アノマリー検証2026-06-12 公開
日経平均は暴落から何日で戻るのか——20%超の下落8回を検証
暴落のニュースが流れると、決まって出てくるのが「いつ戻るのか」という問いです。日経平均が過去に高値から20%以上下げた局面で、元の高値を取り戻すまでに何日かかったのか——1965年以降の歴代8回を一覧にしました。
検証方法
- 対象:日経225の日次終値(1965〜2026年)
- 歴代最高値からの下落が20%以上に達した局面を抽出し、その後同じ最高値を回復した日までの暦日数を計算
- 「天井→大底(最も下げた日)」と「天井→回復」の2つの日数を併記
結果:多くは数か月〜数年。ただしバブル崩壊だけ別次元
| 天井 | 大底 | 回復 | 下落率 | 天井→回復 |
|---|---|---|---|---|
| 1965年1月 | 1965年7月 | 1965年11月 | -21% | 299日 |
| 1966年4月 | 1967年12月 | 1968年7月 | -21% | 850日 |
| 1970年4月 | 1970年5月 | 1971年6月 | -24% | 435日 |
| 1971年8月 | 1971年8月 | 1972年1月 | -21% | 145日 |
| 1973年1月(オイルショック) | 1974年10月 | 1978年3月 | -37% | 1,889日 |
| 1987年10月(ブラックマンデー) | 1987年11月 | 1988年4月 | -21% | 176日 |
| 1989年12月(バブル崩壊) | 2009年3月 | 2024年2月 | -82% | 12,473日 |
| 2024年7月 | 2025年4月 | 2025年8月 | -26% | 397日 |

8回のうち7回は145日〜1,889日(約5ヶ月〜5年)で高値を回復しています。中央値は約416日(1.1年)。ブラックマンデー(176日)のように半年で戻ったケースもあります。
例外は「バブル崩壊」——34年かかった
ただ一つ次元が違うのが1989年末のバブル崩壊です。下落率-82%、最高値(38,915.87円)を終値で取り戻したのは2024年2月22日(終値39,098.68円)。実に12,473日=約34年かかりました。「日本株は戻らない」という長年の感覚は、この一度きりの巨大な崩壊が作ったものでした。過去の20〜30%台の下落局面と、1989年バブル崩壊のような長期構造調整とでは、回復期間のスケールが大きく異なります。実体から大きく乖離した水準からの崩壊は、戻るまでの時間軸が桁違いになり得る、という教訓です。
結論:直近の暴落は約13ヶ月で回復した
記憶に新しい2024年7〜8月の急落(-26%)は、約13ヶ月(397日)で高値を回復しました。歴代の「普通の暴落」の範囲内です。過去8回という少ない事例からの傾向であり(n=8)、回復までの期間は下落の性質や時代背景で大きく変わります。将来の暴落が同じように戻る保証はありません。また、ここでの「回復」は日経平均(価格指数)の終値ベースであり、配当込みかどうか・指数の構成銘柄入替・インフレ・通貨(円建てか外貨建てか)・購入時点といった条件によって、投資家の実際の体験は変わります。「過去はこのくらいの時間軸だった」という地図として参考にしてください。
「日本株は戻らない」という感覚は、たった1回が作った(メカニズム)
この一覧で一番効いてほしくない事実は、「日本株は暴落したら戻らない」という長年の刷り込みが、8回のうちたった1回の異常値で出来ているという点です。バブル崩壊を外した7回を並べると、回復までは145日〜1,889日、中央値で約416日=おおむね数ヶ月から数年におさまります。ブラックマンデー(176日)やオイルショック(1,889日≒5年)を含めても、この範囲です。ところがバブル崩壊だけは-82%・12,473日(約34年)と、下落率も回復日数も他の7回と桁が違う。平均を取れば当然この一発に引きずられて「日本株はとんでもなく戻りが遅い」という印象になりますが、それは34年ぶんの一点が平均を殴っているだけで、残り7回の実像とはかけ離れています。