市況・金利2026-06-13 公開

逆イールドは景気後退を当てたか——日本で37年実測したら、たった一度しか起きていなかった

長短金利の逆転(逆イールド)は景気後退の前触れ」——アメリカでは10年−2年金利差がマイナスになると、その後1〜2年で景気後退が来る、という強い経験則として知られます。では日本でも使えるのか。金利×銀行株で使った財務省の国債金利データで、10年−2年の金利差を37年分さかのぼって調べました。結論を先に言うと、日本では逆イールドがほとんど起きていません。そして起きたたった一度が、よりによって戦後最大の暴落の直前でした。

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検証方法

結果:37年で逆イールドはたった25ヶ月、実質1回

項目
調査期間479ヶ月(1986〜2026)
逆イールド(10年<2年)の月数25ヶ月(5.2%)
逆イールドが起きた局面1989年〜1991年のみ
金利差の最小値−0.60%(1990年3月)

37年・479ヶ月のうち、10年金利が2年金利を下回った(逆イールド)のはわずか25ヶ月(5.2%)。しかもその25ヶ月は、ほぼ1989年後半〜1991年夏の一塊に集中しています。つまり日本の逆イールドは『時々起きる景気サイン』ではなく、バブル末期に一度だけ起きた特異現象でした。米国が数年おきに逆イールドを経験するのとは、まったく事情が違います。

その一度は見事に当てた——でもn=1

逆イールド入り12ヶ月後の日経平均
1989年7月−11.2%
1989年9月−41.1%
日本で唯一の逆イールド局面(1989-91年・バブル末期)入り後12ヶ月の日経平均。−11%・−41%と暴落を当てたが、サンプルは実質1回でn=1の事例。
日本で唯一の逆イールド局面(1989-91年・バブル末期)入り後12ヶ月の日経平均。−11%・−41%と暴落を当てたが、サンプルは実質1回でn=1の事例。

唯一の逆イールド局面(1989〜91年)は、バブル崩壊の直前そのものでした。1989年末に日経平均は史上最高値38,915円を付け、そこから暴落します。逆イールド入りの12ヶ月後を見ると−41%。経験則どおり、見事に景気後退(と株の暴落)を先取りしていました。——ですが、これはサンプルが実質1回です。当サイトが繰り返し言ってきた『n<60は参考値』を、これ以上ないほど極端にしたのがこの指標で、n=1の的中は、当たったとも外れたとも統計的には言えません。たまたま一度起きて、たまたまそれが大暴落だった、という以上のことはデータからは言えないのです。

なぜ日本では逆イールドが起きないのか

金利差の水準と日経の前年比の相関を測ると、ほぼゼロ(−0.02)でした。逆イールドが起きないのだから、相関の取りようがない、というのが正直なところです。理由は明快で、日本銀行が長くゼロ金利・量的緩和・イールドカーブコントロールで金利を抑え込んできたため、そもそも金利の上下動が小さく、カーブが反転するほどの短期金利の上昇が起きませんでした。逆イールドは『市場が将来の利下げ=景気悪化を織り込む』ときに生じますが、政策金利がゼロに張り付いていれば、その織り込みも金利差に現れません。

結論:米国の名指標も、日本にそのまま持ち込めない

逆イールドは米国では強力な景気後退の先行指標です。でも日本で37年さかのぼると、使えるほど発生していない——唯一の発生が大暴落を当てたのは事実ですが、それはn=1の逸話であって、検証できる指標ではありませんでした。海外で有名な経験則を日本株に当てるときは、『そもそも日本でその現象が起きているか』を確かめる必要があります。男性下着指数やリップスティック効果と同じく、舞台が変われば指標は通用しないことがある——その実例として記録します。なお今後、日銀の金融正常化で金利が動くようになれば、逆イールドが日本でも観測可能な指標になるかもしれません。定点で見ていきます。

基準日:2026年6月13日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。数字の読み方もあわせてご覧ください。

出典:10年・2年国債金利は財務省「国債金利情報」(日次を月次平均)、日経平均はYahoo Finance(調整後終値・月次)。逆イールド=10年金利<2年金利の月。相関・集計は当サイト算出。1989〜91年の的中はn=1の事例であり、統計的な有意性を示すものではありません。基準日2026-06-13

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