カナリア検証2026-06-13 公開
銅金比は日経の温度計か——銅金比は今回の検証では銅単体より高い同月相関が観察された(r+0.58)
銅(Dr.カッパー)は景気の体温計といわれますが、当サイトの検証では日経との同月相関は+0.37どまりでした。海外の投資家がよく見るのは、銅をそのままでなく『銅÷金』=銅金比(カッパー・ゴールド・レシオ)です。景気敏感の銅を安全資産の金で割ることで、『リスクオンか、リスクオフか』をより純度高く取り出す、という発想。この比率は先行指標トーナメントで王者だった半導体(+0.44)を超えるのか、実測しました。
検証方法
- 銅先物÷金先物の比率(銅金比)と銀÷金の比率(金銀比)の前年比を、日経平均の前年比とラグ0〜6ヶ月で相関(約18年・2008年〜)
- 比較対象として、当サイトが既に測った銅単体(+0.37)・半導体SOX(+0.44)を併記
- 『先行指標』として使えるかを見るため、同月だけでなくラグ別も確認
結果:銅金比は銅単体・半導体を上回った
| 指標 × 日経平均(同月) | 相関 r | n |
|---|---|---|
| 銅金比(銅÷金) | +0.58 | 212 |
| 半導体SOX(参考・既出) | +0.44 | — |
| 銅単体(参考・既出) | +0.37 | — |
| 金銀比(銀÷金) | +0.34 | 212 |

銅金比の同月相関は+0.58。銅をそのまま使った+0.37を大きく上回り、先行指標トーナメントの王者だった半導体(+0.44)も超えました(コロナ除外でも+0.57とほぼ変わらず頑健)。『景気敏感の銅を、安全資産の金で割る』というひと手間が、景気・リスク選好の信号を濃くしているのが数字に出ています。一方、同じ発想の金銀比(銀÷金)は+0.34どまり。銀は工業需要と投資需要が混ざるぶん、景気の純度では銅金比に劣りました。なお、銅金比の数字は約18年・n=212で、横並びにした半導体・銅は別期間の既出値のため、順位は参考としてお読みください。
ただし『先行』ではなく『一致』——同月が最強
注意したいのは、銅金比が最も効くのは同月(ラグ0)だという点です。1ヶ月先・2ヶ月先に日経を予言する力は確認できませんでした。これは半導体SOXやVIXと同じで、カナリア候補はどれも『先行指標』というよりその月の景気・リスク選好を映す“同時カメラ”です。銅金比が上がった月は日経も上がっている確率が高い——それは事実ですが、『銅金比が上がったから来月買う』という使い方ができるわけではありません。むしろ、日経が景気敏感セクター主導で動いているのか、ディフェンシブ主導なのかをその場で確認する温度計として読むのが実態に合っています。
結論:カナリア検証の新しい最大値、ただし読み方は『温度計』
銅金比×日経の+0.58は、当サイトがこれまで測った外部指標カナリアの中で最大級でした。『銅を金で割る』というシンプルな加工が、景気の信号を濃くする——これは覚えておく価値があります。ただし繰り返すと、効くのは同月であって先行ではありません。誰も日経を1ヶ月先に予言できなかったという当サイトの結論は、銅金比でも変わりませんでした。比率は温度計として優秀、しかし予言装置ではない。相関は過去の記録であり、将来の値動きを保証するものではありません。
なぜ『割り算』ひとつで信号が濃くなるのか(メカニズム)
この検証で一番おもしろいのは、銅そのものの+0.37が、金で割っただけで+0.58まで跳ね上がるという事実です。銅を増やしたわけでも、新しいデータを足したわけでもない。ただ分母に金を置いただけで、日経との連動が0.2ポイント以上濃くなった——ここには理屈があります。銅の値段は「景気が良くて工業需要が強い」という信号と、「ドルが弱い・インフレ・地政学」といったマクロのノイズが混ざって出来ています。金もまた、そのマクロのノイズ(実質金利・通貨・恐怖)をたっぷり吸って動く。