俗説の実測2026-06-14 公開
「金が上がれば金鉱株」は日本では効かない——住友鉱山+0.21、銅なら+0.62の衝撃対比
「金が上がれば金鉱株も上がる」——投資の世界でよく語られる通説です。金価格が上昇すると、金を掘り出す企業の利益が増え、株も連れて上がる、というシンプルな論法です。米国ではニューモント(NEM)などの純金鉱山株がこの通説を体現してきました。では日本ではどうでしょうか。「住友鉱山」「三菱マテリアル」——金鉱株と言われればこれらの名前が浮かびます。本当に金価格と連動するのか、25年分のデータで確かめました。結果は「通説が効かない」ではなく、より深い話でした:同じ銘柄が、金に対しては+0.21なのに、銅に対しては+0.62で動く。日本の「金鉱株」の正体は、実は銅株でした。
検証方法
- 金先物:Yahoo Finance(GC=F・月次・前年比YoY)を使用
- 比較用銅先物:Yahoo Finance(HG=F・月次・前年比YoY)を使用
- 各銘柄の株価:Yahoo Finance(調整後終値・月次YoY)
- ラグ0〜6ヶ月で走査——金鉱株4社はlag0(同月)が最強または同水準
- 全期間(2001年〜2026年・n=212)とコロナ除外(2020〜2021年除く・n=195)を併記
- 対照として純金ETF(1540 純金上場信託・2016年〜・n=126)を追加
- 銘柄選定:日本で「金鉱株」と呼ばれる非鉄大手3社(住友鉱山・三菱マテリアル・DOWA)+貴金属リサイクルの松田産業。対照として純金ETF(1540)
結果:金鉱株はほぼ無相関、金ETFは素直に連動
| 銘柄(業種) | 金 全期間 | 金 コロナ除外 | (参考)銅 全期間 | 効くのは |
|---|---|---|---|---|
| 住友鉱山(5713) | +0.209(n=212) | +0.253 | +0.624 | 銅 |
| 三菱マテリアル(5711) | +0.089(n=212) | +0.118 | +0.508 | 銅 |
| DOWA(5714) | −0.019(n=211) | +0.026 | +0.506 | 銅 |
| 松田産業(7456) | +0.292(n=208) | +0.355 | +0.640 | 銅 |
| 純金上場信託1540(金ETF・対照) | +0.827(n=126) | +0.816 | — | 金 |

住友鉱山との金の相関は+0.209——当サイトの目安(|r|≧0.40)に遠く届きません。三菱マテリアルは+0.089、DOWAに至っては-0.019とほぼゼロです。一方、純金ETF(1540)は+0.827で素直に連動します。出典:金先物 Yahoo Finance(GC=F・月次)、銅先物 Yahoo Finance(HG=F・月次)、株価Yahoo Finance(調整後終値・月次YoY)、相関は当サイト算出(YoY×YoY同月)。基準日2026-06-14。
衝撃の対比:同じ銘柄が金+0.21・銅+0.62
この表の見どころは「金との相関」ではなく、「金との相関」と「銅との相関」の対比です。住友鉱山は同一銘柄でありながら、金先物との相関が+0.209なのに対して、銅先物との相関は+0.624——約3倍の開きがあります。三菱マテリアル(金+0.089 vs 銅+0.508)、DOWA(金-0.019 vs 銅+0.506)、松田産業(金+0.292 vs 銅+0.640)と、4銘柄すべてで同じパターンが出ています。
つまり「金鉱株」と思って買うと、実は銅株を買っているのです。
なぜ金ではなく銅で動くのか(見立て)
住友金属鉱山・三菱マテリアル・DOWAの事業構成を見ると、売上高の主力は銅・亜鉛・ニッケルといった非鉄金属や、製錬・リサイクルです。金は生産していますが、あくまで副産物(by-product)として出てくることが多く、収益への寄与は限定的です。
松田産業は貴金属リサイクルが主力ですが、金だけでなく銀・銅・パラジウム等を幅広く扱い、これらの価格がまとめて業績を動かします。だからコモディティ全般に連動しやすく、銅相場との相関が高く出たと考えられます(これは「見立て」であり、実際には為替・生産量・個社の事業計画等も影響します)。
米国のニューモント(NEM)やバリック(GOLD)は金の採掘が収益のほぼ全てを占める「純金鉱株(pure-play gold miner)」ですが、日本にはこのような企業がほとんど存在しません。これが通説が機能しない構造的な理由です。
対照:純金ETF(1540)は+0.83で素直に連動
純金上場信託(1540)は、大阪取引所に上場する金現物連動型ETFです。金価格に連動するように設計されているため、金YoYとの相関が+0.827と高いのは当然といえます。これは「手法は正しく働いている」ことを示す確認値です——金に連動する金融商品は、当サイトの計測でもちゃんと検出されます。連動しないのは「株の方」、つまり金鉱株の事業構成の問題です。
なお1540のデータ期間はn=126(2016年〜)で、金鉱株4社のn=212と比べて短いため、単純比較には注意が必要です(参考値として扱ってください)。
全lag0=同月一致——先回りはできない
金鉱株4社と純金ETFのいずれも、lag0(同月)が最強または同水準でした。これは金価格が動く月に株も同時に動いていることを意味します。「金先物が上がったら翌月に鉱業株を買う」という先行指標としての使い方はデータで支持されません。
コロナ除外でも結論は変わらない
2020〜2021年のコロナ期を除外しても、金鉱株との相関は低水準のまま(住友鉱山+0.253・三菱マテリアル+0.118)、銅との差はむしろ広がります。コロナの大振れに依存した数字ではありません。
結論:金に乗りたいなら金鉱株でなく金ETF
「金が上がれば金鉱株」という通説は、日本では過去25年のデータで確認できませんでした。日本の「鉱業株」は銅・亜鉛・リサイクルが主力で、金は副産物——だから金価格との相関は+0.09〜+0.29にとどまり、同じ銘柄が銅価格には+0.50〜+0.64で動きます。
金相場に連動する手段を求めるなら、銅×非鉄記事でも登場する鉱業株ではなく、純金ETF(1540等)の方が素直な選択です。米国の通説が日本市場にそのまま当てはまるとは限らない——当サイトの俗説検証シリーズが繰り返し示してきた教訓です。
基準日:2026年6月14日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。数字の読み方もあわせてご覧ください。
出典:金先物(GC=F)・銅先物(HG=F):Yahoo Finance・月次・前年比(YoY)。株価:Yahoo Finance(調整後終値・月次YoY)。純金上場信託(1540):Yahoo Finance(月次YoY・2016年〜)。相関は当サイト算出(YoY×YoY・ラグ0〜6走査・全銘柄でlag0=同月が最強または同水準)。金鉱株4社の期間は約2001年〜2026年・n=212前後、ETFはn=126。銅との相関は参考値(別統計)。基準日2026-06-14