俗説の実測2026-06-13 公開
マクドナルドHD株は既存店売上に反応するか——41ヶ月の相関実測(先回りは支持されず)
株クラ定番の戦法に「月次の既存店売上を見て、決算の前に先回りする」があります。小売・外食は毎月の売上を公表するので、決算を待たずに業績の方向が分かる——という理屈。月次先回り通説の第2弾は、外食の王者日本マクドナルドHD(2702)です。同社が公式IR「IRセールスリポート」で毎月公表する既存店売上 前年比をn=41ヶ月分取得し、マクドナルドHD株(2702)といつものラグ手法で突き合わせました。
検証方法
- 日本マクドナルドHD公式IRの「IRセールスリポート」から、既存店売上 前年比を2023年1月〜2026年5月(n=41ヶ月)取得
- マクドナルドHD株(2702)の株価前年比と、同月・ラグ0〜6ヶ月で相関(月次が株を先行するか/株が月次を先行するか の両方向)
- データが2023年以降のみのためコロナ除外窓は全期間と同値。n=41は参考値
結果:同月ほぼゼロ・月次先行なし
| マクドナルド月次 × マクドナルドHD株(2702) | r | ラグ |
|---|---|---|
| 同月相関(lag0) | +0.012 | 同月 |
| 月次→株(lag1) | +0.171 | 月次が1ヶ月先行 |
| 月次→株(lag2) | +0.124 | 月次が2ヶ月先行 |
| 月次→株(lag3) | +0.141 | 月次が3ヶ月先行 |
| 月次→株(lag4) | +0.200 | 月次が4ヶ月先行 |
| 月次→株(lag5) | +0.183 | 月次が5ヶ月先行 |
| 月次→株(lag6・最良) | +0.272 | 月次が6ヶ月先行(最良) |
| 株→月次 最大(lag6) | −0.252 | 6ヶ月先行 |

最も重要な数字は同月相関 +0.012——ほぼゼロです。月次が株を先行するラグ別では、lag6(半年後)の+0.272が最大ですが、半年も先でしか立たない数字では実用的な先行関係とは言えません。さらにlag0〜lag5の値は+0.012〜+0.200の小幅にとどまり、安定した先行性は確認できませんでした。n=41は参考値水準(第1弾ユニクロn=96に対して短い系列)であることも踏まえると、月次先回り通説を支持する結果ではありません。
なぜ月次で先回りできないのか
マクドナルドHD株を動かすのは国内既存店売上だけではありません。原材料コスト(牛肉・ポテト・油)、為替、プロモーション費用、本社(米マクドナルド)のグローバル戦略——月次の既存店売上は、業績を左右する要素のほんの一部です。さらに、月次数字が公表される頃には市場はすでに次の決算や経営計画を織り込んで動いています。Google検索が株を後追いしたのと同じ構造で、観測できる数字は株価のタイミングには間に合わない——外食の王者でも例外ではありませんでした。
結論:月次先回り通説は2社連続で支持されない
同月相関はほぼゼロ(+0.012)。月次が株を安定して先行する関係も見当たらず。第1弾のユニクロ(平時同月+0.05)と合わせ、月次先回り通説は2社連続でデータに支持されませんでした。月次既存店売上は事業の温度計であって、株価の予言装置ではない。当サイトがカナリアや検索トレンドで繰り返し見てきた結論が、外食でも当てはまりました。なお本記事はマクドナルドHD1社・n=41ヶ月(参考値)の検証で、全外食・小売への一般化はできません。
同月+0.012がほぼゼロなのは「橋が細い」から(メカニズム)
月次で先回りできるかは、国内既存店売上→業績→2702株という橋の太さで決まります。ここが細い。マクドナルドHD株を動かすのは、原材料コスト(牛肉・ポテト・油)、為替、プロモーション費用、米本社のグローバル戦略まで含めた全体で、国内既存店売上は業績を左右する要素のほんの一部にすぎません。だから同月相関は+0.012=ほぼゼロ——橋がほとんど架かっていない状態です。第1弾ユニクロ(平時同月+0.05)と同じで、「国内の一部門の月次」は「株価全体」の温度計にはなりません。しかも月次が公表される頃には、市場はすでに次の決算や経営計画を織り込んで動いている——観測できる数字が株価のタイミングに間に合わない、という月次共通の断線がここにもあります。
「半年先行+0.272」を先回りの根拠にするのが一番危ない(数字の読み方)
ラグ別で唯一大きく見えるのが、月次が株を先行するラグ6ヶ月・+0.272です。ここを抜き出して「月次を見れば半年先回りできる」と読むのが、この検証で最も危ない誤読です。理由は三つ。第一に、これはラグ0〜6を走査した最大値で、同月+0.012・lag1〜5は+0.124〜+0.200の小幅。7つのラグから一番大きい1つを拾えば、どんな系列でも「効いた」ことにできます。第二に、n=41は参考値水準(n<60・ユニクロn=96より短い)で、この本数でラグ走査すれば+0.27前後は偶然でも出ます。第三に、方向を逆に見た「株→月次」もラグ6で−0.252——順方向とほぼ同じ大きさが逆符号で立つ以上、走査すれば正も負も作れることの証拠で、+0.272を先行性の根拠にはできません。最悪ケースはこうです——「月次が良いから買い」を半年先行の+0.272に賭けると、同月ではほぼゼロの関係に張ることになります。
「月次で先回りできるか」を自分で確かめる3ステップ
この記事の値打ちは「マクドナルドの答え」より、“月次で先回り”という戦法を、どの銘柄でも同じ手順で検証できる型にあります。
- ①まず同月(lag0)で測る——ここが+0.012のようにほぼゼロなら、その時点で先回りの土台は崩れています。半年ずらした最大値を探しに行く前に、同月を見ます。
- ②nを確認し、n<60は参考値として扱う——n=41のような短い系列でラグ0〜6を走査すると、都合のいいラグに偶然の山が立ちます。本数の裏付けが先です。
- ③順方向と逆方向、両方のラグ最大値を出す——月次→株(+0.272)と株→月次(−0.252)のように逆方向にも同程度が立つなら、それはラグ走査が生んだ見かけ=偶然を疑う合図です。
この3点が揃って初めて、月次は「先回りの当たり馬券」ではなく事業の温度計として正しく使える一次情報に変わります。第1弾はユニクロの月次×ファストリ株で、平時同月+0.05と同じ結論でした。ラグ走査で符号を作れてしまう罠そのものは多重検定とp値の誤用で分解しています。1つの結論を覚えるより、この検証の型を持ち帰るほうが役に立ちます。数字の読み方もあわせてどうぞ。
基準日:2026年6月13日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。数字の読み方もあわせてご覧ください。
出典:月次データは日本マクドナルドHD公式IR「IRセールスリポート」(既存店売上 前年比・2023年1月〜2026年5月・n=41ヶ月)https://www.mcd-holdings.co.jp/ir/sales_report/(2026-06-13取得)。株価はYahoo Finance(2702・調整後終値・月次前年比)。相関は当サイト算出(同月・ラグ0〜6走査・両方向)。n=41は参考値水準で、統計的有意性や全業種への一般化を示すものではありません。基準日2026-06-13