だから銅を金で割ると、両方に共通して乗っているノイズが分母と分子で打ち消し合い、残るのは『景気・リスク選好』の純度が高い成分になります。これがカッパー・ゴールド・レシオを海外の投資家が好む理由で、そのひと手間が+0.37→+0.58という差になって現れました。r²に直せば+0.58は約34%、+0.37は約14%——日経の月次変動を説明する割合が2倍以上に増えた計算です。金銀比(+0.34)が伸び切らなかったのも同じ理屈で、銀は工業需要と投資需要が半々に混ざるぶん、割り算をしてもノイズが残ります。純度の高い分子(銅)と、純度の高い分母(金)が揃って初めて、割り算は効く。もっとも、これはデータの並びに合う一つの解釈で、因果を証明したものではありません。
+0.58を『銅金比で日経を売買できる』と読むのは誤り(数字の読み方)
過去最大級の+0.58を見て、「銅金比が下がったら日経を売れば逃げられる」と機械的に組むのは危険です。決定的なのは、この+0.58が同月(ラグ0)の数字で、1〜2ヶ月先行させると力が確認できない点です。銅金比が崩れた月は、日経ももう同じ月に崩れている。翌月にさらに続落するという先行性は、データに出ていません。+0.58は「同時に動く強さ」であって「先に動く強さ」ではなく、この2つを混同すると事後的にしか使えない比率を予測に流用する罠を踏みます。もう一つ、n=212・約18年でならした平均値だという点も効きます。京成の0.72のような短い窓の高相関ではないぶん頑健ですが、それでもリーマンやコロナのように景気敏感セクターと安全資産が同時に大きく振れた局面が、水準を支えている可能性は残ります。「銅金比が高いから日経は上がる」ではなく、「いま市場がリスクオンで動いているか、リスクオフで動いているかを、その場で確かめる」——これが+0.58の正しい使い道です。比率の強さは景気の温度を測る精度であって、未来を当てる精度ではありません。
同じ『割り算で純度を上げる』手を、自分で試す3ステップ
この記事の値打ちは「銅金比の答え」より、ノイズを割り算で絞るという手法そのものにあります。次の型でそのまま自分で確かめられます。
- ①単体のrと、割り算後のrを必ず並べる——銅単体+0.37→銅金比+0.58のように、加工で相関が濃くなったなら、割り算がノイズを削った証拠。逆に変わらない・下がるなら、その割り算は意味がありません。
- ②分母は『分子と同じノイズを吸う資産』を選ぶ——銅金比が効いて金銀比(+0.34)が伸びなかったように、分母は景気と無関係で、通貨・恐怖・実質金利だけで動く純度の高い資産(金)が向きます。分母選びが割り算の成否を決めます。
- ③必ず同月とラグを分けて見る——濃くなったrが同月(ラグ0)で最大なら、それは先行指標ではなく純度の高い温度計。この記事のように先行では力が出ないなら、予測でなく現状確認に使うのが正しい向きです。
この3点が揃って初めて、比率は「なんとなく海外で人気」から「自分で純度を確かめた温度計」に変わります。銅単体や半導体SOXも、まったく同じ手順で分解した姉妹記事です。1本の結論を覚えるより、この型を持ち帰るほうが、どの指標に出会っても役に立ちます。
基準日:2026年6月13日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。数字の読み方もあわせてご覧ください。
主要相関の検定:銅金比(銅÷金) r=+0.58(95%CI [+0.48, +0.66]、n=212、p<0.001)。古典的Pearson両側検定で、月次YoYの系列相関や多重検定は未調整のため目安です。相関≠因果・多重検定
出典:銅・金・銀・日経平均はYahoo Finance(先物/指数・調整後終値・月次)。銅金比=銅先物÷金先物、金銀比=銀先物÷金先物の前年比。相関は当サイト算出(同月・ラグ0〜6走査)。銅単体+0.37・半導体SOX+0.44は当サイトの既出検証値(期間が異なるため横並びは参考)。期間は約18年(2008年〜)・n=212。基準日2026-06-13