アノマリー検証2026-06-11 公開
曜日・月末・連休前——日次アノマリーは本当に効くのか
「月曜は下がりやすい」「月末月初は上がる」「連休前は買われる」——日々の細かいアノマリーは数多く語られます。日経225の60年・約15,100営業日の日次データで、これらをまとめて検証しました。
① 曜日効果——「月曜安」は確認できず
| 曜日 | 平均リターン | 勝率 |
|---|---|---|
| 月曜 | +0.006% | 53% |
| 火曜 | +0.030% | 49% |
| 水曜 | +0.084% | 54% |
| 木曜 | +0.042% | 52% |
| 金曜 | +0.009% | 52% |

米国市場で有名な「月曜効果(週明けは下がりやすい)」は、日経225では確認できませんでした。月曜の平均はわずかにプラス。強いて言えば水曜が最も高い(+0.084%)ものの、差はごくわずかで、曜日で売買を変える根拠にはなりません。
② 月内効果——月末月初はやや堅調
| 期間 | 平均リターン | 勝率 |
|---|---|---|
| 月末2日+月初3日 | +0.072% | 53% |
| 月の中盤 | +0.022% | 52% |
「月末から月初にかけて買われやすい(turn-of-month効果)」は、データでもうっすら確認できました。月末月初の日次リターンは中盤の約3倍。機関投資家の月末リバランスや配当再投資などが背景とされます。ただし差は1日あたり0.05%程度で、過大評価は禁物です。
③ 連休前効果——日経225では無い
米国では「祝日・連休の前は上がりやすい」とされますが、日経225で休前日のリターンを集計すると+0.016%と、通常日(+0.040%)よりむしろ低く、連休前効果は確認できませんでした。
④ 大発会・大納会——年初は強く、年末最終日は弱い
| 特異日 | 平均リターン | 勝率 |
|---|---|---|
| 大発会(年初の初日) | +0.27% | 60% |
| 大納会(年末の最終日) | -0.06% | 35% |
面白いのが年末年始の特異日です。大発会(その年の最初の取引日)は平均+0.27%・勝率60%と明確に強く、逆に大納会(最終日)は勝率35%と弱い。「ご祝儀相場」と「年末の手じまい売り」が、61年分のデータにもうっすら表れています。ただしこれも1日の話で、年間の成績を左右するものではありません。
結論
日次のアノマリーは、「月末月初はやや堅調」「大発会は強い」程度は確認できたものの、いずれも差はごくわずかでした。有名な「月曜安」「連休前高」は日経225では確認できません。日次アノマリーは知識として面白いものの、売買コストを考えればそれだけで利益を出すのは困難です。アノマリーは過去の傾向の記録であって、未来を保証するものではありません。
「曜日は効かないのに、年始年末は効く」の違いはなぜ生まれるのか(仮説・断定はしません)
4つの検証を並べて一番面白いのは、効いた効果と効かなかった効果がきれいに二手に分かれていることです。曜日効果と連休前効果は消え、月末月初と大発会・大納会はうっすら残った。この差は「その日に、決まった性格の資金が動く理由があるか」で説明できると読めます。曜日には、そもそも月曜だから・金曜だからという理由でお金を動かす主体がいません。米国の月曜安は週末のニュースが週明けに出やすいといった事情が背景ですが、日本市場は米国の値動きを翌営業日にまとめて織り込む構造なので、曜日固有の癖が均されてしまう——だから消えた、と整理できます。対して月末月初には、動く理由を持つ主体がいます。機関投資家の月末リバランス、投信の設定・解約に伴う売買、配当や分配金の再投資が、カレンダーの決まった位置に集中する。「turn-of-month効果」が中盤の約3倍という差になって残るのは、この定例の資金フローがあるからだと読めます。大発会・大納会も同じ筋です。年初は新年の資金配分やご祝儀の買いが一斉に入り(勝率60%)、年末最終日は利益確定や手じまいの売りが出やすい(勝率35%)——年に一度の節目には、行動がそろう理由がある。「決まった資金が決まった日に動く理由」があるかどうかが、効くアノマリーと消えるアノマリーを分ける境目だ、と整理できます。もっとも、これはデータの並びに合う筋書きの一つであって、因果を証明したものではありません。理由を後付けで見つけるのはたやすく、月曜安にそれらしい物語を貼ることもできてしまう点には注意が要ります。
この「0.05%の差」を売買に使うのは危うい(数字の読み方)
月末月初の+0.072%を見て「毎月末に買う」と機械的に組むのは危険です。理由は単純で、効果より売買コストの方が大きいから。月末月初が中盤の約3倍と言っても、差の実額は1日あたり0.05%程度です。往復の手数料やスプレッド、税を差し引けば、この程度の優位はあっさり食い潰されます。日次アノマリーが「知識としては面白いが利益にはしにくい」のは、効果が実在するかどうか以前に、桁が小さすぎるからです。大発会の+0.27%・勝率60%も同じ罠を含みます。勝率60%は魅力的に見えますが、裏返せば10年のうち4年は大発会が下げて終わる。年に一度しか来ないイベントは、61年かけても61個しか標本が貯まらず、「4割は外す」ばらつきを平均+0.27%という一語が覆い隠しています。しかもこれは1日だけの話で、その年の年間成績とは何の関係もありません。日次アノマリーは「市場の癖の記録」としては価値があっても、「毎回これで張れば勝てる」という機械的トレードの根拠にはならない——これがこの1本の持ち帰りです。差の大きさ(実額)と、外れる頻度(勝率の裏側)と、コストの三つを並べて初めて、アノマリーは「使えるか/使えないか」を判断できます。
同じ日次検証を、自分の気になる癖で再現する
この記事の価値は「月曜は効かない」という答えより、どんな日次アノマリーにも当てられる手順にあります。「ミニSQの日は荒れる」「祝日の翌日は弱い」——巷で聞く日単位の癖を、次の型でそのまま自分で検証できます。
- ①「その日」を機械的に定義する——「月末月初」なら「月末2営業日+月初3営業日」のように、誰がやっても同じ日が選ばれる規則に落とす。曖昧なままだと、都合のいい日だけを拾ってしまいます。
- ②必ず「普段の日」と並べる——この記事が休前日(+0.016%)を通常日(+0.040%)と並べて「連休前効果は無い」と結論したように、単独の数字には意味がありません。何と比べて高い/低いのかを置いて初めて、効果の有無が言えます。
- ③差の「実額」とコストを突き合わせる——平均の差が出ても、それが売買コストを上回らなければ使えません。0.05%の効果に0.1%のコストがかかるなら、その癖は「知識」であって「戦略」ではない、と冷静に切り分けます。
この3点が揃って初めて、日次アノマリーは「なんとなくそう聞く」から「自分で確かめた数字」に変わります。時間軸を月に広げれば月別の季節性、年に広げれば干支別の年間リターンと、同じ型が使えます。1本の結論を覚えるより、この型を持ち帰るほうが、どの粒度のカレンダーでも役に立ちます。
基準日:2026年6月11日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー検証の一覧もご覧ください。
出典:株価データはYahoo Finance(日経225 ^N225・日次・調整後終値)