アノマリー検証2026-06-11 公開
SQ週は荒れる・下げる?——日経225で61年分のメジャーSQを検証
SQ(特別清算指数)は、株価指数先物・オプションを清算するために算出される値です。SQ週とは、そのSQ算出日(第2金曜)を含む週のこと。先物とオプションが同時に切り替わるメジャーSQ(3・6・9・12月の第2金曜)と、オプションだけのマイナーSQ(その他の月)があり、とくにメジャーSQ週は「需給が偏って荒れる」「SQに向けて売られやすい」とよく言われます。本当にそうなのか、日経225の1965〜2026年・約15,100営業日(メジャーSQ n=245回)の日次データで検証しました。マイナーSQ週との比較は記事後半で扱います。
SQ週は「下げるサイン」ではありませんでした。ただしSQ当日は通常日より少し値動きが大きくなるため、方向を当てにいくより、当日の値幅で逆指値や短期注文が意図せず約定しないかに注意するのが現実的です。(過去検証であり、売買を勧めるものではありません)
| わかること | わからないこと |
|---|---|
| SQ週に下落の偏りがあったか | 次のSQ週に上がるか下がるか |
| SQ当日に値動きが大きくなったか | 個別銘柄の売買タイミング |
| メジャーSQとマイナーSQの違い | いま売買すべきか |
| 過去にどう構えるべきだったか | 将来の利益 |
① 「SQは下げる」か——方向の偏りは確認できず
| 区分 | 平均リターン | 中央値 | 勝率 | n |
|---|---|---|---|---|
| ベースライン(全営業日) | +0.034% | +0.044% | 52% | 15,101 |
| メジャーSQ当日 | +0.041% | +0.055% | 53% | 245 |
| メジャーSQ週(月〜金) | +0.071% | +0.192% | 53% | 245 |
| メジャーSQ翌週 | +0.017% | +0.166% | 52% | 245 |

「SQに向けて売られる」という方向の偏りは、日経225では確認できませんでした。SQ当日・SQ週・翌週とも勝率は52〜53%で、ほぼ平常運転です。SQ週の週間リターン平均(+0.071%)はむしろ通常の週の期待値(日次平均×5日 ≒ +0.17%)をやや下回りますが、これは差というより誤差の範囲です。
② マイナーSQとの比較——弱いのはむしろ「その他の月」
| 区分 | SQ当日 | SQ週(月〜金) | n |
|---|---|---|---|
| メジャーSQ(3・6・9・12月) | +0.041% | +0.071% | 245 |
| マイナーSQ(その他8か月) | +0.013% | -0.107% | 492 |
意外なことに、うっすら弱いのは話題になりがちなメジャーSQではなくマイナーSQ週(オプションのみ清算)の方でした。週間で平均-0.107%・勝率49%とわずかにマイナス。とはいえこれも-0.1%程度で、売買の根拠にできる大きさではありません。
③ 「SQは荒れる」か——変動の大きさはSQ当日だけ少し高い
「荒れる」という言葉は値下がりではなく変動の大きさ(ボラティリティ)を指します。そこで方向ではなく、1日の値動きの幅も測りました。
| 区分 | 日次の標準偏差 | 日次変動の絶対値平均 |
|---|---|---|
| ベースライン(全営業日) | 1.28% | 0.87% |
| メジャーSQ当日 | 1.37% | 0.94% |
| メジャーSQ週の各日 | 1.29% | 0.89% |
「荒れる」はSQ当日に限ればうっすら本当でした。SQ当日の値動きの幅は通常日より約7%大きく、直近10年に絞るとその差は約17%(当日の標準偏差1.55% 対 通常1.32%)まで広がります。ただし「週全体が荒れる」わけではなく、変動が高まるのは清算が集中する当日にほぼ限られます。
