アノマリー検証2026-06-11 公開
日経225は何月が上がりやすいか——41年分の月別アノマリーを調べた
「4月は新年度で株が上がる」「夏枯れで8〜9月は弱い」「年末ラリー」——月ごとの株価の癖(季節性アノマリー)はよく語られます。日経225の月別の平均リターンを1985年からの41年分で集計し、本当にそうなのか確かめました。
結果:この期間では4月の平均が高く、8〜9月の平均が低かった
| 月 | 平均リターン | 中央値 | 勝率 |
|---|---|---|---|
| 1月 | +0.55% | +0.58% | 56% |
| 2月 | +0.73% | +0.83% | 60% |
| 3月 | +0.60% | +1.40% | 55% |
| 4月 | +1.81% | +1.36% | 60% |
| 5月 | +1.07% | +1.97% | 62% |
| 6月 | +0.03% | +0.99% | 57% |
| 7月 | +0.06% | -0.05% | 49% |
| 8月 | -0.65% | -1.26% | 46% |
| 9月 | -0.81% | -1.13% | 41% |
| 10月 | +0.25% | +0.21% | 51% |
| 11月 | +1.38% | +1.96% | 63% |
| 12月 | +1.06% | +2.03% | 66% |

41年の平均では、4月(+1.8%)が最も強く、11月・12月の年末も堅調。逆に8月(-0.7%)・9月(-0.8%)はマイナスで、勝率も4〜5割を切ります。「夏枯れ」「彼岸底」と呼ばれる夏の弱さ、「新年度買い」の4月、「年末ラリー」——語られてきた季節性は、おおむねデータでも確認できました。
直近15年でも「夏の弱さ」は残っている
季節性は時代とともに薄れることがあるので、直近15年だけでも見てみました。すると4月(+2.2%)の強さと、8月(-0.6%)の弱さは依然として残っていました。一方で、かつて最弱だった9月は直近では+0.8%とプラスに転じており、季節性の中身は少しずつ変化しています。年末(10-11月)の強さは直近ではむしろ際立っています(11月+3.0%・勝率73%)。
結論:季節性らしい傾向は見られるが、売買判断には弱いが、頼りすぎは禁物
日経225には「4月強い・夏弱い・年末強い」という季節の癖が、41年の長期で確かに存在しました。ただし各月の平均リターンの差は1〜2%程度で、年によるばらつき(勝率は最も偏った9月でも41%)を考えると、これだけで売買を決めるには弱すぎます。季節性は「夏場は無理をしない」程度の参考材料にとどめ、機械的な売買ルールにはしない方が無難です。アノマリーは過去の傾向の記録であり、未来を保証する法則ではありません。
なぜ「4月強い・夏弱い」の橋が架かるのか(仮説・断定はしません)
この月別カレンダーで面白いのは、強い月と弱い月がランダムに散らばっていないことです。4月(+1.81%)を頂点に春が強く、8月(-0.65%)・9月(-0.81%)で底、そこから11月(+1.38%)・12月(+1.06%)へ持ち直す——季節がひとつの物語のように並んでいます。ここには日本市場の「年度」というリズムが効いていると読めます。4月の強さは新年度入りの節目そのものです。年金や機関投資家の新年度の資金配分、期初の予算に乗った買い、3月本決算をまたいだ持ち高の組み直しが4月に集中する——実際、勝率も60%と1年で最も高い部類に入ります。一方8〜9月の弱さは、材料が薄くなる「夏枯れ」に加え、海外勢の夏休みで薄商いになり、下げが出たときに買い手が少なく値が滑りやすい、という時期の性質と重なります。この夏の弱さは、当サイトで検証済みのSell in May——夏場の半年が冬場に劣後する——の谷とちょうど同じ場所です。そして11〜12月の持ち直しは、機関投資家の年末に向けたポジション調整(ウィンドウ・ドレッシング)や、新年相場を先取りする買いが背景にあるとされます。春の資金流入、夏の商い枯れ、年末の持ち高調整——性格の違う3つの需給が年度カレンダーに沿って前後するから、月別リターンがなだらかな山と谷を描く、と整理できます。もっとも、これはデータの並びに合う筋書きの一つであって、因果を証明したものではありません。「4月だから上がる」のではなく、4月に集まりやすい資金の動きが、たまたま4月というマスに映っている、という順序の可能性は消えません。
この「1〜2%」を売買ルールに使うのは危うい(数字の読み方)
4月+1.81%・8月-0.65%という数字を見て「4月に買って8月に売る」と機械的に組むのは危険です。まず差の絶対値が小さい。最強の4月と最弱の9月でも月あたり約2.6ポイントの開きで、これは日経平均が1日で軽く動く幅に過ぎません。売買コストや税を差し引けば、季節でタイミングを計る優位はほとんど残らない、と考えるのが自然です。次に勝率が語る「外れる頻度」です。最も弱い9月ですら勝率41%——裏返せば10年のうち約4年は9月がプラスで終わる。「夏は下がる」を額面どおり受け取ると、上げた4年を取りこぼすばらつきの大きさを、この一語が抱えています。さらに標本の薄さ。41年といっても各月の観測は年に一度、たった41個です。4月の+1.81%は、平均を大きく押し上げた強い年が何回か効いた結果かもしれず(中央値+1.36%は平均より低いので、上振れの年がやや効いている読み方もできます)、どの年も一様に+1.81%上がるわけではありません。月別アノマリーは「なぜその月に癖が出るか」の説明には使えても、「毎年この月で張れば勝てる」という機械的トレードの土台にはならない——これがこの1本の持ち帰りです。数字は平均の話であって、あなたが張る「その1年の4月」の話ではありません。事実、直近15年ではかつて最弱だった9月が+0.8%とプラスに転じており、月の順位そのものが時代で入れ替わることも、この検証は示しています。
同じ月別集計を、自分の関心のある指数で再現する
この記事の価値は「日経の4月が強い」という答えより、どんな指数にも当てられる手順にあります。TOPIX、マザーズ、あるいは米国のS&P500——気になる指数の「◯月は強い/弱い」を、次の型でそのまま自分で検証できます。
- ①月次リターンを暦月で機械的に区切る——「4月」なら「3月末終値→4月末終値」のように、誰がやっても同じ数字になる定義に固定する。ここが曖昧だと集計は自分の都合よく動きます。
- ②平均・中央値・勝率を必ず三つ並べる——この記事が4月を+1.81%(平均)/+1.36%(中央値)/60%(勝率)と三点で示したように、平均だけでは「一部の年が効いているのか、全体が強いのか」が見分けられません。中央値が平均より低ければ、少数の当たり年が押し上げている合図です。
- ③直近だけでも再集計して「まだ効くか」を確かめる——この記事が直近15年で9月の弱さが消えたのを見つけたように、古い年に引っ張られた順位は現在では別物のことがあります。長期と直近を並べて初めて、季節性が「今も生きているか」が見えます。
この3点が揃って初めて、月別アノマリーは「なんとなくそう聞く」から「自分で確かめた数字」に変わります。曜日・月末の日次アノマリーや干支別の年間リターンも、時間軸を変えただけで、まったく同じ型で分解した姉妹記事です。1本の結論を覚えるより、この型を持ち帰るほうが、カレンダーのどの粒度でも役に立ちます。
基準日:2026年6月11日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。Sell in Mayの検証もあわせてご覧ください。
出典:株価データはYahoo Finance(日経225 ^N225・月次・調整後終値)