相関×勝ち筋検証2026-06-19 公開 ・ 2026-06-27 改訂

鉱工業生産と相関が高い株は勝てたのか?景気敏感株8銘柄を20年検証

「景気と連動する景気敏感株を持てば、市場に勝てる」——よく聞く連想です。製造業の生産活動を映す鉱工業生産指数(経産省)と景気敏感株8銘柄の連動は確かに本物(相関0.38〜0.44)。では鉱工業生産と相関が高い株を買っていたら、市場平均に勝てたのか。20年で検証すると、相関も市場超過もあった本命(コマツ・三菱電機・ニデック)がある一方で、相関最強のファナックは市場超過マイナスという罠が現れました。さらに鉱工業生産が上向きか下向きかで局面を分けても市場超えの差はほぼつきませんでした(47%≒48%)。相関・保有した場合の成績・局面・罠を順に見ます。

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このページでわかること/わからないこと
わかることわからないこと
過去に市場平均を上回った景気敏感株今後上がる銘柄
鉱工業生産と相関が高かった銘柄現在買うべき銘柄
勝てた局面・弱かった局面個別の売買タイミング
相関だけで選ぶ罠(ファナックが市場超過マイナスだった実証)空売りを勧める銘柄
先に結論(過去検証)
項目結果
検証テーマ鉱工業生産指数と相関が高い景気敏感株8銘柄は、買っていたら市場平均に勝てたか
相関も市場超過もあり(検証上の本命)コマツ(+7.3%)・三菱電機(+5.1%)・ニデック(+0.6%)
相関は高いが市場超過は弱い(罠ゾーン)ファナック(−1.5%)・ヤマハ発動機(−2.0%)
説明しにくいデンソー(−1.7%)・旭化成(−3.0%)・東レ(−5.0%)
市場超過が出やすかった局面上向き47%(34/72)・下向き48%(46/96)——ほぼ差なし
注意点全8社が2008年に▲38〜64%の一斉下落(同じ景気サイクルへの隠れた集中)
📌 今日の持ち帰り
「景気と連動する」ことと「市場平均に勝つ」ことは別。本命はコマツ・三菱電機・ニデックですが平均超過は小さく、相関が最も高いファナックはむしろ市場平均に届きませんでした。景気の方向で買い分けても差はほぼ出ませんでした。
まずは表の〈判定〉〈平均超過〉〈最悪年〉の3つだけ見ればOK。用語は用語ミニ辞書へ。「勝てた」=市場平均を上回った意味で、儲かったとは限りません。

① 鉱工業生産相関上位8銘柄を買っていたら、市場平均に勝てたのか

結論から見ます。鉱工業生産指数(前年比)と相関が高い景気敏感株8銘柄を、毎年1月に等金額で買って1年保有した場合(2005〜2025年・21年)の成績です。比較する「市場平均」は、当サイトの検証対象199社を等金額で保有した平均で、TOPIXや日経平均ではありません。平均超過(各年の株リターン−市場平均の平均)がプラスかどうかで判定します。

銘柄鉱工業生産
との相関
市場平均に
勝った年
市場との差
(年・平均)
いちばん下げた年判定
コマツ(建機)+0.41111/21+7.3%2008年 ▲62%相関も市場超過もあり
三菱電機(重電/FA)+0.41712/21+5.1%2008年 ▲56%相関も市場超過もあり
ニデック(モーター)+0.41610/21+0.6%2008年 ▲38%相関も市場超過もあり
デンソー(自動車部品)+0.39910/21−1.7%2008年 ▲56%説明しにくい
ファナック(FA/ロボット)+0.43911/21−1.5%2008年 ▲41%相関は高いが市場超過は弱い(罠)
ヤマハ発動機(二輪/船外機)+0.42510/21−2.0%2008年 ▲64%相関は高いが市場超過は弱い(罠)
旭化成(素材)+0.39710/21−3.0%2008年 ▲41%説明しにくい
東レ(素材)+0.3846/21−5.0%2008年 ▲44%説明しにくい

