相関×勝ち筋検証2026-06-10 公開 ・ 2026-06-27 改訂

訪日客数と相関が高い株は勝てたのか?インバウンド8銘柄を20年検証

「インバウンド株——訪日客が増えれば上がる」という連想は定番です。ところが訪日外客数(JNTO)とCOVID除外相関が最も高い花王は+0.446で、8銘柄中トップ。では訪日外客数との関係を検証したインバウンド関連8銘柄を毎年同じルールで保有していたら、市場平均に勝てたのか。20年で検証すると、相関も高く市場超過もプラスの銘柄(検証上の本命)は一つもありませんでした。市場平均を上回ったのは、訪日相関が低い・または逆相関の銘柄ばかり——勝因は訪日でなく別の要因でした。相関・保有していた場合の成績・市場超過が出やすかった局面・罠を順に見ます。

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このページでわかること/わからないこと
わかることわからないこと
過去に市場平均を上回ったインバウンド関連株今後上がる銘柄
訪日外客数と相関が高かった銘柄現在買うべき銘柄
勝てた局面・弱かった局面個別の売買タイミング
相関だけで選ぶ罠(本命がゼロだった実証)空売りを勧める銘柄
先に結論(過去検証)
項目結果
検証テーマ訪日外客数との関係を検証したインバウンド関連8銘柄は、保有していたら市場平均に勝てたか
相関も市場超過もあり(検証上の本命)該当なし——本検証で最大の発見
相関は高いが市場超過は弱い(罠ゾーン)花王(相関0.446・平均超過−5.7%)
相関は低いが市場超過あり(別要因)良品計画・寿スピリッツ・松屋・サンリオ
説明しにくいエアトリ・京成電鉄・OLC(ディズニー)
市場超過が出やすかった局面訪日が上向きの年(51%)> 下向きの年(41%)——差は小さく本命ゼロと整合
注意点①COVID込みだと相関が水増しされる(京成は全期間0.72→COVID除外0.317)。当サイトはCOVID除外相関を採用
注意点②観光株は急落年に深く沈む(松屋▲52%・サンリオ▲48%・エアトリ▲40%)
📌 今日の持ち帰り
訪日客数は、インバウンド株の勝ち筋を探す“主役”指標ではありませんでした。市場平均を上回った銘柄はありましたが、勝因は訪日客数との連動でなく、ブランド・商品力・海外展開など別要因の可能性が高いです。
まずは表の〈判定〉〈平均超過〉〈最悪年〉の3つだけ見ればOK。用語は用語ミニ辞書へ。「勝てた」=市場平均を上回った意味で、儲かったとは限りません。

① 訪日外客数相関上位8銘柄を買っていたら、市場平均に勝てたのか

結論から見ます。訪日外客数(COVID除外・前年比)との相関で並べた8銘柄を、毎年1月に等金額で買って1年保有した場合(2005〜2025年)の成績です。比較する「市場平均」は、当サイトの検証対象199社を等金額で保有した平均で、TOPIXや日経平均ではありません。平均超過がプラスかどうかで判定します。

銘柄訪日外客数
との相関
(COVID除外)
市場平均に
勝った年
市場との差
(年・平均)
いちばん下げた年判定
寿スピリッツ(2222)+0.2519/15+19.7%2018年 ▲38%別要因(※比較15年・参考)
サンリオ(8136)−0.1108/21+15.3%2007年 ▲48%別要因
松屋(8237)+0.1579/21+11.7%2015年 ▲52%別要因
良品計画(7453)+0.37412/21+7.8%2008年 ▲41%別要因
OLC(ディズニー)(4661)+0.27211/21−0.4%2024年 ▲36%説明しにくい
京成電鉄(9009)+0.31712/21−3.0%2024年 ▲33%説明しにくい
花王(4452)+0.44610/21−5.7%2008年 ▲30%相関は高いが市場超過は弱い(罠)
エアトリ(6191)−0.3272/9−25.1%2025年 ▲40%説明しにくい(※比較9年・参考)

今回の検証で最大の発見は、相関も高く市場超過もプラスの銘柄(検証上の本命)がゼロだったことです。相関が最も高い花王(COVID除外+0.446)ですら、21年のうち市場平均を超えたのは10年にとどまり、年間平均では市場を−5.7%下回りました。逆に市場平均を上回った銘柄は、訪日相関が低い良品計画(相関0.374・+7.8%)・松屋(0.157・+11.7%)、そして逆相関のサンリオ(−0.110・+15.3%)——訪日外客数との連動とは無関係に、ブランド・海外展開・個別成長が勝因だった「別要因」銘柄でした。

