統計検証2026-06-13 公開

電気代・ガス代と株価——光熱費の高騰は電力・ガス株に効くか

電気代もガス代も、ここ数年で大きく上がりました。ならば電気やガスを売る電力会社・ガス会社の株価も、料金の上昇とともに上がるはず——そう考えるのは自然です。ところが、ここには落とし穴があります。電気・ガス料金は「燃料費調整制度」で燃料の高騰を数ヶ月遅れて料金に乗せる仕組みのため、料金が上がる局面はむしろ燃料コストが先に膨らんだ後。だとすれば、料金上昇と株価は素朴な正相関にはなりにくいはずです。そこで電気代・都市ガス代の小売価格(消費者物価指数の品目別指数・全国・月次・約55年)のYoYを、電力3社・ガス2社の株価YoYと突き合わせ、「光熱費の高騰は電力・ガス株に効くのか」を検証しました。

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検証方法と、データの注意点

銘柄の選び方と、事前の仮説(判定前に固定)

電気代は大手電力会社の料金収入に直結し、都市ガス代は大手都市ガス会社の料金収入に直結します。そこで、電気代には東京電力HD・関西電力・中部電力の電力3社を、都市ガス代には東京ガス・大阪ガスのガス2社を割り当てました。地域は分かれますが、いずれも全国の料金指数を共通の物差しとして当てています。

判定する前に、こう予想しました——料金上昇は株価の単純な正相関にはなりにくい。理由は燃料費調整制度です。電気・ガス料金は、原油・LNG・石炭といった燃料の輸入価格の変動を、数ヶ月のタイムラグを置いて料金に転嫁します。つまり料金が上がる局面は、その前に燃料コストがすでに膨らんでいる局面でもあり、電力・ガス会社にとっては原価先行=利益が一時的に圧迫されやすい。料金上昇=即増益とはならないため、「電気代が上がると電力株も上がる」という素朴な連想は成り立ちにくい——これが判定前に固定した仮説です。なお燃料費調整には上限が設けられている時期もあり、燃料高をすべて転嫁できるとは限りません(制度の概要は一般的な説明にとどめ、断定は避けます)。

結果①:電気代 — 符号すらバラバラ、最大でも|r|0.23

銘柄r(COVID除外)ラグ
東京電力HD 9501+0.12同月
関西電力 9503-0.206ヶ月
中部電力 9502-0.23同月
電気代(CPI)と電力株の株価YoYの相関(COVID除外)。東京電力HD+0.12〜中部電力-0.23と符号すらバラバラで、当サイトの目安|r|≧0.4には遠く届かず。燃料費調整制度で原価が先行するため、料金上昇は素朴な正相関にならなかった。
電気代(CPI)と電力株の株価YoYの相関(COVID除外)。東京電力HD+0.12〜中部電力-0.23と符号すらバラバラで、当サイトの目安|r|≧0.4には遠く届かず。燃料費調整制度で原価が先行するため、料金上昇は素朴な正相関にならなかった。

電気代と電力株は、連動していません。東京電力HDはごく弱い正(COVID除外で+0.12、フル期間でも+0.14)、関西電力・中部電力はむしろ弱い逆相関(-0.20〜-0.23)と、同じ電力株なのに符号すらバラバラです。最も大きい中部電力でも|r|は0.23で、当サイトの基準(|r|≧0.40)の半分強。「電気代が上がる→電力株が上がる」という素朴な見立ては、過去データでは確認できませんでした。むしろ料金が上がる局面で株価がさえないのは、燃料高がコストとして先に効くという仮説と整合的です。

結果②:都市ガス代 — 東京ガス+0.24が最大、大阪ガスは弱い逆相関

銘柄r(COVID除外)ラグ
東京ガス 9531+0.205ヶ月
大阪ガス 9532-0.136ヶ月

都市ガス代も同じ結果でした。東京ガスは弱い正(COVID除外で+0.20、フル期間でも+0.24)ですが基準には届かず、大阪ガスは弱い逆相関(-0.13)。ここでも「ガス代が上がる→ガス株が上がる」とは言えず、2社で符号も食い違いました。

なぜ「光熱費が上がっても電力・ガス株は動かない」のか(考えられる理由)

結論:素朴な連想に反して、光熱費は電力・ガス株のシグナルにならなかった

電気代・都市ガス代の小売価格と、電力3社・ガス2社の株価は、過去データでは連動していませんでした。電気代は東京電力HD+0.14〜中部電力-0.23と符号すらバラバラ、都市ガス代も東京ガス+0.24が最大で、いずれも当サイトの基準(|r|≧0.40)に遠く届きません。これは事前の仮説どおりで、燃料費調整制度で原価が先行して効くため、料金上昇=株価上昇という素朴な連想は成り立たないと読めます。「光熱費が上がっているから電力株・ガス株が買い」という連想は、少なくとも過去データでは裏づけられない、というのが正直な結論です。当サイトの方針どおり、効かなかった結果もそのまま記録します。

基準日:2026年6月13日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。数字の読み方もあわせてご覧ください。

出典:電気代・都市ガス代は消費者物価指数(総務省/e-Stat 統計表0003427113・2020年基準 品目別価格指数・品目「電気代」「都市ガス代」・全国・月次)、株価はYahoo Finance(調整後終値)

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