過去連動あり2026-06-11 公開

求人が増えれば人材株は上がるのか——人材サービス5社を36年分のデータで測った

「景気がよくなって求人が増えれば、人材派遣・人材紹介の会社の株は上がる」——直感的にもっともらしいこの連想は、本当にデータで裏付けられるのか。厚生労働省の有効求人倍率と人材サービス株を1990年からの長期データで検証しました。

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検証方法

結果:専業は連動、しかし業界最大手リクルートは別物

銘柄全期間COVID除外事業の性格
パーソルHD 21810.560.61人材派遣の専業大手
JACリクルートメント 21240.460.46人材紹介の専業
エン・ジャパン 48490.420.46求人メディア・人材紹介
ディップ 23790.250.27求人メディア(バイトル)
リクルートHD 60980.14-0.12HRテック・販促のグローバル企業
求人が増えれば人材株は上がるのか——人材サービス5社を36年分のデータで測ったを表すグラフ
有効求人倍率と人材株の相関(コロナ除外)。専業ほど連動、最大手リクルートは別物。

n(サンプル数)はいずれも100〜278ヶ月で、長期にわたる頑健な検証です。専業のパーソル・JAC・エンはCOVID除外でも0.46〜0.61を維持し、求人市場の改善と株価が連動してきたことが確認できました。ラグはおおむね0〜2ヶ月で、ほぼ同時に動いています。

意外:業界最大手リクルートが連動しない理由

注目すべきは、人材業界の象徴であるリクルートHDが相関0.14(COVID除外では-0.12)と、ほとんど連動していないことです。これは「人材最大手なのだから求人統計で動くはず」という直感に反します。

理由は事業構造にあります。リクルートHDの収益は今や、求人検索エンジン「Indeed」を中心とする海外HRテック事業や販促メディア事業が主軸で、日本国内の有効求人倍率だけでは株価が説明できません。むしろ米国の労働市場やテック株の地合いに連動する場面が多い。「国内の人材会社」というラベルと、実際の収益ドライバーがずれている典型例です。

これは当サイトが機械受注の検証で見た「専業メーカー(オークマ等)は統計に連動するが、多角化した最大手(キーエンス)は連動しない」という構図とまったく同じです。統計に素直に連動するのは、その統計の世界だけで生きている専業企業——という法則が、人材セクターでも繰り返されました。

裏側から確認:完全失業率でも「逆相関」で同じ結論

労働市場の改善を逆の角度から見る指標が完全失業率です。求人が増えれば失業率は下がるので、「失業率が下がると人材株が上がる」=逆相関が出れば、有効求人倍率の結果が裏付けられます。同じ5社で完全失業率(前年同月比)を検証した結果:

銘柄全期間COVID除外
パーソルHD 2181-0.43-0.45
JACリクルートメント 2124-0.36-0.34
エン・ジャパン 4849-0.31-0.28
ディップ 2379-0.23-0.23
リクルートHD 60980.20-0.22

予想どおり、専業はきれいな逆相関(パーソル -0.45)。失業率が下がる=雇用が改善するとき、専業の人材株は上がってきた——有効求人倍率と完全失業率という表裏の指標で、同じ結論が確認できました。そしてここでもリクルートだけは連動していません。これは当サイトで初めての「逆相関あり」の事例です(逆相関も連動の一種として扱います)。

補足:新規求人倍率より有効求人倍率

同じ手法で「新規求人倍率」も検証しましたが、こちらはどの銘柄でも相関0.3未満と弱い結果でした。月々の振れが大きい新規求人より、ストックを反映する有効求人倍率の方が、人材株の業績実感に近いと考えられます。

結論

「求人が増えれば人材株」という連想は、パーソル・JAC・エン・ジャパンといった専業については過去データで裏付けられました。ただし業界最大手リクルートHDは別の論理で動くため、同じ「人材株」として一括りにするのは禁物です。専業企業では有効求人倍率との相関が比較的高く観察されました。これは過去データ上の特徴であり、特定銘柄の選別や売買を勧めるものではありません。

この記事の5銘柄、毎年1月に買っていたら?

有効求人倍率と連動するこの5銘柄を、毎年1月に買って1年保有(2005〜2025年)。全199社を等金額で持つ「市場平均」に勝てた年数です。

銘柄市場平均に勝った年
JACリクルートメント12/19年
ディップ9/21年
リクルートHD9/11年
パーソルHD7/18年
エン・ジャパン6/21年
パーソルHDを毎年1月に買って1年持った場合の成績(緑=プラスの年・赤=マイナスの年・青線=市場平均)
例:パーソルHDは市場平均(青線)を超えた年が21年中7年。緑=勝ち年・赤=負け年。

連動の強い・弱いで並べても、勝った年数はバラバラ。5銘柄の平均は約8.6/18年=市場と互角かそれ以下で、「連動が強いから買えば勝てる」は成り立ちませんでした。連動が効くのは“買い時”ではなく、持ち株がこの5銘柄のように同じ動きへ偏っていないかの点検(→全体の実証自分で試す)。

過去の記録であり将来を保証しません(投資助言ではありません)。

基準日:2026年6月11日。相関は因果関係を保証しません。本記事は統計データの検証結果を示すもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。数字の読み方もあわせてご覧ください。

出典:政府統計ダッシュボード(厚生労働省 一般職業紹介状況)/株価データはYahoo Finance(月次・調整後終値)

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