京成電鉄を毎年1月に買って1年持った場合の成績(緑=プラスの年・赤=マイナスの年・青線=市場平均)
京成電鉄:成田アクセス(スカイライナー)を持ち、COVID除外での訪日相関は+0.317と中程度。なのに青線(市場平均)を超えた年は21年中12年で、年間平均では−3.0%と市場を下回った。「連動している」と「勝てた」は別の話。

② なぜこの8銘柄なのか——訪日外客数との相関ランキング(COVID除外)

この8銘柄を選んだ根拠を示します。訪日外客数(JNTO月次・前年比)と株価前年比の相関を、COVID期間を除外した全期間で算出し、高い順に並べると次の通りです。

銘柄訪日外客数との相関
(COVID除外・ex_covid)
事業の性格
花王(4452)+0.446日用品・化粧品
良品計画(7453)+0.374無印良品・海外小売
京成電鉄(9009)+0.317成田アクセス・スカイライナー
OLC(ディズニー)(4661)+0.272テーマパーク
寿スピリッツ(2222)+0.251土産菓子
松屋(8237)+0.157百貨店
サンリオ(8136)−0.110キャラクターIP・海外ライセンス
エアトリ(6191)−0.327旅行予約・オンライン旅行

ここで重要なのがCOVID込みと除外の違いです。たとえば京成電鉄は、COVID期間(2020〜2021年)を含めた全期間だと相関0.72と高く出ますが、COVID除外にすると0.317と中程度に落ちます。COVID期間は訪日客数がほぼゼロになり株価も急落するという「方向が揃った極端な動き」が入るため、相関が実態より高く見えます。当サイトはCOVID除外相関(ex_covid)を採用し、平時の連動の強さを評価します。COVID込みの高い数字を真に受けると、実際の平時の連動より過大評価するリスクがあります。

③ 相関 × 市場超過(4象限で見る)

訪日外客数との相関の高さと「市場平均に勝てたか(平均超過がプラスか)」を掛け合わせると、こう分かれます。

平均超過がプラス平均超過がゼロ以下
相関が高い(|r|≧0.4)検証上の本命:該当なし罠ゾーン:花王
相関が低い別要因:良品計画・寿スピリッツ・松屋・サンリオ説明しにくい:エアトリ・京成電鉄・OLC

「本命欄が空欄」——これがこの検証のもっとも誠実な結論です。「インバウンド株=訪日が増えれば上がる=市場平均に勝てる」という連想が、過去20年のデータでは成立しませんでした。訪日外客数との相関が高い銘柄ほど市場超過が弱く、市場を上回ったのは訪日相関が低いか逆相関の銘柄でした。良品計画(+7.8%)・松屋(+11.7%)・サンリオ(+15.3%)の強さは、それぞれ海外展開・ブランド力・キャラクターIPライセンス収益という訪日以外の成長ドライバーによるものと読めます(見立て)。

「罠ゾーン」は売り候補ではありません。相関だけで銘柄を選ぶと過去に市場平均を下回ることがあった、という注意ゾーンを指します(避ける・保有を点検する材料であって、空売りを勧めるものではありません)。

④ 市場超過が出やすかったのは、どんな局面か

同じ8銘柄でも、買った年の「訪日外客数の局面」で結果が変わるかを確認しました。買付時点(その年の1月)で分かっている前年11月の訪日外客数前年比(発表ラグを考慮)が上向き(プラス)か下向き(マイナス)かで分けます。

訪日外客数の局面(買付時点で判明)市場平均を上回った割合
訪日が上向きの年に保有51%(58/113)
訪日が下向きの年に保有41%(15/37)

訪日が増えていた局面のほうがわずかに市場超えの割合が高くなっていますが、差は10ポイントにとどまります。本命がゼロだった事実と整合的で、訪日の方向性だけでは市場平均超えに繋がりにくいという結論を、局面別のデータも支持しています。「訪日が増えたからインバウンド株を保有すれば勝てる」という使い方は、過去データでは根拠が薄いと言えます。

局面の判定には買付時点で公表済みの数値(前年11月の訪日外客数前年比・発表ラグ先読み防止)のみを使用し、買付時点で未確定の値は使っていません。割合は8銘柄×該当年の観測数ベース。

⑤ 相関が高くても市場に勝てなかったパターン(罠)

