相関×勝ち筋検証2026-06-15 公開 ・ 2026-06-27 改訂
建設出来高と相関が高い株は勝てたのか?建設・建材8銘柄を20年検証
再開発や建設ラッシュが話題になるたびに「建設株を持てば良い」という連想が広まります。では建設出来高(国交省 建設総合統計)と相関が高い建設・建材8銘柄を毎年同じルールで保有していたら、市場平均に勝てたのか。2005〜2025年の20年で検証すると、相関も高く市場超過もプラスの銘柄(検証上の本命)は一つもありませんでした。連動したのは建材(TOTO 0.561・太平洋セメント 0.454・長谷工 0.450)——ところが市場超過はマイナス(罠)。逆に市場平均を上回ったのは、建設出来高との連動が弱い大手ゼネコン(大成建設・清水建設・鹿島建設)でした。「建設が増える=建設株が上がる」は単純すぎた、というのが20年の実証です。相関・買っていた場合の成績・勝てた局面・罠を順に見ます。
| わかること | わからないこと |
|---|---|
| 過去に市場平均を上回った建設・建材株 | 今後上がる銘柄 |
| 建設出来高と相関が高かった銘柄 | 現在買うべき銘柄 |
| 勝てた局面・弱かった局面 | 個別の売買タイミング |
| 相関だけで選ぶ罠(本命ゼロだった実証) | 空売りを勧める銘柄 |
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 検証テーマ | 建設出来高と相関が高い建設・建材8銘柄は、買っていたら市場平均に勝てたか |
| 相関も市場超過もあり(検証上の本命) | 該当なし——本検証で最大の発見 |
| 相関は高いが市場超過は弱い(罠ゾーン) | TOTO(相関0.561・平均超過−3.2%)・太平洋セメント(0.454・−5.1%)・長谷工(0.450・−1.4%) |
| 相関は低いが市場超過あり(別要因) | 大成建設(相関0.381・+3.6%)・清水建設(0.349・+1.6%)・鹿島建設(0.181・+3.7%) |
| 説明しにくい | LIXIL(相関0.389・−9.1%)・大林組(0.159・−0.1%) |
| 市場超過が出やすかった局面 | 建設出来高が下向きの年(56%)> 上向きの年(42%)——逆張り的 |
| 注意点① | 連動した建材(TOTO・太平洋セメント・長谷工)が市場超過マイナスの罠——「連動=勝てる」は成立しなかった |
| 注意点② | ゼネコン(大成・清水・鹿島)の勝因は建設出来高でなく別要因(公共投資・都市再開発・採算改善)の可能性 |
| 注意点③ | 建材は急落年に深く沈む(太平洋セメント2007年▲58%・長谷工2007年▲61%) |
「建設が増える=建設株が上がる」という連想は、過去20年のデータでは精度が低かった。連動した建材が罠になり、連動しないゼネコンが市場を上回った。さらに建設が下向きの局面で保有した方が市場超えは高かった(逆張り的)——連動の強さと市場超過は別の軸だったというのが持ち帰りです。
まずは表の〈判定〉〈平均超過〉〈最悪年〉の3つだけ見ればOK。用語が不安な方は用語ミニ辞書へ。「勝てた」=市場平均を上回った意味で、儲かったとは限りません。
① 建設出来高と相関が高い8銘柄を買っていたら、市場平均に勝てたのか
結論から見ます。建設出来高(前年比)と相関が高い8銘柄を、毎年1月に等金額で買って1年保有した場合(2005〜2025年)の成績です。比較する「市場平均」は、当サイトの検証対象199社を等金額で保有した平均で、TOPIXや日経平均ではありません。平均超過(各年の株リターン−市場平均の平均)がプラスかどうかで判定します。
表を見る前に3つだけ確認します。まず〈判定〉で4分類のどこに入るかを見て、次に〈市場との差(平均)〉がプラスかマイナスかを確かめ、最後に〈いちばん下げた年〉で急落耐性を確認してください。
| 銘柄 | 建設出来高 との相関 | 市場平均に 勝った年 | 市場との差 (年・平均) | いちばん下げた年 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 鹿島建設(1812・ゼネコン) | +0.181 | 10/21 | +3.7% | 2007年 ▲38% | 別要因(公共投資・採算) |
| 大成建設(1801・ゼネコン) | +0.381 | 14/21 | +3.6% | 2008年 ▲34% | 別要因(公共投資・採算) |
| 清水建設(1803・ゼネコン) | +0.349 | 12/21 | +1.6% | 2020年 ▲33% | 別要因(公共投資・採算) |