「景気連動株を持てば市場に勝てる」は、成立しませんでした。相関が最強のファナック(+0.439)は市場超え11/21・平均超過−1.5%と市場平均をわずかに下回り、ヤマハ発動機(+0.425)も−2.0%。一方、コマツ(+0.411)・三菱電機(+0.417)・ニデック(+0.416)は相関0.41前後と同水準でありながら市場超過がプラスで、同じ「鉱工業生産と連動する銘柄群」の中でも結果に差が出ました。相関の数字だけでは本命と罠を見分けられませんでした。

② なぜこの8銘柄なのか——鉱工業生産指数との相関ランキング

「鉱工業生産と相関が高い景気敏感株」としてこの8銘柄を取り上げた根拠を示します。鉱工業生産指数前年比と株価前年比どうしの相関(全期間・window=full)で並べると、こうなります。

銘柄鉱工業生産との相関事業の性格
ファナック(6954)+0.439FA装置・ロボット
ヤマハ発動機(7272)+0.425二輪車・船外機
三菱電機(6503)+0.417重電・FA機器
ニデック(6594)+0.416精密モーター
コマツ(6301)+0.411建設機械
デンソー(6902)+0.399自動車部品
旭化成(3407)+0.397素材(化学・繊維)
東レ(3402)+0.384素材(化学・繊維)
鉱工業生産指数と景気敏感8銘柄の相関(前年比・全期間)。8社とも0.38〜0.44とほぼ横並びで、相関の数字だけでは本命と罠を見分けられない。実際、相関最強のファナック(+0.439)は市場超過マイナスの罠、一方コマツ・三菱電機・ニデックが本命だった。相関は買いサインではなく連動銘柄を絞る入口。
鉱工業生産指数と景気敏感8銘柄の相関(前年比・全期間)。8社とも0.38〜0.44とほぼ横並びで、相関の数字だけでは本命と罠を見分けられない。実際、相関最強のファナック(+0.439)は市場超過マイナスの罠、一方コマツ・三菱電機・ニデックが本命だった。相関は買いサインではなく連動銘柄を絞る入口。

鉱工業生産指数は全製造業の生産活動の加重平均で、製造現場の稼働が高まるほど設備投資・部品・材料の需要が拡大します。製造現場に設備(FA装置・建機)や部品(モーター・自動車部品)を納める銘柄が高相関に並ぶのは、生産活動の増減が直接の受注・売上に波及する構造と整合します。二輪や素材も製造業の設備稼働と需要が連動しやすい業種です。ただしこれはあくまで見立てで、為替・海外景気・個社受注状況も大きく影響します。

③ 相関 × 市場超過(4象限で見る)

鉱工業生産との相関の高さと「市場平均に勝てたか(平均超過がプラスか)」は別物でした。掛け合わせると、こう分かれます。

平均超過がプラス平均超過がゼロ以下
相関が高い(|r|≧0.4)検証上の本命:コマツ・三菱電機・ニデック罠ゾーン:ファナック・ヤマハ発動機
相関が低い別要因:(今回の8銘柄では該当なし)説明しにくい:デンソー・旭化成・東レ(相関は基準近辺だが市場超過マイナス)

今回8銘柄の相関はすべて0.38〜0.44と似通った範囲に収まっており、相関の数字だけでは本命と罠を区別できませんでした。コマツ・三菱電機は建機・重電/FAという設備財の側面が強く、景気上昇局面での受注積み上がりが市場超過につながりやすかった、と読むことができます(見立て)。一方ファナックは高精度FA/ロボット分野で競争力が高いにもかかわらず、市場超過が弱かったことは、鉱工業生産という指標の説明力の限界でもあります。

「罠ゾーン」は売り候補ではありません。相関だけで銘柄を選ぶと過去に市場平均を下回ることがあった、という注意ゾーンを指します(避ける・保有を点検する材料であって、空売りを勧めるものではありません)。

④ 市場超過が出やすかったのは、どんな局面か

同じ8銘柄でも、買った年の「鉱工業生産の局面」で結果が変わるかを確認しました。買付時点(その年の1月)で分かっている前年11月の鉱工業生産前年比が上向き(プラス)か下向き(マイナス)かで分けます(発表ラグを考慮し、1月買付時点で公表済みの直近データを使用)。

鉱工業生産の局面(買付時点で判明)市場平均を上回った割合
鉱工業生産が上向きの年に買う47%(34/72)
鉱工業生産が下向きの年に買う48%(46/96)