⑥ 今の環境を見るなら、どこを見るか

過去に市場超過が出やすかった条件に近いかは、次の3点で整理できます("今買える"という話ではなく、過去パターンとの近さを見る視点です)。

チェック項目見るポイント過去の傾向との関係
訪日外客数の方向前年比で上向き/下向き(発表ラグ考慮)上向き局面で保有した場合、過去はわずかに市場超えの割合が高かった(51% vs 41%)——ただし差は小さく本命ゼロと整合
相関の性質COVID除外相関か/COVID込みかCOVID込みだと相関が水増しされやすい。過去の平時の連動はCOVID除外相関(ex_covid)で評価
勝因の確認訪日依存か/別の成長ドライバーがあるか過去に市場を上回った銘柄は訪日相関が低く、ブランド・海外・IP収益が主因だった(別要因)
本命ゼロでも、持ち帰るべきこと

本命ゼロは「何もわからなかった」という意味ではありません。訪日客数だけでインバウンド株を選ぶ見方が弱かった、というのが今回の持ち帰りです。

持ち帰り内容
この指標の限界訪日客数だけでは、市場平均を上回る銘柄を説明しにくかった(雑な連想を切れる)
勝者は別要因良品計画・寿スピリッツ・サンリオの勝因は、訪日客数でなくブランド・商品力・海外の可能性
高相関の罠相関が最も高い花王でも、市場平均には勝てなかった
水増し注意COVIDを含めると京成は0.72と高く見えるが、除外すると0.317に落ちる
今見るなら訪日客数そのものより、客単価・利益率・訪日需要を利益に変える力を見る
結局どう見る?
見ること意味
① 相関だけで選ばない相関が高くても市場平均に勝てない銘柄がある
② 平均超過を見る勝った年数より、平均して市場を上回ったかを見る
③ 最悪年を見る勝ち筋があっても、急落時に深く沈む銘柄がある
④ 今の環境が近いか見る過去に強かった局面と似ているかを確認する
⑤ 罠ゾーンを避ける高相関でも市場に勝てない銘柄に、飛びつかないための材料にする

訪日株は人数そのものより「訪日需要を利益に変える力」——客単価・利益率・ブランド力——を見ます(勝った銘柄の多くは訪日相関では説明しにくい別要因でした)。使い方はシンプルです。相関で探す。平均超過で絞る。罠と最悪年で冷ます。この順番です。

まとめ:この指標の使い方

「インバウンド株は訪日が増えれば上がる」——連動としては花王(0.446)・良品計画(0.374)のように確かに存在しましたが、相関が高い=市場平均に勝てた、ではありませんでした。本命(相関高×市場超過プラス)はゼロ。市場を上回ったのは訪日相関が低い・逆相関の銘柄で、勝因は訪日でなく別要因でした。また、COVID込みの高い相関(京成0.72)を平時の連動と混同しないことが重要で、当サイトはCOVID除外相関を採用しています。現実的な使い方は、訪日外客数で銘柄を仕分け→相関が高くても市場超過が弱い「罠」と、相関が低くても市場超過のある「別要因」を区別し→局面(訪日の方向性)も合わせて確認する、フィルターとしての活用です。本命がゼロという結果は、「インバウンド=勝ち」という連想の精度を問い直す材料になります。詳しくは全体の実証、銘柄横断の整理は過去検証スコア、指標横断は指標別「相関ランキング×勝てたか」で確かめられます。

基準日:2026年6月27日(相関の基準日は2026年6月10日)。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。相関は仕分け装置であって、買いサインではありません。数字の読み方もあわせてご覧ください。

相関はCOVID除外(ex_covid)・前年比どうしで算出。寿スピリッツ(2222)は比較15年・エアトリ(6191)は比較9年のため参考値。n(サンプル数)が小さい銘柄の数値は目安として扱ってください。相関≠因果・多重検定

出典:訪日外客数=日本政府観光局(JNTO)月次訪日外客統計(JNTO 訪日外客統計↗)・前年比。整形=scripts/build_inbound_monthly.py。株価=Yahoo Finance(月次・調整後終値・前年比)。「買っていたら」検証=2005〜2025年・毎年1月に等金額で買い1年保有・株価のみ(配当・売買手数料・税金は含まず)。「市場平均」=当サイト検証対象199社を等金額で保有した平均(TOPIX・日経平均ではありません)。相関はCOVID除外(ex_covid)を採用。局面判定は買付時点で公表済みの前年11月の訪日外客数前年比に限定(発表ラグ・先読み防止)。算出=scripts/build_regime.py。

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