アノマリー検証2026-06-11 公開
「節分天井・彼岸底」は日経225で当たったか——62年分のデータで検証
「節分天井・彼岸底(せつぶんてんじょう・ひがんぞこ)」——2月3日(節分)頃に相場が高値をつけ、3月20日(彼岸の中日)頃に底をつける、という古い相場格言です。米国の決算発表が一段落して材料切れになり、配当落ちや3月末の手仕舞いで下げる、と説明されてきました。日経225の62年で本当にそうだったか調べました。
検証方法
- 対象:日経225の日次終値(1965〜2026年、62年)
- 各年の節分前後5営業日(合計約10営業日)の終値平均と、彼岸前後5営業日の終値平均を計算
- 2つの平均値から「節分→彼岸の変化率」を算出。マイナスなら「節分高→彼岸安」の格言通り
- 比較対照として、年内の任意45日窓(4月〜11月の各月15日起点)のリターン分布も計算します
結果:節分→彼岸はむしろ「上がっている」
| 節分→彼岸(62年) | 数値 |
|---|---|
| 平均変化率 | +1.23% |
| 中央値 | +0.43% |
| 下落した年(格言が当たった年) | 48% |
| 最大下落(2020年・コロナ) | -23.75% |
| 最大上昇(2002年) | +16.99% |

62年の平均では、節分から彼岸にかけて日経225は平均+1.23%上昇。下落した年は48%とほぼ半々で、「節分が高くて彼岸が安い」傾向はデータには現れませんでした。直近15年でも平均+1.05%、下落率53%と、まったく同じ傾向です。
「他の45日間と比べて特に下がる時期か」も検証
| 窓 | 平均変化率 | 下落した割合 |
|---|---|---|
| 節分→彼岸(約45日) | +1.23% | 48% |
| 任意45日窓(4〜11月の各月15日起点・n=481) | +0.34% | 43% |
面白いことに、節分→彼岸は他の任意45日間(平均+0.34%)と比べてむしろ強いのです。下落した割合は若干高いものの(48% vs 43%)、平均では春のラリー期間と言える方が実態に近い結果でした。3月決算企業の業績期待や、新年度入りを見越した買いが入りやすい時期なのかもしれません。
結論:節分天井・彼岸底は当たらない(むしろ春のラリー期間)
「節分天井・彼岸底」は日経225の長期データでは確認できませんでした。下落した年は48%と五分五分で、平均ではむしろ上昇しています。古典的な相場格言の中にはこのように、現代では当てはまらないものも少なくありません。当サイトで検証した中では、「Sell in May」が長期では実在したのと対照的です。
大きな下落となった年(2020年-23.75%・2008年・1990年など)はいずれもコロナ・リーマン・バブル崩壊といった全体的な急落イベントで、節分→彼岸という時期固有の現象とは別物です。「3月決算月だから売られる」という単純な物語は、データで裏付けられない、というのが結論です。
「格言と逆」がなぜ起きたのか(仮説・断定はしません)
この検証で一番面白いのは、格言が「天井→底」と下げを予言した45日間が、実際には平均+1.23%と逆に上げていた点です。しかも任意45日窓の+0.34%と比べても強い。ここには「格言が作られた時代」と「今の市場」の断層が効いていると読めます。「節分天井・彼岸底」は、米国の決算一巡で材料が切れ、3月末の配当落ちや手じまいで下げる、という説明で語られてきました。ところが日本の2月〜3月は、見方を変えれば3月本決算に向けた業績期待が高まり、新年度入りを先取りした買いが入りやすい季節でもあります。この検証で節分→彼岸が強く出て、続く月別の集計でも4月が最強だったのは、同じ「年度替わりに向けた資金の前倒し」を別の窓で捉えているから、と整理できます。つまり格言が想定した「売られる理由」より、「買われる理由」の方が現代では勝っている、という読み方ができます。もっとも、これはデータの並びに合う筋書きの一つであって、因果を証明したものではありません。格言が生まれた頃には本当に節分天井・彼岸底の年が続いていた可能性もあり、「昔は効いたが今は効かない」のか「そもそも偶然だった」のかは、このデータだけでは切り分けられません。言えるのは、少なくとも直近15年でも平均+1.05%・下落率53%と同じ傾向で、格言どおりの下げは今の日経225には現れていない、という一点です。
この「+1.23%」を額面で受け取るのは危うい(数字の読み方)
「節分→彼岸は上がる」と裏返して機械的に買うのも、同じくらい危険です。まず下落した年が48%ある——ほぼ半々です。平均+1.23%という数字は、+16.99%(2002年)のような大きく上げた年が全体を押し上げた結果で、中央値は+0.43%と平均よりずっと低い。これは「一部の当たり年が平均を吊り上げている」典型的な形で、どの年も一様に+1.23%上がるわけではありません。さらに恐ろしいのは下振れの深さです。2020年のコロナでは同じ45日で-23.75%——1年ぶんの利益を軽く吹き飛ばす下げが、この窓でも起こりえます。平均がプラスでも、負ける年が半分近くあり、外れたときの傷が極端に深いアノマリーを売買ルールの土台にはできません。標本の薄さも忘れてはいけません。62年といっても、この45日は年に一度しか観測できず、標本はたった62個。同じ「62年」でも日次の任意区間なら1万件を超える標本が取れるのと比べ、季節アノマリーはきわめて心もとない土台の上に立っています。節分天井・彼岸底は「格言が今も当たるかの検証材料」には使えても、「毎年この窓で張れば勝てる」という機械的トレードの根拠にはならない——これがこの1本の持ち帰りです。
同じ検証を、他の相場格言で自分で再現する
この記事の価値は「節分天井・彼岸底の答え」より、どんな相場格言にも当てられる手順にあります。「二日新甫は荒れる」「彼岸底」「天赦日は上がる」——古い格言を、次の型でそのまま自分で検証できます。
- ①格言を日付の言葉に翻訳する——「節分天井・彼岸底」なら「2/3前後5営業日の平均→3/20前後5営業日の平均」のように、誰がやっても同じ数字になるまで定義を詰める。ここが曖昧だと、格言が当たるように窓を選べてしまいます。
- ②必ず「任意の同じ長さの窓」と並べる——この記事が節分→彼岸の45日を任意45日窓(+0.34%)と並べたように、単独の+1.23%には意味がありません。「特別に強い/弱い時期なのか」は、普通の45日と比べて初めて言えます。
- ③平均だけでなく中央値・下落率・最悪年を必ず見る——平均は極端な1年(+16.99%や-23.75%)に引っ張られます。中央値(+0.43%)と下落率(48%)と最大下落を並べて初めて、「全体が強いのか、一部の年が効いているだけか」が見分けられます。
この3点が揃って初めて、相場格言は「昔からそう言う」から「自分で確かめた数字」に変わります。同じ手順で分解した姉妹記事に、長期で実在したSell in Mayと、標本が薄すぎて根拠にできなかった干支アノマリーがあります。1本の結論を覚えるより、この型を持ち帰るほうが、どの格言に出会っても役に立ちます。
基準日:2026年6月11日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。節分・彼岸の日付は年により微小に動きますが本検証では固定日(2/3・3/20)の前後5営業日を窓としました。数字の読み方もあわせてご覧ください。
出典:株価データはYahoo Finance(日経225 ^N225・日次・調整後終値)