銘柄深掘り2026-06-13 公開

ホテル株は宿泊統計に連動するか——n=27の短窓で同業の符号が真逆になる話

インバウンド株の検証京成電鉄ドンキの深掘りで繰り返し見てきたのが、『2024年以降』のような短い窓で出る高いrは当てにならないという話でした。今回はそれが一番はっきり出る例として、延べ宿泊者数(観光庁)×ホテル各社を取り上げます。同じ全国統計の下で、同業のホテル株の符号が+0.66から-0.74まで真逆に割れる——その理由を見ていきます。銘柄深掘り第8弾です。

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検証方法

結果:同じ統計の下で、同業の符号が真逆

銘柄(2024年以降・同月)相関 rn
藤田観光(9722)+0.6627
グリーンズ(6547)+0.3327
共立メンテ/ドーミーイン(9616)+0.0427
リゾートトラスト(4681)-0.2527
帝国ホテル(9708)-0.5427
ワシントンホテル(4691)-0.7427
ホテル株は宿泊統計に連動するか——n=27の短窓で同業の符号が真逆になる話を表すグラフ
同じ全国宿泊統計に対し、2024年以降(n=27)のホテル株の同月相関は藤田観光+0.66から帝国-0.54・ワシントン-0.74まで真逆に割れる。短窓の高いrは方向の証拠にならない実例。

全国の延べ宿泊者数というたった一本の同じ統計に対して、同じ2024年以降・同じ月で測っているのに、ホテル株の相関は+0.66から-0.74まで散らばりました。宿泊が増えた月に上がった銘柄(藤田観光)も、逆に下がった銘柄(ワシントン・帝国)も同居しています。もし『宿泊が伸びる→ホテル株が上がる』が安定した関係なら、同業でこれほど符号が割れることはありません。

窓を伸ばすと、ほとんどがゼロ付近に戻る

銘柄(コロナ除外・同月)相関 rn
藤田観光(9722)+0.16147
共立メンテ/ドーミーイン(9616)+0.02147
リゾートトラスト(4681)-0.06147
帝国ホテル(9708)-0.12147
ワシントンホテル(4691)-0.2451

窓をコロナ除外の全期間に広げると、符号の割れはおおむね収まり、多くが±0.2以内のほぼ無相関になります。2024年以降の±0.7という派手な数字は、n=27の短い窓でたまたま大きく出ただけだった、というのが素直な読み方です(グリーンズはコロナ除外でも+0.51・n=73とやや高めですが、上場が新しく系列が短い小型株で、これも参考値です)。

結論:n=27の『高い相関』は信じない

同じ全国宿泊統計・同じ業種・同じ月で、相関が-0.74から+0.66まで割れるのですから、2024年以降のrが測っているのは『ホテル株の宿泊連動度』ではなく、各社それぞれの事情(本館の建替え、再上場、規模や客層の違い)と短窓の偶然です。当サイトがn<60の数字を参考値として扱うのは、まさにこうした割れが起きるからでした。短い窓の高いrは、方向の証拠としては使えません——派手な数字ほど、窓の長さを確かめる必要があります。

+0.66は「宿泊連動度」を測っていない——このrは何を測っているのか

この検証の核心は、藤田観光の+0.66が「藤田観光は宿泊統計によく連動する」を意味していないことです。もし宿泊が伸びる→ホテル株が上がる、が本物の関係なら、同じ全国統計・同じ月・同じ業種で符号がここまで割れるはずがありません。+0.66(藤田観光)と-0.74(ワシントン)が同居している時点で、この2つのrは宿泊統計との連動ではなく、各社それぞれの事情を測っている。藤田観光は椿山荘やワシントンホテルを抱え、この時期に本館の改装・稼働回復が株価を押し上げた。帝国ホテルは建替え計画という長期の別材料で動いた。ワシントンは規模・客層が違う。同じ月のYoYを並べただけの相関は、その裏で各社を動かしている本当の材料を区別できません。だからn=27の短い窓では、宿泊統計と偶然そろった会社が高いrを、偶然逆に振れた会社が強いマイナスを、それぞれ「宿泊連動」の顔をして見せてしまう。橋(宿泊→客室売上→利益→株価)自体は理屈として通っているのに、その橋の太さは会社ごとにバラバラで、全国一本の統計では測れない——これがこの散らばりの正体です。

+0.66を「宿泊に連動する銘柄」と拾う危うさ(最悪ケースの読み方)

ランキングだけ見て「藤田観光は宿泊統計に+0.66で連動するから、宿泊が伸びる局面で買い」と拾うのが、この記事が一番止めたい読み方です。理由は3つあります。第一にn=27はたった27ヶ月分で、当サイトがn<60を参考値扱いする閾値を大きく下回ります。第二に、窓をコロナ除外の全期間に広げると、その+0.66は+0.16まで縮み、±0.2以内のほぼ無相関に戻る。派手だった数字は、長い窓では消えました。第三に、符号は隣の会社で真逆です。同じ「ホテル株」という括りの中で、宿泊が伸びた月に上がった銘柄も下がった銘柄も同居している以上、「宿泊が伸びる→ホテル株が上がる」という方向そのものが安定していません。つまり+0.66は「次も宿泊に連れて上がる」の保証ではなく、「この27ヶ月はたまたまそろった」の記録にすぎない。相関ランキングは勝ち馬を当てる表ではなく、どのペアが偶然に弱いか(n・窓の長さ・同業の符号の揃い)を点検するための表——短窓の上位ほど、拾う前に窓を伸ばすのが鉄則です。

この「符号の割れ」を、他の業種で自分で確かめる3ステップ

この記事の値打ちは「ホテルの答え」より、短窓の高いrに騙されない検算手順にあります。どんな業種統計×同業銘柄にも、次の3ステップがそのまま使えます。

この3点が揃って初めて、相関ランキングは「上位=有望」から「窓とnまで確かめた数字」に変わります。京成×訪日客ドンキ×訪日客も、同じ手順で分解した姉妹記事です。1本の結論を覚えるより、この型を持ち帰るほうが、辞書のどのページでも役に立ちます。

基準日:2026年6月13日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。数字の読み方もあわせてご覧ください。

出典:延べ宿泊者数は観光庁「宿泊旅行統計調査(延べ宿泊者数・全国)」月次、株価はYahoo Finance(調整後終値・月次)。相関は当サイト算出(同月・YoY)。2024年以降はn≈27の短窓で参考値。各社の事業内容は2026年時点の公開情報による。基準日2026-06-13 [一次データ:宿泊旅行統計調査↗]

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