業界統計×個別株2026-06-15 公開
建設出来高が増えてもゼネコン株は動かない——効いたのは建材株(TOTO+0.56)だった
建設工事が実際に進んだ金額(建設出来高)に効くのは、本命のはずのゼネコンではなく建材株だった。TOTO+0.56・太平洋セメント+0.45に対し、スーパーゼネコンの鹿島・大林組は+0.2に届かない。受注残・採算・海外で動くゼネコンは、月次の国内出来高では動かない。
着工の次は「出来高」——実際の工事量で見るとどうか
同じ日に公開した建築着工の検証では、「店舗の着工」だけが約6ヶ月先行して建設・不動産株に効いた。着工はこれから建てる量(着手)の数字だ。では、実際に工事が進んだ金額=建設出来高で見ると、本命であるはずのゼネコン株は動くのだろうか。国土交通省「建設総合統計」の出来高(全国・月次)を、ゼネコン・建材・建機株と突き合わせた。
検証方法
- 統計:国土交通省「建設総合統計」より、建設工事の出来高(全国・月次・2011年4月〜2026年3月)。総合(公共+民間)に加え、公共・民間の内訳も使用。
- 株価:Yahoo Finance の月次・調整後終値。
- 変換:統計・株価とも前年同月比(%)。
- 相関:ピアソン相関、ラグ0〜6ヶ月走査。重なりは n=168。連動の目安は |r|≧0.4。コロナ期(2020-21)除外でも確認。
結果①:効くのは「建材」、効かないのは「ゼネコン」
建設出来高(総合)との相関を強い順に並べると、上位はTOTO・太平洋セメント・LIXILといった建材株。逆に、建設の主役であるはずの大手ゼネコン(鹿島・大林組)はほぼ反応しない。
| 銘柄(分類) | 相関 r |
|---|---|
| TOTO(5332・建材) | +0.56 |
| 太平洋セメント(5233・建材) | +0.45 |
| 長谷工コーポレーション(1808・マンション) | +0.45 |
| LIXIL(5938・建材) | +0.39 |
| 大成建設(1801・ゼネコン) | +0.38 |
| クボタ(6326・建機/鋳鉄管) | +0.38 |
| 清水建設(1803・ゼネコン) | +0.35 |
| 積水ハウス(1928・ハウス) | +0.29 |
| 大和ハウス工業(1925・ハウス) | +0.27 |
| 日立建機(6305・建機) | +0.19 |
| 鹿島(1812・ゼネコン) | +0.18 |
| 大林組(1802・ゼネコン) | +0.16 |
| コマツ(6301・建機) | +0.15 |

建材のTOTOが+0.56(同月)で頭一つ抜け、太平洋セメント・LIXILと続く。建設量が増えればトイレ・サッシ・セメントの出荷が増える——直球の関係だ。一方、スーパーゼネコン4社のうち鹿島・大林組は+0.2を切り、建機のコマツ・日立建機も効かない。
結果②:公共工事でも民間工事でも、結論は同じ
「公共工事はゼネコンの本丸だから、公共出来高なら効くのでは」とも思える。だが公共・民間に分けても、効くのはやはり建材で、ゼネコンは弱いままだった。
| 銘柄 | 公共 出来高 | 民間 出来高 |
|---|---|---|
| 太平洋セメント(建材) | +0.49 | +0.33 |
| TOTO(建材) | +0.47 | +0.49 |
| LIXIL(建材) | +0.41 | +0.30 |
| 長谷工(マンション) | +0.37 | +0.39 |
| 大成建設(ゼネコン) | +0.33 | +0.32 |
| 鹿島(ゼネコン) | +0.16 | +0.17 |
| コマツ(建機) | +0.13 | +0.13 |
公共工事に色濃く効くのはセメント(公共土木で大量に使う)。マンション主体の長谷工は民間でやや強い。だが大手ゼネコンと建機は、公共・民間どちらの出来高にも連動しなかった。
なぜ大手ゼネコンは「建設出来高」に動かないのか(仮説)
あくまで仮説だが、ゼネコンの株価と月次の出来高は、見ているものが違うと考えられる。
- 受注残(手持ち工事)で数年先まで仕事が決まっている。今月の出来高が増減しても、すでに積み上がった受注残のほうが業績の見通しを左右する。
- 株価は「量」より「採算(利益率)」で動く。資材高・労務費高で、出来高が増えても利益が出ない局面では株価は冴えない(近年がまさにそれ)。
- 海外売上・開発事業など国内工事以外の比重も大きい。
これに対し建材株は、国内の建設量に出荷数量がほぼ直結する。だから建設出来高に素直に連動する。建機(コマツ・日立建機)が効かないのは、中国・北米など世界の需要で動くことを別途確認している通りだ。
なお、ここで見たのは相関であって因果ではなく、ほとんどが同月一致(先行しない)。出来高は発表が約2ヶ月遅れる点にも注意したい。
着工の検証と合わせて:「建設関連株」は一括りにできない
着工の検証では「店舗の着工」だけが先行して効き、このページの出来高では「建材」が効いてゼネコンは効かない。同じ"建設の数字"でも、着工か出来高か、用途は何か、相手はゼネコンか建材かで、株との関係はまるで変わる。「建設関連株」とまとめて語るのが、いかに大雑把かがわかる。
まとめ
- 建設出来高(実需)に効くのは建材株(TOTO+0.56・太平洋セメント+0.45・LIXIL)。
- 大手ゼネコン(鹿島+0.18・大林+0.16)と建機(コマツ+0.15)は効かない。受注残・採算・海外で動くため。
- 公共・民間どちらの出来高でも結論は同じ(建材>ゼネコン)。
- ほぼ同月一致で先行はせず、相関≠因果。出来高は発表が約2ヶ月遅れる。
基準日:2026年6月15日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。数字の読み方もあわせてご覧ください。
出典:建設総合統計(国土交通省・出来高・全国・月次)。株価は Yahoo Finance(月次・調整後終値)。集計期間 2011年4月〜2026年3月(前年比 n=168)。