| 大林組(1802・ゼネコン) | +0.159 | 10/21 | −0.1% | 2008年 ▲28% | 説明しにくい |
| 長谷工コーポレーション(1808・マンション) | +0.450 | 9/21 | −1.4% | 2007年 ▲61% | 相関は高いが市場超過は弱い(罠) |
| TOTO(5332・住宅設備) | +0.561 | 8/21 | −3.2% | 2008年 ▲42% | 相関は高いが市場超過は弱い(罠) |
| 太平洋セメント(5233・セメント) | +0.454 | 8/21 | −5.1% | 2007年 ▲58% | 相関は高いが市場超過は弱い(罠) |
| LIXIL(5938・住宅設備) | +0.389 | 8/21 | −9.1% | 2018年 ▲46% | 説明しにくい |
今回の検証で最大の発見は、相関も高く市場超過もプラスの銘柄(検証上の本命)がゼロだったことです。相関が最も高いTOTO(+0.561)ですら、21年のうち市場平均を超えたのは8年にとどまり、年間平均では市場を−3.2%下回りました(罠ゾーン)。逆に市場平均を上回った銘柄は鹿島建設(+3.7%)・大成建設(+3.6%)・清水建設(+1.6%)で、いずれも建設出来高との相関は基準(|r|≧0.4)を下回っています——勝因は建設出来高でなく、公共投資・都市再開発・採算改善という別要因だったと読めます(見立て)。
つまり:建設出来高と連動した建材・マンション株ほど市場超過が弱く、市場を上回ったのは連動が弱いゼネコンでした。「建設が増える=建設株で勝てる」という連想は、過去データでは成立しませんでした。
② なぜこの8銘柄なのか——建設出来高との相関ランキング
この8銘柄を選んだ根拠を示します。建設出来高(国交省 建設総合統計・前年比)と株価前年比の相関を全期間(前年比どうし・window=full)で算出し、高い順に並べると次の通りです。
| 銘柄 | 建設出来高との相関 (全期間・前年比どうし) | 事業の性格 |
|---|---|---|
| TOTO(5332) | +0.561 | 住宅設備(トイレ・浴室) |
| 太平洋セメント(5233) | +0.454 | セメント製造・建設素材 |
| 長谷工コーポレーション(1808) | +0.450 | マンション建設・施工 |
| LIXIL(5938) | +0.389 | 住宅設備(サッシ・ドア) |
| 大成建設(1801) | +0.381 | 総合建設(ゼネコン大手) |
| 清水建設(1803) | +0.349 | 総合建設(ゼネコン大手) |
| 鹿島建設(1812) | +0.181 | 総合建設(ゼネコン大手) |
| 大林組(1802) | +0.159 | 総合建設(ゼネコン大手) |

相関ランキングで明確なのは、連動したのは建材・マンション(TOTO・太平洋セメント・長谷工・LIXIL)で、大手ゼネコン(鹿島・大林)はほぼ反応しなかったという事実です。建設量が増えると住宅設備やセメントの出荷が増えるという直球の関係が建材に現れる一方で、ゼネコンは受注残・採算・海外売上など別の変数で動く構造が透けます。ところが①の表と照合すると、相関上位の建材が罠になり、相関下位のゼネコンが市場超過——連動の強さと勝ちの構造が完全に逆転しています。
つまり:建設出来高との相関ランキングは「どの銘柄と同じ波に乗りやすかったか」の仕分け装置として機能しましたが、「どの銘柄が市場平均に勝てるか」の答えにはなりませんでした。
③ 相関 × 市場超過(4象限で見る)
建設出来高との相関の高さと「市場平均に勝てたか(平均超過がプラスか)」を掛け合わせると、こう分かれます。
| 平均超過がプラス | 平均超過がゼロ以下 | |
|---|---|---|
| 相関が高い(|r|≧0.4) | 検証上の本命:該当なし | 罠ゾーン:TOTO・太平洋セメント・長谷工コーポレーション |
| 相関が低い | 別要因:大成建設・清水建設・鹿島建設 | 説明しにくい:LIXIL・大林組 |
「本命欄が空欄」——これがこの検証のもっとも誠実な結論です。「建設関連株=建設が増えれば上がる=市場平均に勝てる」という連想が、過去20年のデータでは成立しませんでした。相関が高い建材3銘柄(TOTO・太平洋セメント・長谷工)はいずれも罠ゾーンに入り、市場を上回った3銘柄(大成建設・清水建設・鹿島建設)はいずれも相関基準を下回っています。
