相関×勝ち筋検証2026-06-13 公開 ・ 2026-06-27 改訂

長期金利が上がれば銀行株は勝てたのか?銀行・保険・不動産を20年検証

「金利が上がれば銀行株」——投資家が最初に覚える連想のひとつです。連動は本物で、三井住友FGは長期金利(10年国債)と+0.608、みずほFGも+0.570と当サイト上位級。では長期金利との相関が高い銀行・保険・不動産7銘柄を毎年同じルールで保有していたら、市場平均に勝てたのか。20年で検証すると、相関も高く市場平均を上回った銘柄がある一方で、相関0.5〜0.6の銀行株が軒並み市場平均に届かない「罠ゾーン」に落ちました。相関・保有した場合の成績・勝てた局面・罠を順に見ます。

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このページでわかること/わからないこと
わかることわからないこと
過去に市場平均を上回った銀行・保険・不動産株今後上がる銘柄
長期金利と相関が高かった銘柄現在買うべき銘柄
勝てた局面・弱かった局面個別の売買タイミング
相関だけで選ぶ罠(下落しやすかった条件)空売りを勧める銘柄
先に結論(過去検証)
項目結果
検証テーマ長期金利と相関が高い銀行・保険・不動産株は、毎年同じルールで保有していたら市場平均に勝てたか
相関も市場超過もあり(検証上の本命)住友不動産(相関0.441・平均超過+3.0%)
相関は高いが市場超過は弱い(罠ゾーン)三井住友FG・みずほFG・三菱UFJ・三菱地所・第一生命HD
相関は低いが市場超過あり(別要因)東京海上HD(相関0.125・平均超過+0.3%)
市場超過が出やすかった局面長期金利が前年より上昇していた局面で保有したとき(62%)
注意点2008年に7銘柄が一斉▲38〜59%。同じ金利サイクルで動く「隠れた集中」
📌 今日の持ち帰り
「金利が上がれば銀行株」は連動としては本当。でも買っていたら市場平均を上回ったのは銀行ではなく、不動産(住友不動産)だけでした。銀行3行を含む金利敏感株の多く(相関0.5〜0.6)は、高いのに市場平均に届きませんでした。
まずは表の〈判定〉〈平均超過〉〈最悪年〉の3つだけ見ればOK。用語は用語ミニ辞書へ。「勝てた」=市場平均を上回った意味で、儲かったとは限りません。

① 長期金利相関上位7銘柄を保有していたら、市場平均に勝てたのか

結論から見ます。長期金利(10年国債)と相関が高い7銘柄を、毎年1月に等金額で買って1年保有した場合(2005〜2025年)の成績です。比較する「市場平均」は、当サイトの検証対象199社を等金額で保有した平均で、TOPIXや日経平均ではありません。平均超過がプラスかどうかで判定します。

銘柄長期金利
との相関
市場平均に
勝った年
市場との差
(年・平均)
いちばん下げた年判定
住友不動産(8830)0.44111/21+3.0%2008年 ▲59%相関も市場超過もあり
東京海上HD(8766)0.12510/20+0.3%2008年 ▲38%相関は低いが市場超過あり
第一生命HD(8750)0.4185/15−0.9%2011年 ▲37%相関は高いが市場超過は弱い
三井住友FG(8316)0.6089/21−1.7%2008年 ▲56%相関は高いが市場超過は弱い
三菱UFJ(8306)0.5337/20−1.8%2008年 ▲50%相関は高いが市場超過は弱い
三菱地所(8802)0.4627/21−2.5%2008年 ▲57%相関は高いが市場超過は弱い
みずほFG(8411)0.5709/21−3.4%2008年 ▲53%相関は高いが市場超過は弱い

「金利が上がれば銀行株」——連動としては本当でした。しかし市場平均に勝てたのは、銀行ではなく住友不動産だけでした。相関が最強の三井住友FG(0.608)は市場超え9/21・平均超過−1.7%。みずほ(0.570)も−3.4%、三菱UFJ(0.533)も−1.8%と、相関が高いほど市場平均を下回るという、直感と逆の結果です。相関0.125と低い東京海上HDは平均超過+0.3%と辛うじてプラスで「別要因」に分類されます(+0.3%は誤差に近い水準で、金利で説明する銘柄ではありません)。金利とほぼ連動しないのに市場平均を上回っていた東京海上は、損保の利益が災害発生・保険引受の損益に依存し、金利以外の要因で動く銘柄の典型です。

