解説ハブ2026-06-20 公開
恐怖指数(VIX)とは何か——ボラティリティ高の相場を実データで読む
「ボラが高い」「VIXが急騰した」——そんなニュースが流れると、株式市場は大きく揺れます。だが恐怖指数とは何を測っているのか、Fear&Greedとどう違うのか、実際にどの銘柄にどれくらい影響するのか。このページは、kabusoukan の VIX・ボラティリティ系検証記事をまとめた解説ハブです。相関や傾向はすべて過去データに基づくものであり、将来の値動きを予測するものではありません。
VIXとは何か——「市場の警戒感」をリアルタイムに測る温度計
VIX(Cboe Volatility Index)は、米国S&P500のオプション価格から計算される指数で、今後30日間に市場がどれだけ大きく動くかを投資家が「見込んでいるか」を表します。正式には「インプライド・ボラティリティ」と呼ばれ、一般に「恐怖指数」と呼ばれています。
- VIXが低い(10〜15程度):市場が落ち着いている状態
- VIXが高い(25以上):投資家が大きな値動きを予想している状態(不安・混乱)
- 歴史的高値:コロナショック(2020年3月)で一時80超、リーマンショック(2008年)では70超に達した
VIXは「株が下がるから投資家がヘッジを買う=VIXが上がる」という構造で動くため、株価の下落と同時に急騰する性質があります。
VIXとFear&Greedの違い——何を測っているか
| 指標 | 算出元 | 主な構成要素 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| VIX | Cboe(米国) | S&P500オプション価格のインプライドボラティリティ | オプション市場の「ヘッジ需要」を直接計測。客観的な価格データ。 |
| CNN Fear&Greed Index | CNN Business | VIX・モメンタム・プット/コール比・安全資産需要 等7指標の合成 | 複数指標の加重平均。VIXはその構成要素の一部。「市場心理の総合スコア」 |
両者が似た動きをするのは、VIXがFear&Greedの重要な構成要素だからです。ただしFear&Greedはモメンタム・安全資産需要など他の要素も加味するため、両者を「相関している」と言っても辞書価値は薄い(同じ材料を使っているのだから当然)。kabusoukan では「VIX×個別株」の実測に軸を置いています。
VIXは株を先取りしない——「同時に動く温度計」だった
「VIXが跳ねたら株が下がる予兆」と言われますが、VIXは株の下落を先行して予告するのではなく、株が下がっているその瞬間に同時に跳ね上がることが実測で確認されています。
| VIXと日経225の関係(lag別相関・437ヶ月) | 景気敏感株バスケット | 日経225 |
|---|---|---|
| VIXが2か月先行(lag+2) | +0.03 | +0.07 |
| VIXが1か月先行(lag+1) | -0.12 | -0.14 |
| 同月(lag0) | -0.47 | -0.42 |
| 株が1か月先行(lag-1) | +0.08 | +0.09 |
相関は同月で最大(逆相関-0.42〜-0.47)。VIXが1か月先行しても-0.14と一気に弱まります。先行指標としての使い方は難しいというのが実測の結論です。詳細は VIX「恐怖指数」は株より先に鳴くのか——逆カナリアも「同時」だった をご覧ください。
上表の出典:kabusoukan.com vix-canary検証記事。VIX=Yahoo Finance ^VIX(月末水準の前月差)、株価=月次調整後終値。景気敏感株バスケット=6銘柄等重。検証期間=最長437ヶ月(1990年〜)。
VIXが急騰した翌日の日経平均——130回の実測
VIXが前日比+20%以上に急騰した日(130回・1990〜2025年)の翌営業日と、その約1ヶ月後の日経平均を追いかけました。
| タイミング | 平均 | 中央値 | 勝率 | 最悪/最良 |
|---|---|---|---|---|
| VIX急騰の翌営業日(n=130) | -1.91% | -1.71% | 11% | 最悪 -12.4% |
| 参考:全営業日 | +0.03% | +0.04% | 52% | — |
| VIX急騰から約1ヶ月後(n=129) | +0.58% | — | 57% | +23.0% / -27.1% |
