統計検証2026-06-12 公開
「猛暑でビール株」は気温でも熱中症搬送者数でも効かなかった——18年分で検証
「猛暑ならビール株・エアコン株」——夏の定番連想です。当サイトは以前、東京の月平均気温との連動を検証して「確認できず」と結論しました。ただ、こう反論できます。「気温そのものより、実際にどれだけの人が暑さで倒れたかの方が、需要の実態に近いのでは?」。そこで今回は、総務省消防庁が2008年から集計している熱中症による救急搬送人員(18年・延べ80ヶ月)で、同じ仮説をもう一度検証しました。
検証方法
- 対象:消防庁「熱中症による救急搬送状況」の全国月別搬送人員(2008〜2025年・調査は毎年5〜9月のみ・延べ80ヶ月)
- 各年のExcelデータ(日別×都道府県)を月次合計に集計し、前年同月比(YoY)に変換
- 飲料・空調・電力など「猛暑関連」とされる8銘柄の株価YoYと、同月の相関を計算(n=64〜74)
- 例:2024年7月の搬送者は43,195人(猛暑)、2010年8月は28,448人など、年による差は非常に大きい
結果:被害者数でも、やはり動かない
| 銘柄 | 相関 r(同月) | n |
|---|---|---|
| 伊藤園 2593 | +0.28 | 74 |
| キリンHD 2503 | -0.11 | 74 |
| ダイキン 6367 | -0.09 | 74 |
| 大塚HD(ポカリ)4578 | -0.07 | 64 |
| コカ・コーラBJH 2579 | -0.07 | 74 |
| アサヒGHD 2502 | -0.07 | 74 |
| サッポロHD 2501 | -0.05 | 74 |
| 東京電力HD 9501 | +0.03 | 74 |

結果は気温のときと同じ——むしろもっとはっきりしていました。ビール3社・ダイキン・東電・ポカリの大塚まで、軒並み|r|<0.11でほぼ無相関。「記録的な暑さで搬送者が倍増した夏」でも、これらの株価は特別な動きをしていません。
唯一プラス寄りだったのは伊藤園(+0.28)でした。お茶・麦茶という夏物比率の高い専業に近いほど効きやすい、という当サイトの他の検証(「専業ほど効く」)とも整合的ですが、それでも基準(0.40)には届かない弱さです。
なぜ「猛暑関連株」は猛暑で動かないのか
- 大手は夏物専業ではない——アサヒ・キリンの利益は海外・酒類全般・飲料全般。猛暑のビール増販は全社利益の数%の変動でしかない
- 猛暑は事前に織り込まれる——長期予報の段階で「夏物相場」は動き、実際の搬送者数が出る頃には材料済み
- 株価は金利・為替・全体地合いで動く——月次の株価変動の大半は個別の天候要因より大きな力で決まる
結論:夏の連想は「気温」でも「被害者数」でも確認できず
これで「猛暑でビール株・エアコン株」という連想は、気温(入力側)でも熱中症搬送者数(結果側)でも、過去データでは確認できないことになりました。二重に検証して二重に否定された連想は、監視リストから外してよい——というのが当サイトの結論です。夏の暑さで本当に動くものを探すなら、せいぜい夏物専業度の高い銘柄(伊藤園+0.28)に弱い傾向がある程度、と記録しておきます。
基準日:2026年6月12日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。数字の読み方もあわせてご覧ください。
出典:熱中症データは総務省消防庁「熱中症による救急搬送状況」(2008〜2025年・各年5〜9月)を当サイトで月次集計、株価はYahoo Finance(調整後終値)