過去データでは、鉱工業生産が上向きでも下向きでも、市場平均を上回った割合はほぼ差がありませんでした(47%対48%)。機械受注×FA株では悪化・底ばい局面の方が市場超過が出やすかったのと対照的に、鉱工業生産では局面による差がほぼつきませんでした。景気の方向性だけでは市場超えに繋がらない——景気連動と市場超過は別物であることを、この数字が端的に示しています。

局面の判定には買付時点で公表済みの数値(前年11月の鉱工業生産前年比)のみを使用し、買付時点で未確定の値は使っていません(先読み防止)。割合は8銘柄×該当年の観測数ベース。

⑤ 相関が高くても市場に勝てなかったパターン(罠)

⑥ 今の環境を見るなら、どこを見るか

過去に市場超過が出やすかった条件に近いかは、次の3点で整理できます("今買える"という話ではなく、過去パターンとの近さを見る視点です)。

チェック項目見るポイント過去の傾向との関係
景気敏感株の種類設備財(建機・重電)か/素材・部品か過去はコマツ・三菱電機・ニデックが本命、ファナック・ヤマハ発が罠ゾーン——相関は似ていても結果に差が出た
鉱工業生産の局面前年比プラスか/マイナスか上向き47%・下向き48%——局面の差はほぼつかなかった。局面だけでは銘柄選別の材料になりにくい
景気サイクルへの集中景気敏感株ばかりに偏っている/分散偏っていると、急落局面(2008年型)で全社一斉に▲38〜64%が起きやすい
結局どう見る?
見ること意味
① 相関だけで選ばない相関が高くても市場平均に勝てない銘柄がある
② 平均超過を見る勝った年数より、平均して市場を上回ったかを見る
③ 最悪年を見る勝ち筋があっても、急落時に深く沈む銘柄がある
④ 今の環境が近いか見る過去に強かった局面と似ているかを確認する
⑤ 罠ゾーンを避ける高相関でも市場に勝てない銘柄に、飛びつかないための材料にする

8社の相関はほぼ横並び(0.38〜0.44)。連動最強のファナックはむしろ罠で、本命はコマツ・三菱電機・ニデックでした。使い方はシンプルです。相関で探す。平均超過で絞る。罠と最悪年で冷ます。この順番です。

まとめ:この指標の使い方

「景気と連動する景気敏感株は市場に勝てる」——連動としては確かで、コマツ・三菱電機・ニデックは相関0.41前後で本命に位置します。ただし景気連動と市場超過は別物でした。相関最強のファナック(0.439)が市場超過マイナスの罠となり、局面(上向き/下向き)で分けても47%対48%とほぼ差がつかなかった。現実的なのは、鉱工業生産で連動銘柄を見つけ→過去に市場平均を上回った銘柄(コマツ・三菱電機・ニデック)と相関は高いのに弱い銘柄(ファナック・ヤマハ発)を分け→景気敏感株への集中リスク(2008年型一斉下落)を確認する、銘柄を絞り込むフィルターとしての使い方です。機械受注との横断比較は機械受注×FA株(機械受注の横展開)でも確かめられます。銘柄横断の整理は過去検証スコア、指標横断は指標別「相関ランキング×勝てたか」

基準日:2026年6月27日(相関の基準日は2026年6月19日)。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。相関は仕分け装置であって、買いサインではありません。数字の読み方もあわせてご覧ください。

主要相関の検定:ファナック(6954)r=+0.439(古典的Pearson両側検定・前年比どうし、月次YoYの系列相関や多重検定は未調整のため目安)。相関≠因果・多重検定

出典:鉱工業生産指数=経済産業省(月次・指数)を前年比化。株価=Yahoo Finance(調整後終値・月次前年比)。「買っていたら」検証=2005〜2025年・毎年1月に等金額で買い1年保有・株価のみ(配当・売買手数料・税金は含まず)。「市場平均」=当サイト検証対象199社を等金額で保有した平均(TOPIX・日経平均ではありません)。相関は当サイト算出(前年比どうし・window=full)。局面判定は買付時点で公表済みの前年11月の鉱工業生産前年比に限定(先読み防止)。算出=scripts/build_regime.py。[一次データ:鉱工業生産・出荷・在庫指数↗]

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