大成建設(+3.6%)・鹿島建設(+3.7%)の市場超過の背景は、建設出来高の数字より、大型公共投資の政策的追い風・都市再開発の長期受注・近年の採算改善という、別の成長ドライバーが主因だったと読めます(見立て)。建材は建設量に素直に連動する半面、急落年(リーマン・コロナ等の景気急降下)で深く沈む構造が市場超過を侵食したと考えられます。
「罠ゾーン」は売り候補ではありません。相関だけで銘柄を選ぶと過去に市場平均を下回ることがあった、という注意ゾーンを指します(避ける・保有を点検する材料であって、空売りを勧めるものではありません)。
④ 市場超過が出やすかったのは、どんな局面か
同じ8銘柄でも、買った年の「建設出来高の局面」で結果が変わるかを確認しました。買付時点(その年の1月)で分かっている前年10月の建設出来高前年比(発表ラグを考慮)が上向き(増加局面)か下向き(減少局面)かで分けます。なお建設出来高のデータは2011年以降のため、局面判定は2012年以降の買付に限定しています。
| 建設出来高の局面(買付時点で判明) | 市場平均を上回った割合 |
|---|---|
| 建設出来高が上向きの年に保有 | 42%(30/72) |
| 建設出来高が下向きの年に保有 | 56%(18/32) |
注目すべきは、建設が増えていた局面より、むしろ前年に減っていた局面で保有した方が市場超えの割合が高かった(56%>42%)ことです。「建設が増えているタイミングで建設関連株を保有すれば勝ちやすい」という順張りの発想は、過去データでは根拠が薄い結果でした。この逆張り的な傾向は、建設出来高の谷底で既に回復期待が株価に織り込まれ、建設が実際に増え始めた局面ではその期待が剥落する構造と整合します(見立て)。
局面の判定には買付時点で公表済みの数値(前年10月の建設出来高前年比・発表ラグ先読み防止)のみを使用し、買付時点で未確定の値は使っていません。建設出来高データは2011年以降のため局面判定は2012年以降(2012〜2025年買付)の観測数ベース。割合は8銘柄×該当年の観測数ベース。算出=scripts/build_regime.py。
⑤ 相関が高くても市場に勝てなかったパターン(罠)
- 「建設が増えれば建設株全部が勝てる」という過剰な連想——建設出来高が増加局面にある年でも、8銘柄の市場超え割合は42%にとどまりました。「建設関連株」と一括りにする発想は、銘柄ごとの収益構造の違いを無視しており、過去データでは根拠が薄い連想です。
- 連動が高い建材ほど市場超過がマイナスだった(相関と勝ちの逆転)——相関上位3銘柄(TOTO・太平洋セメント・長谷工)はいずれも罠ゾーン。建設量に素直に連動する半面、景気急降下局面では深く沈む傾向が、長期の市場超過を下押しする構造になっています。「相関が高い=市場に勝てる」と読むと、この逆転に足をすくわれます。
- 別要因(公共投資・再開発)の勝ちを建設出来高の成果と誤解する——市場平均を上回った大成建設(+3.6%)・清水建設(+1.6%)・鹿島建設(+3.7%)は、建設出来高との相関がそれぞれ0.381・0.349・0.181と基準(0.4)を下回っています。これらの勝ちを「建設が増えたから勝てた」と読むのは根拠がなく、公共投資の政策効果・大型再開発の長期受注・採算改善という別の成長ドライバーが主因だった可能性があります。
- 建材は急落年に深く沈む——景気ショックや建設需要急減の局面では、建材・マンション株が特に大きく下落する傾向があります。太平洋セメントは2007年に▲58%、長谷工は2007年に▲61%を記録。相関高×急落深の組み合わせが、長期の市場超過を押し下げる構造になっています。上がる力より「沈みにくさ」も市場超過には重要です。
⑥ 今の環境を見るなら、どこを見るか
過去に市場超過が出やすかった条件に近いかは、次の3点で整理できます("今買える"という話ではなく、過去パターンとの近さを見る視点です)。
| チェック項目 | 見るポイント | 過去の傾向との関係 |
|---|---|---|
| 建設出来高の局面 | 前年比で上向き/下向き(発表ラグ考慮) | 下向き局面の方が市場超えの割合が高かった(56% vs 42%)——逆張り的。上向きで保有した方が勝ちやすいという根拠は過去データでは薄い |
| 相関か別要因か | 建設出来高依存の収益構造か/公共投資・採算・海外が主ドライバーか | 過去に市場を上回ったのは建設出来高相関が低いゼネコン。勝因は別要因(公共投資・再開発・採算改善)の可能性 |
| 急落耐性 | 景気ショック時に深く沈む銘柄か(建材・マンションは要注意) | 連動が高い建材・マンション株は急落年の下落が深く、長期市場超過を押し下げた |
本命ゼロは、何もわからなかったという意味ではありません。建設出来高だけで建設・建材株を選ぶ見方が弱かった、というのが今回の持ち帰りです。