長期金利(10年国債前年差)と銀行・保険・不動産7銘柄の相関を表すグラフ。三井住友FG+0.608で最強、東京海上だけ+0.125とほぼゼロ。
10年金利(前年差)と各銘柄の株価前年比の相関。銀行3行が+0.533〜+0.608でそろって上位、不動産・生保も+0.41以上で連動あり。同じ金融でも損保の東京海上だけほぼゼロ。相関の高さと市場超過は別の話。

② なぜこの7銘柄なのか——長期金利との相関ランキング

「長期金利と相関が高い株」としてこの7銘柄を取り上げた根拠を示します。前年比どうし(株価は前年比・金利は前年差)での相関を全期間で算出し、高い順に並べると次の通りです。

銘柄長期金利との相関事業の性格
三井住友FG(8316)+0.608銀行(メガバンク)
みずほFG(8411)+0.570銀行(メガバンク)
三菱UFJ(8306)+0.533銀行(メガバンク)
三菱地所(8802)+0.462不動産(オフィス・商業)
住友不動産(8830)+0.441不動産(オフィス・マンション)
第一生命HD(8750)+0.418生命保険
東京海上HD(8766)+0.125損害保険

銀行は金利が上がると預貸利ざやが改善するという経路が明快です。ゼロ・マイナス金利政策が続いた2010年代は利ざやが圧縮され、金利上昇とともに業績回復の連想が強くなりました。不動産はバリュエーション(DCF)に金利が直接影響し、生保は運用利回りの回復期待が連動の背景として挙げられます。これらはあくまで見立てで、実際には景気サイクル・為替・不動産市況・与信コストなども絡みます。損保の東京海上が+0.125と別格なのは、損保の利益が自然災害の発生率や保険引受損益に左右される部分が大きく、金利だけでは動かないためと考えられます(仮説)。銀行と損保は同じ「金融」括りでも相関が大きく異なる——という良い対照です。

③ 相関 × 市場超過(4象限で見る)

長期金利との相関の高さと「市場平均に勝てたか(平均超過がプラスか)」は、今回まったく別の結果を示しました。掛け合わせると、こう分かれます。

平均超過がプラス平均超過がゼロ以下
相関が高い(|r|≧0.4)検証上の本命:住友不動産罠ゾーン:三井住友FG・みずほFG・三菱UFJ・三菱地所・第一生命HD
相関が低い別要因:東京海上HD説明しにくい:(該当なし)

「相関が高い=過去に市場平均に勝てた」という等式は成立しませんでした。相関0.608の三井住友FGが罠ゾーンに入り、相関0.125の東京海上HDが別要因として辛うじてプラスを保つという、相関の順位と成績の順位が逆転する結果です。住友不動産が検証上の本命になった背景としては、オフィス需要・マンション市況の上昇局面が金利上昇期と一致した年が多かった可能性がありますが、データが示すのは「過去の傾向」であり、理由は見立てにとどまります。ただし、これは「金利上昇が不動産株に追い風」という意味ではありません。過去20年の同じ保有ルールで、長期金利との相関が基準以上かつ平均超過がプラスだった、という分類結果であり、個別の開発利益・不動産市況・資産価値など別要因も影響している可能性があります。

「罠ゾーン」は売り候補ではありません。相関だけで銘柄を選ぶと過去に市場平均を下回ることがあった、という注意ゾーンを指します(避ける・保有を点検する材料であって、空売りを勧めるものではありません)。

④ 市場超過が出やすかったのは、どんな局面か

同じ7銘柄でも、買った年の「長期金利の局面」で結果が変わりました。買付時点(その年の1月)で分かっている前年12月の長期金利の前年差が上昇(プラス)か低下(マイナス)かで分けます。

長期金利の局面(買付時点で判明)市場平均を上回った割合
長期金利が上昇していた局面で保有62%(36/58)
長期金利が低下していた局面で保有27%(22/81)

