は工作機械メーカーでありながら、JMTBA受注速報との連動がほぼゼロでした。考えられる理由:

理由は推測の域を出ませんが、「同業だから同じ指標で連動する」という前提を外す実例として、この結果は辞書的な価値があります。

⑤ 工作機械受注が「使いにくい」理由——発表ラグと先行織り込み

すべての銘柄で最良ラグは lag=0(同月)でした。JMTBA受注速報は翌月初旬に前月分が発表されるため、情報としては比較的早い部類に入ります。ただし:

この統計は「受注の局面を確認する」材料であり、銘柄を選んで売買タイミングを決める道具としては精度に限界があります。

⑥ 相関が高くても市場に勝てなかったパターン

⑦ 今の環境を見るなら、どこを見るか

過去に市場超過が出やすかった条件に近いかは、次の3点で整理できます(「今買える」という話ではなく、過去パターンとの近さを見る視点です)。

チェック項目見るポイント過去の傾向との関係
工作機械受注の方向改善/悪化/横ばいJMTBA速報(翌月初旬公表)で前月比・前年比を確認
外需の内訳中国向け・北米向けの比率外需が7割超のため、中国景気が受注全体を左右しやすい
銘柄の集中度工作機械株に偏っていないか急落局面で一斉下落するリスクを確認する材料

まとめ:この指標の使い方

JMTBA工作機械受注速報は、単独の「買いサイン」としては使いにくい結果でした。現実的なのは、相関でどの銘柄が受注統計に敏感かを見つけ→過去に市場平均を上回った銘柄(牧野)と相関は高いが弱い銘柄(ファナック)を分け→受注の局面(改善か悪化か)まで確認する、銘柄を絞り込むフィルターとしての使い方です。ツガミのr=0.74は辞書的に注目値ですが、年次保有検証は別途必要です。DMG森精機の「工作機械メーカーなのに実質不連動」は、業種ラベルへの過信を戒める過去事実の記録です。

基準日:2026年6月29日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。数字の読み方もあわせてご覧ください。

出典:工作機械受注速報=日本工作機械工業会(JMTBA)月次確報PDF(2009年1月〜2026年4月・n=208ヶ月)を pdfplumber でパース。前年同月比変換後の有効サンプル n=196(全期間)・n=172(コロナ除外:2020年・2021年を除く)。株価=Yahoo Finance(月次・調整後終値・前年同月比)。ラグ走査=lag 0〜6ヶ月で|r|最大を採用。「市場との差(平均超過)」=毎年1月に等金額で買い1年保有した場合の各年リターン−199社平均リターンの21年間平均(2005〜2025年・配当・手数料・税金含まず)。「市場平均」=当サイト検証対象199社等金額平均(TOPIX・日経平均ではありません)。ツガミ(6101)の年次保有検証は当サイト199社パネル外のため未算出。出典:JMTBA https://www.jmtba.or.jp/statistics/。基準日2026-06-29。

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