アノマリー検証2026-06-14 公開

満月の頃、株は本当に弱いのか——月の満ち欠け×日経平均を61年検証

「満月の夜は株が動く」「新月の後に相場が反転する」——月と株価を結びつける話は昔からありました。海外では lunar effect(満月期に株のリターンが落ちる)という研究も存在します。本当にそういう傾向があるのか、日経225の61年分・15,103営業日のデータで月の満ち欠け(月齢)ごとに集計してみました。

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検証方法:月齢をライブラリなしで計算する

月の満ち欠けを表す「月齢」は、天文ライブラリを使わずに近似式で求められます。基準となる新月(2000年1月6日)からの経過日数を、朔望月(29.530588853日)で割った余りを月齢として定義します。月齢0が新月・0.5が満月に対応します。

この月齢を0〜1の範囲で8等分し、それぞれの区間に属する営業日の日次リターン(終値の前日比)を集計。日次平均リターンを年率換算(×252)して比較しました。

結果:新月が最強、満月直前(十三夜)が最弱

月相(月齢区分)年率換算リターン日次平均
新月(月齢 0〜1/8)+22.2%+0.0888%
三日月(月齢 1/8〜2/8)+8.4%+0.0335%
上弦(月齢 2/8〜3/8)+7.6%+0.0303%
十三夜・満月直前(月齢 3/8〜4/8)−5.0%−0.0200%
満月(月齢 4/8〜5/8)+4.2%+0.0168%
居待月・満月直後(月齢 5/8〜6/8)+19.7%+0.0789%
下弦(月齢 6/8〜7/8)+3.3%+0.0132%
有明月(月齢 7/8〜1)+8.5%+0.0338%
日経225日次1965-2026を月齢8区分・年率換算。新月が最強(+22.2%)・十三夜が最弱(-5.0%)。居待月(満月直後)は+19.7%と高く、単純な満月ボトムではない。
日経225日次1965-2026を月齢8区分・年率換算。新月が最強(+22.2%)、十三夜が最弱(−5.0%)。ただし居待月(満月直後)は+19.7%と高く、単純な「満月が底」とはならない。

考察:新月 vs 満月——前後半とも同じ方向

新月期(月齢±0.0625、おおよそ新月前後3.7日)と満月期(同定義の満月前後3.7日)を直接比較すると:

この方向は61年を前後半に割っても一貫しています。

前半・後半ともに「新月 > 満月」の方向は変わりません。これは単純なデータの偶然ではなく、ある程度の頑健性を示唆します。方向は海外の lunar effect(Yuan, Zheng & Zhu 2006 ほか)とも一致します。

ただし——8区分の並びを見ると、満月直後の居待月は+19.7%と高く、単純な「満月で底打ち・その後上昇」という単調な形にはなっていません。最弱は満月そのものでなく満月直前の十三夜(−5.0%)です。月相と相場の関係は、あっても単純ではないということです。

限界:統計的有意性は弱い

ここが最も重要な点です。新月期と満月期の差(+0.072%/日)をt検定すると、t値は約1.67、p値は約0.1です。一般的な有意水準(p<0.05)には届きません。「偶然の範囲である可能性を否定できない」というのが正直なところです。

そのほかの限界も整理します。

結論:「面白い傾向」どまり

61年・15,103日の検証で「新月期は日次+0.0888%・満月直前の十三夜は-0.0200%」という差は観察されました。前後半ともに方向が一貫しており、海外研究の lunar effect とも方向が一致します。

ただし、差のt≈1.67で統計的有意性は弱く(p≈0.1)、偶然の範囲を否定できません。月相が株価を動かす因果の理屈も不明です。「満月が近いから売ろう」という判断の根拠にはできません。これは「過去データにそういう傾きがあった」という記録であり、将来を約束するものではありません。

株相場と宇宙の関係——引き続き「面白い傾向として記録に残す」のが正直な評価です。

基準日:2026年6月14日。データ期間 1965年1月5日〜2026年6月12日、n=15,103営業日。月齢は朔望計算による近似値(基準:2000年1月6日の新月、朔望月29.530588853日)。差のt≈1.67(p≈0.1)で統計的有意性は弱い。本記事は情報提供を目的としており、投資助言でも将来の値動きの予測でもありません。アノマリー検証の一覧もご覧ください。

出典:株価データはYahoo Finance(日経225 ^N225)。学術参考:Yuan, Zheng & Zhu "Are Investors Moonstruck?" Journal of Empirical Finance, 2006

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