翌日の下げは強い(10回中9回は下落)。ただしVIXが急騰すること自体は事前に分かりません。約1ヶ月後は平均すればプラスに戻す傾向がありますが、ばらつきが非常に大きく(最大+23%〜最小-27%)、機械的に期待できるものではありません。「先回りの売買信号」ではなく「荒れ相場でパニックを防ぐ地図」として使うのが適切です。詳細は VIX恐怖指数が急騰した翌日、日経平均はどうなったか——130回を検証 をご覧ください。
VIX上昇時——ディフェンシブと景気敏感はどちらが下げにくいか
VIX水準の月次変化(前月差)と、個別銘柄の月次リターンの相関を測定しました。全銘柄で逆相関(VIXが上がると株は下がる方向)ですが、強さに差があります。
| 銘柄(セクター) | r(全期間) | n | r(コロナ除く) | 有意水準 |
|---|---|---|---|---|
| 参考 | ||||
| 日経225(参考) | -0.417 | 437 | -0.406 | p<0.01 |
| ディフェンシブ | ||||
| JT(2914)/ たばこ | -0.264 | 317 | -0.272 | p<0.01 |
| NTT(9432)/ 通信 | -0.250 | 317 | -0.257 | p<0.01 |
| KDDI(9433)/ 通信 | -0.172 | 317 | -0.188 | p<0.01 |
| 花王(4452)/ 日用品 | -0.146 | 317 | -0.147 | p<0.01 |
| 味の素(2802)/ 食品 | -0.095 | 317 | -0.127 | p=0.09(参考値) |
| 景気敏感 | ||||
| 日本製鉄(5401)/ 鉄鋼 | -0.360 | 317 | -0.292 | p<0.01 |
| 三菱UFJ(8306)/ 銀行 | -0.347 | 249 | -0.334 | p<0.01 |
| クラレ(3405)/ 化学 | -0.317 | 317 | -0.314 | p<0.01 |
| 三井住友FG(8316)/ 銀行 | -0.267 | 317 | -0.244 | p<0.01 |
| トヨタ(7203)/ 自動車 | -0.248 | 325 | -0.241 | p<0.01 |

上表の測定:VIX水準の月次変化(Yahoo Finance ^VIX 前月差)× 各銘柄の月次リターン(調整後終値 pct_change)。1990年以降の月次データ。基準日2026年6月20日。ピアソン相関係数・両側t検定。この測定はresults_master.csv(YoY対比)とは手法が異なる独立測定であることに注意。
傾向のまとめ(過去の傾向であり、将来を保証しない):
- 景気敏感株(鉄鋼/銀行/化学)はVIX急騰時に比較的大きく下げやすい(r=-0.30〜-0.36)
- ディフェンシブ株(食品/通信/日用品)は逆相関が弱め(r=-0.10〜-0.26)だが、全銘柄で逆相関は存在
- 「ディフェンシブだから安全」は過去の相関の弱さを指すに過ぎず、急落局面で無傷という意味ではない
- 味の素のみp=0.09で有意水準5%を超える(n=317・参考値扱い)
日経平均は暴落からどれくらいで戻るか
「VIXが高い=株が下がっている」局面がいつか終わるとして、過去の暴落(高値から-20%超)後の日経平均の回復日数も実測しています。日経平均は暴落から何日で戻るのか——20%超の下落8回を検証(1965年以降の8回。多くは1〜2年だがバブル崩壊は34年かかった例外がある)。
まとめ:VIX系検証記事の一覧
| 記事 | テーマ | 主な数値 |
|---|---|---|
| VIXは株より先に鳴くのか | 先行指標性の検証 | 同月r=-0.42(日経)・先行時r=-0.14 |
| VIX急騰翌日の日経(130回) | 急騰イベント後の短期動向 | 翌日平均-1.91%・勝率11% |
| 日経は暴落から何日で戻るか | 大型暴落後の回復期間 | 8回の暴落・中央回復期間〜400日(バブル除く) |
| カナリア指数一覧 | 先行指標の総合比較 | 銅・SOX・キーエンス等の先行性比較 |
基準日:2026年6月20日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。数字の読み方もあわせてご覧ください。
出典:VIXデータ:Yahoo Finance(^VIX)。株価データ:Yahoo Finance(各銘柄.T / ^N225)。月次・調整後終値。vix-canary記事の表は同記事(2026-06-11公開)から転記。ディフェンシブvs景気敏感の測定は本記事独自(2026-06-20)。