| 持ち帰り | 内容 |
|---|---|
| この指標の限界 | 建設出来高だけでは、市場平均を上回る銘柄を説明しにくかった(雑な連想を切れる) |
| 勝者は別要因 | 大成建設・清水建設・鹿島建設の勝因は建設出来高でなく、公共投資・再開発・採算改善の可能性 |
| 高相関の罠 | 連動が最も強いTOTO(0.561)・太平洋セメント(0.454)でも、市場平均には勝てなかった |
| 逆張り局面 | 建設が下向きの局面で保有した方が市場超えは高かった(56%>42%) |
| 今見るなら | 建設出来高の数字そのものより、それを利益に変えられる企業か(受注残・採算・公共政策の恩恵・急落耐性)を見る |
| 見ること | 意味 |
|---|---|
| ① 相関だけで選ばない | 相関が高くても市場平均に勝てない銘柄がある |
| ② 平均超過を見る | 勝った年数より、平均して市場を上回ったかを見る |
| ③ 最悪年を見る | 勝ち筋があっても、急落時に深く沈む銘柄がある |
| ④ 今の環境が近いか見る | 過去に強かった局面と似ているかを確認する |
| ⑤ 罠ゾーンを避ける | 高相関でも市場に勝てない銘柄に、飛びつかないための材料にする |
建設出来高との連動が強い建材(TOTO等)はむしろ罠で、本命はゼロ。市場を上回ったのは相関が低いゼネコン(別要因)でした。使い方はシンプルです。相関で探す。平均超過で絞る。罠と最悪年で冷ます。この順番です。
まとめ:この指標の使い方
「建設が増える=建設株が上がる」——連動としてはTOTO(0.561)・太平洋セメント(0.454)・長谷工(0.450)に確かに存在しましたが、相関が高い=市場平均に勝てた、という構図は過去20年で成立しませんでした。本命はゼロ。建材・マンション株は罠ゾーン。市場を上回ったのは連動が弱いゼネコン(大成建設・清水建設・鹿島建設)で、勝因は建設出来高でなく別要因でした。さらに建設が下向きの局面で保有した方が市場超えは高く(56%>42%)、順張りの発想は根拠が薄い結果でした。現実的なのは、建設出来高で建設関連銘柄を仕分け→相関が高くても市場超過が弱い「罠」と、相関が低くても市場超過のある「別要因」を区別し→建設の局面(下向き・上向き)も逆張り的に確認する、フィルターとしての使い方です。詳しくは過去検証スコア、指標横断は指標別ランキングで確かめられます。
自分の保有株を見るなら
自分の保有株を点検するなら、次の3つを確認してください(「今買え」ではなく、いま持っている株の点検材料として)。
- 建設出来高とどれくらい連動しているか——相関が高くても市場平均に勝てるとは限らない(TOTOが罠になった実例)。相関は仕分け装置であって、買いサインではありません。
- 過去に市場平均を上回ったことがあるか——市場超過頻度と平均超過の両方を確認する。勝った年数が多くても、負けた年の下げが大きいと平均では負けます(長谷工:9/21年・平均超過−1.4%)。
- 最悪年にどれだけ沈んだか——太平洋セメント(2007年▲58%)・長谷工(2007年▲61%)のように、建設関連と言われる銘柄でも急落局面で深く沈むことがあります。保有比率と急落耐性はセットで確認してください。
基準日:2026年6月27日(相関の基準日は2026年6月15日)。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。数字の読み方もあわせてご覧ください。
相関は前年比どうし(全期間・window=full)で算出。n(サンプル数)が小さい銘柄の数値は目安として扱ってください。建設出来高の局面判定はデータの関係で2012年以降。相関≠因果・多重検定
出典:建設出来高=国土交通省 建設総合統計(出来高計・月次・2011年以降)を前年比化(建設総合統計↗)。株価=Yahoo Finance(月次・調整後終値・前年比)。「買っていたら」検証=2005〜2025年・毎年1月に等金額で買い1年保有・株価のみ(配当・売買手数料・税金は含まず)。「市場平均」=当サイト検証対象199社を等金額で保有した平均(TOPIXや日経平均ではありません)。相関は当サイト算出(前年比どうし)。局面判定は買付時点で公表済みの前年10月の建設出来高前年比に限定(発表ラグ・先読み防止)。建設出来高データは2011年以降のため局面判定は2012年以降の買付。算出=scripts/build_regime.py。
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