アノマリー検証2026-06-11 公開

干支アノマリーは当たるのか——「辰巳天井」を日経225の61年で調べた

「辰巳天井(たつみてんじょう)、午尻下がり、未辛抱、申酉騒ぐ、戌笑い、亥固まる、子は繁栄、丑つまずき、寅千里を走り、卯跳ねる」——干支ごとに相場の調子を言い表した有名な格言があります。日経225の61年分を干支別に集計してみました。

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結果:この集計では酉年が最も高く、午年が最も低かった

集計期間は1965〜2025年の61暦年(暦年リターン=各年末終値÷前年末終値−1)。2026年は午年ですが年の途中(未完)のため集計には含めていません。干支は12年周期なので、この61年では巳(み)だけが6回、残り11の干支は各5回になります(年数の合計=6+5×11=61)。各干支の集計対象年は次のとおりで、いずれもわずか5〜6回しかないことを念頭に読んでください。

各干支の集計対象年(クリックで開く)

酉=1969・1981・1993・2005・2017/巳=1965・1977・1989・2001・2013・2025(6回)/子=1972・1984・1996・2008・2020/卯=1975・1987・1999・2011・2023/辰=1976・1988・2000・2012・2024/亥=1971・1983・1995・2007・2019/未=1967・1979・1991・2003・2015/申=1968・1980・1992・2004・2016/寅=1974・1986・1998・2010・2022/丑=1973・1985・1997・2009・2021/戌=1970・1982・1994・2006・2018/午=1966・1978・1990・2002・2014(5回・2026は未完で除外)

干支平均年間リターン勝率年数
酉(とり)+21.8%100%5
巳(み)+17.1%67%6
子(ね)+16.0%60%5
卯(う)+15.1%80%5
辰(たつ)+14.0%80%5
亥(い)+13.6%80%5
未(ひつじ)+5.5%60%5
申(さる)+4.3%80%5
寅(とら)+2.3%20%5
丑(うし)-0.2%60%5
戌(いぬ)-0.6%60%5
午(うま)-4.9%60%5

※巳(み)と午(うま)は、当初の集計で午年に未完の2026年を誤って含めて年数を6としていた誤りを正し、対象年を巳=6年・午=5年に取り直して再計算した確定値です(巳=+17.1%/勝率67%、午=−4.9%/勝率60%)。なお各干支は5〜6回しかないため、酉年の「勝率100%」も含め、勝率や平均の順位に統計的な意味はほとんどありません(たまたま強い年・弱い年が数回続いただけで順位は簡単に入れ替わります)。

干支と株価のアノマリー——辰巳天井は当たるのか61年検証を表すグラフ
干支別の日経平均 年間リターン(1965〜2025年)。酉が最高・午が最低だが、各干支5〜6回の少標本で順位は偶然に大きく左右されます。

格言と当たっている?

格言と照らすと、当たっている部分とハズれている部分が混在します。

結論:話のタネとしては面白いが、根拠にはできない

最大の問題はサンプル数です。干支は12年に一度なので、61年でも各干支わずか5〜6回ぶん。たまたま強い年・弱い年が数回あっただけで順位は簡単に入れ替わります。実際「酉年100%勝率」も、たった5回の上昇が続いただけにすぎません。統計的にはほとんど意味がなく、投資判断の根拠にはできません。干支アノマリーは新年の話のタネとして楽しむもの、と割り切るのが正解です。

「格言が半分当たる」のがむしろ危ない理由(数字の読み方)

この検証の落とし穴は、格言がまるっきり外れていないことにあります。辰(+14.0%)巳(+17.1%)が上位で「辰巳天井」と一致し、午(-4.9%)が最弱で「午尻下がり」とも合う。当たっている部分を見せられると、人は「やはり古人の知恵は正しい」と信じたくなります。ところが同じ格言で「申酉騒ぐ(荒れる)」とされた酉年は+21.8%・勝率100%で12干支の最高、「戌笑い」の戌年はわずかにマイナス。当たりと外れが半々に混ざっているとき、当たった側だけを覚えてしまうのが、アノマリーの一番危ない罠です。ここで効いているのは、干支という要因ではなく標本の薄さです。各干支5〜6個しか観測がないと、順位はほぼ偶然で決まります。酉年5回がたまたま全部プラスだったのは、コイントスを5回投げて5回表が出るのと同じ程度の出来事——珍しくはあっても、コインに「表が出る力」がある証拠にはなりません。しかも12干支×(平均・勝率)で並べれば、どこかに「当たって見える」組み合わせが必ず生まれます。これは多重比較の問題で、選択肢を増やすほど偶然の一致は避けられなくなります。もっとも、これはデータの並びをどう解釈するかの話であって、干支に力が「無い」ことを証明したわけでもありません。ただ、5〜6個の標本からは「有る」とも「無い」とも言えない、というのが正直なところです。

同じ「少標本アノマリー」を見抜く手順を自分のものにする

この記事の価値は「干支の答え」より、少ない標本のアノマリーに騙されない手順にあります。「◯◯の年は上がる」「△△が起きた翌年は暴落」——年単位・イベント単位で語られる話を、次の型でそのまま自分で見分けられます。

この3点が揃って初めて、干支や年回りの話は「昔からそう言う」から「自分で確かめた数字」に変わります。標本の数え方こそ違え、同じ「少標本の罠」は大型IPO(n=7)衆院選(n=12)の検証にも共通します。1本の結論を覚えるより、この「回数を数える」型を持ち帰るほうが、あらゆる年回りアノマリーに出会ったとき役に立ちます。

基準日:2026年6月11日。各干支のサンプルは5〜6年と極めて少なく、統計的な信頼性はありません。本記事は娯楽・参考目的で、将来の値動きの予測でも投資助言でもありません。アノマリー検証の一覧もご覧ください。

出典:株価データはYahoo Finance(日経225 ^N225・日次から暦年リターンを算出)。集計対象は1965〜2025年の61暦年(途中の2026年は除外)。暦年リターンは公表値で照合(例:2025年〔巳〕の日経平均は年末終値約50,400円で前年末比+約26%)。

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