アノマリー検証2026-06-12 公開
ゴールデンウィーク明けの株価は弱いのか——GW前後の日経平均を40年検証
「GW明けの相場は弱い」「連休前は手仕舞いで下がる」——ゴールデンウィークにまつわる相場の通説を、日経225の40年分の日次データで検証しました。GW前の5営業日、GW明けの初日、明けてからの5営業日に分けて見ていきます。
検証方法
- 対象:日経225の日次終値(1986〜2025年、40年)
- GW前5営業日=4月29日(昭和の日)より前の最後の営業日までの5営業日の累積リターン
- GW明け初日=5月6日以降の最初の営業日の前日比リターン
- GW明け5営業日=明け初日からの5営業日の累積リターン
- 比較対象:同期間の任意の5営業日リターンの平均(+0.12%・勝率54%)
結果:明け「初日」は戻る、その後の1週間が弱い
| 区間 | 平均 | 中央値 | 勝率 |
|---|---|---|---|
| GW前5営業日 | +0.29% | +0.10% | 52% |
| GW明け初日 | +0.34% | +0.24% | 55% |
| GW明け5営業日 | -0.34% | -0.57% | 40% |
| 参考:任意の5営業日 | +0.12% | — | 54% |

意外なことに、「連休前の手仕舞い売り」は確認できませんでした(GW前5営業日は+0.29%とむしろ平均よりやや強い)。GW明けの初日も平均+0.34%・勝率55%と「休み明けの戻り」が出やすい結果です。
弱いのはその後でした。明け初日から5営業日の累積は平均-0.34%・中央値-0.57%・勝率40%。任意の5営業日(+0.12%・勝率54%)と比べてはっきり見劣りします。
「セルインメイ」の入り口と整合する
5月上旬〜中旬にかけてのこの弱さは、当サイトで検証済みのセルインメイ(Sell in May)——長期では夏場の半年が冬場に劣る——の入り口とちょうど重なります。「GW明けに買い直したら下がった」という体感は、40年の記録とも整合的でした。
結論
GWアノマリーの実態は、(1)連休前の弱さは確認できない、(2)明け初日はむしろ戻りやすい、(3)弱いのは明けてからの1週間、の3点です。いずれも過去の傾向であり、年ごとのばらつきは大きく(n=40)、将来も同じになる保証はありません。
「初日は戻るのに、その後1週間が弱い」の非対称はなぜ起きるのか(仮説・断定はしません)
この検証で一番面白いのは、明け初日(平均+0.34%・勝率55%)と明け5営業日(平均-0.34%・勝率40%)で符号がきれいに反転している点です。同じ「休み明け」なのに、最初の1日と続く1週間で向きが逆になる。ここには連休を挟んだ需給の食い違いが効いていると読めます。初日の戻りは、連休中に海外市場が動いた分を寄り付きで一度に織り込む調整——休場中に溜まった売買が初日にまとめて出るため、行って来いの「来い」の側が最初に出やすい、という見方ができます。一方でその後の1週間の弱さは、5月上旬〜中旬という時期そのものの性質と重なります。3月本決算企業の決算発表がGW前後で一巡し、good news・bad newsが出尽くして材料が薄くなる。加えて、この区間は当サイトで検証済みのセルインメイ——夏場の半年が冬場に劣後する——の入り口にあたります。初日の戻りは連休をまたいだ需給の一時的な調整、その後の弱さは「決算出尽くし+夏場劣後の入口」という季節性。性格の違う2つの力が前後して働くから、非対称が生まれる、と整理できます。もっとも、これはデータの並びに合う筋書きの一つであって、因果を証明したものではありません。「連休前の手仕舞い売り」という通説が確認できなかった(GW前5営業日は+0.29%とむしろ平均よりやや強い)のも、この見方と整合的です。売りが先に出るのは連休「前」ではなく、決算が出尽くして材料が薄くなる連休「明けの数日後」——通説は下がるタイミングを1週間ほど手前に取り違えていた、と読めます。
この数字を「毎年必ず下がる」と読むのは誤り(最悪ケースの読み方)
-0.34%・勝率40%を見て「GW明けは売り」と機械的に組むのは危険です。まず勝率40%は「6割で負ける」ではなく「4割は勝つ」でもあります。10年のうち4年は明け5営業日がプラスで終わる、というばらつきの大きさをこの一語が抱えています。平均-0.34%も、大きく下げた年が全体を引き下げているだけかもしれず(中央値-0.57%は平均より下なので下振れの年がやや効いている読み方もできます)、どの年も一様に-0.34%ずつ下がるわけではありません。n=40という標本の小ささも忘れてはいけません。年に一度しか観測できないイベントは、40年かけても40個しかサンプルが貯まらない。同じ「40年」でも日次の任意区間なら1万件近い標本が取れるのと比べ、季節アノマリーは統計的にきわめて心もとない土台の上に立っています。アノマリーは「傾向の説明」には使えても、「毎年これで張れば勝てる」という機械的トレードの根拠にはならない——これがこの1本の最大の持ち帰りです。数字は平均の話であって、あなたが張る「その1年」の話ではありません。さらに、仮に「明け5営業日を空売り」と決めても、その手前の明け初日は平均+0.34%・勝率55%と逆向きに戻りやすい。入るタイミングを1日ずらすだけで期待値の符号が変わるほど、この区間は日単位で性格が入れ替わります。区間の切り方に結論が過敏に反応するアノマリーを、機械的な売買ルールの土台に据えるのは筋が悪い、と言えます。
同じ検証を、他の季節アノマリーで自分で再現する
この記事の価値は「GWの答え」そのものより、どんな季節アノマリーにも当てられる手順にあります。配当権利落ち、セルインメイ、月末月初——巷の「◯月は弱い/強い」を、次の型でそのまま自分で検証できます。
- ①区間を言葉で厳密に定義する——「GW明け」なら「5月6日以降の最初の営業日から5営業日」のように、誰がやっても同じ日付になるまで詰める。ここが曖昧だと数字は自分の都合のいいように動きます。
- ②必ず「比較対象(ベースライン)」と並べる——この記事が明け5営業日の-0.34%を任意の5営業日+0.12%と並べたように、平均リターンは「何と比べて弱いのか」を置いて初めて意味を持ちます。単独の-0.34%には情報がありません。
- ③平均だけでなく中央値と勝率を必ず併読する——平均は極端な1年に引っ張られます。中央値(-0.57%)と勝率(40%)を並べて初めて、「一部の年が効いているのか、全体が弱いのか」が見分けられます。
この3点が揃って初めて、季節アノマリーは「なんとなくそう聞く」から「自分で確かめた数字」に変わります。配当権利落ちやFOMC・日銀会合翌日も、まったく同じ手順で分解した姉妹記事です。1本の結論を覚えるより、この型を持ち帰るほうが、カレンダーのどの月でも役に立ちます。
基準日:2026年6月12日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。数字の読み方もあわせてご覧ください。
出典:株価データはYahoo Finance(日経225 ^N225・日次・調整後終値)