なぜバブル崩壊だけが別次元だったのか——鍵は実体からの乖離の大きさです。1989年末の日経は企業の実力から大きく浮いた水準まで買われ、その高さまで戻るには実体経済が長い年月をかけて追いつく必要がありました。一方、-20〜30%台の「普通の暴落」は、地合いの急変やショックで一時的に売られただけで、実体がついてくれば数ヶ月〜数年で元の高さに届く。回復の速さを決めるのは下落率そのものより、天井が実体からどれだけ離れていたかだと読めます。同じ「暴落」でも、実体から離れた天井からの崩壊と、実体の範囲内での急落は、戻る時間軸が桁で変わる——というのがデータの並びに合う解釈です(因果を証明したものではありません)。
「中央値1.1年」を『次も1年で戻る』と読むのは誤り(数字の読み方)
中央値約416日(1.1年)という数字を、「暴落しても1年待てば戻る」と機械的に受け取るのは危険です。第一に、これはn=8という極端に少ない事例から出た中央値で、内訳は145日から34年まで大きくばらついています。平均を出せばバブル崩壊の12,473日に引っ張られ、中央値を出せばそれが消える——どの代表値を使うかで印象が丸ごと変わる典型です。第二に、この8回はすべて事後に「20%超下げた」と分かった局面で、下げている最中に、それが半年で戻る176日型なのか、5年かかる1,889日型なのか、34年型なのかは判別できません。回復日数は結果としてそう並んだだけです。第三に、ここでの「回復」は日経平均(価格指数)の終値ベース。配当込みなら回復はもっと早く、購入時点が天井なら体験は最悪、積立で買い下がっていれば話はまた別——「指数が戻った日」と「自分の資産が戻った日」は同じではありません。過去の時間軸は、暴落時にうろたえないための地図にはなりますが、「◯日で戻る」と当てる時刻表にはならない、というのがこの8回の正直な読み方です。
同じ『暴落の履歴』を、自分で確かめて備える3ステップ
この記事の値打ちは「1.1年」という数字そのものより、暴落を怖がりすぎず、侮りすぎもしないための見方にあります。次の型で自分の中に地図を持てます。
- ①平均でなく中央値と全事例を見る——バブル崩壊の34年が平均を殴るように、少ない事例の平均は一発の異常値で壊れます。中央値と、外れ値を含む全リストを必ず並べて見ることです。
- ②下落率より『天井が実体からどれだけ離れていたか』を問う——回復が桁違いに遅れたのは、下落率が大きい回ではなく、実体から最も乖離した天井(バブル)からの崩壊でした。今の水準が実力から浮いているかどうかが、戻りの速さを分けます。
- ③『指数の回復』と『自分の回復』を分けて考える——配当・購入時点・積立の有無で、同じ暴落でも投資家ごとの回復時間はまるで違います。指数の日数をそのまま自分の体験に置き換えないことです。
この3点が揃って初めて、暴落の履歴は「なんとなく怖い」から「時間軸まで確かめた地図」に変わります。急落の翌日の動きはVIX急騰の翌日で、季節性はSell in Mayで分解しています。1つの数字を覚えるより、この見方を持ち帰るほうが、次にどんな暴落が来ても役に立ちます。
基準日:2026年6月12日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。数字の読み方もあわせてご覧ください。
出典:株価データはYahoo Finance(日経225 ^N225・日次・調整後終値)。回復=下落前の最高値を終値で回復した日。直近(2024年7月〜)の局面は日経平均プロフィル等の公表値で照合:天井2024年7月11日(終値42,224.02円)/大底2025年4月7日(終値31,136.58円・約-26%)/2025年8月12日に終値42,718.17円で約1年1か月ぶりに最高値を更新(=天井から397日)。バブル崩壊の高値更新は1989年12月29日終値38,915.87円→2024年2月22日終値39,098.68円。