過去データでは、長期金利が前年より上昇していた局面のほうが、市場平均を上回る割合が高くなりました(62% vs 27%)。「金利が上がれば銀行株」という連想が、局面レベルでは確かに追い風になっていた時期があった、という結果です。ただし①の表が示す通り、長期でならした平均超過は銀行3行がいずれもマイナスであり、局面が良くても長期では市場平均に届かなかった銘柄が多い点に注意が必要です。局面は「勝ちやすい条件」を示すに過ぎず、個別銘柄の長期成績まで保証するものではありませんでした。

局面の判定には買付時点で公表済みの数値(前年12月の長期金利の前年差)のみを使用し、買付時点で未確定の値は使っていません(先読み防止)。割合は7銘柄×該当年の観測数ベース。

⑤ 相関が高くても市場に勝てなかったパターン(罠)

⑥ 今の環境を見るなら、どこを見るか

過去に市場超過が出やすかった条件に近いかは、次の3点で整理できます("今買える"という話ではなく、過去パターンとの近さを見る視点です)。

チェック項目見るポイント過去の傾向との関係
長期金利の方向前年より上昇か・低下か上昇局面で保有した場合、過去は市場超過の割合が高かった(62% vs 27%)
銘柄の種類銀行・地所・生保か/損保か過去は住友不動産が検証上の本命、銀行・地所・生保が罠ゾーン、東京海上が別要因
金融への集中銀行・不動産・生保が束になっている/分散同じ金利サイクルで動くため、急落局面(2008年)は一斉に▲38〜59%が起きた
結局どう見る?
見ること意味
① 相関だけで選ばない相関が高くても市場平均に勝てない銘柄がある
② 平均超過を見る勝った年数より、平均して市場を上回ったかを見る
③ 最悪年を見る勝ち筋があっても、急落時に深く沈む銘柄がある
④ 今の環境が近いか見る過去に強かった局面と似ているかを確認する
⑤ 罠ゾーンを避ける高相関でも市場に勝てない銘柄に、飛びつかないための材料にする

金利テーマは「連動しているか」より先に「過去に市場平均を上回ったか」を見ます(銀行は連動最上位でも罠が多く、本命は住友不動産だけでした)。使い方はシンプルです。相関で探す。平均超過で絞る。罠と最悪年で冷ます。この順番です。

まとめ:この指標の使い方

「金利が上がれば銀行株」は、連動としては本当でした。三井住友FGの+0.608は当サイトの全ペアでも最上位級の数字です。ただし相関が高い=市場平均に勝てた、ではありませんでした。過去20年で市場平均を上回ったのは住友不動産(+3.0%)の1銘柄だけ。相関0.5〜0.6が並ぶ銀行3行・三菱地所・第一生命は、連動の数字は立派でも平均超過はそろってマイナスの「罠ゾーン」でした。金利上昇局面が市場超えを出やすくした面はある(62%)ものの、それでも長期平均では市場平均に届かなかった。現実的なのは、長期金利で連動銘柄を見つけ→過去に市場平均を上回った銘柄(住友不動産)と相関は高いのに弱い銘柄(銀行・地所・生保)を分け→局面(金利上昇か低下か)まで確認する、銘柄を絞り込むフィルターとしての使い方です。詳しくは機械受注×FA株(同じ型で検証)、銘柄横断の整理は過去検証スコア、指標横断は指標別「相関ランキング×勝てたか」で確かめられます。

基準日:2026年6月27日(相関の基準日は2026年6月13日)。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。相関は仕分け装置であって、買いサインではありません。数字の読み方もあわせてご覧ください。

主要相関の検定:三井住友FG(8316) r=+0.608(古典的Pearson両側検定・月次前年変化量どうし、月次YoYの系列相関や多重検定は未調整のため目安)。相関≠因果・多重検定

出典:長期金利=財務省「国債金利情報」・日本相互証券系の10年国債利回り(月次)を前年差に変換(ゼロ金利圏では前年比%でなく差分を使用)。株価=Yahoo Finance(調整後終値・月次・前年比)。「買っていたら」検証=2005〜2025年・毎年1月に等金額で買い1年保有・株価のみ(配当・売買手数料・税金は含まず)。「市場平均」=当サイト検証対象199社を等金額で保有した平均(TOPIX・日経平均ではありません)。局面判定は買付時点で公表済みの前年12月の長期金利前年差に限定(先読み防止)。相関は当サイト算出(前年比どうし)。算出=scripts/build_regime.py。[一次データ:財務省 国債金利情報↗]

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