④ 直近10年——下げるどころかSQ週は堅調
| 区分(直近10年・メジャーSQ) | 平均リターン | 中央値 | 勝率 | n |
|---|---|---|---|---|
| SQ当日 | -0.103% | +0.228% | 54% | 39 |
| SQ週(月〜金) | +0.134% | +0.450% | 67% | 39 |
直近10年に絞ると、メジャーSQ週は勝率67%・中央値+0.45%とむしろ堅調でした。SQ当日の平均がマイナス(-0.103%)なのは数回の大きな下げ日に引っ張られたためで、中央値はプラス。「SQ週は下げる」という印象とは逆の結果です。n=39と少ないので参考値として見てください。
| やること | 理由 |
|---|---|
| ① SQ週だからといって慌てて売らない | 61年分では「SQ週は下がる」という偏りは確認できなかった(直近10年はむしろ勝率67%) |
| ② SQ当日は、逆指値や短期注文の誤発動に注意 | 変動が大きいのはSQ当日が中心。普段より値幅が出やすい |
| ③「話題になる=危険」と決めつけない | メジャーSQより、むしろマイナーSQ週の方がわずかに弱かった |
SQは「下げ・荒れのサイン」とまでは言えません。過去データでは、SQ週だからといって過度に怖がる根拠は薄い結果でした。
結論
「メジャーSQ週は下げやすい」は日経225では確認できませんでした。SQ当日も週も勝率はほぼ50%台で、方向の偏りはありません。一方で「荒れる(変動が大きい)」はSQ当日に限ればうっすら本当で、清算が集中する当日だけ値動きの幅がやや広がります。SQを「下げのサイン」として身構えるより、「当日は普段より少し振れやすい日」と捉えるのが実態に近いようです。アノマリーは過去の傾向の記録であって、未来を保証するものではありません。
「下げないのに荒れる」の分離がなぜ効くのか(仮説・断定はしません)
この検証で一番実務的に効くのは、「方向(下げる)」と「振れ(荒れる)」を分けて測ったことです。通説は両者を「SQは危ない」の一語に混ぜますが、データでは方向の偏りは消え(勝率52〜53%)、振れだけがSQ当日に残りました(標準偏差1.28%→1.37%)。SQは先物・オプションの清算値を算出する日で、その一点に向けて建玉の手じまいや裁定の解消が時間的に集中します。売りと買いが同じ日に殺到すれば値動きの幅は広がる——だから「荒れる」は当日に出る。一方で清算は売り方買い方の両方から出るので方向は打ち消し合い、「下げる」の偏りは残らない。「荒れるが下げない」という一見ちぐはぐな結果は、清算の集中という同じ原因の振れ側だけが表に出た姿だと整理できます。実際、直近10年で当日の振れの差が約7%→約17%へ広がったのは、デリバティブ取引の規模が増したことと整合的に読めます。もっとも、これは因果を証明したものではありません。「マイナーSQ週の方がうっすら弱かった(-0.107%)」ことも含め、SQと株価の関係は通説ほど単純ではない、というのが正直なところです。
この「当日1.37%」を売買に使うときの落とし穴(数字の読み方)
「SQ当日は荒れる」を「だから当日に張る」と機械的に読むのは危険です。まず荒れるのは方向を教えてくれない。標準偏差が大きいとは「上にも下にも大きく動きうる」という意味で、どちらへ動くかは事前に読めず、振れは利益のチャンスであると同時に逆指値や短期注文が意図せず約定するリスクでもあります。次に、直近10年のSQ週が勝率67%・中央値+0.45%と堅調に見える点も過信は禁物です。n=39と薄く、SQ当日の平均が-0.103%なのに中央値は+0.228%——数回の大きな下げ日が平均を引っ張った形で、平均だけ見れば弱く中央値だけ見れば強い。指標の取り方で印象が反転するほど標本が薄いということです。SQアノマリーは「当日は普段より振れやすい」という身構え方の材料には使えても、「SQ週で張れば勝てる」という機械的トレードの根拠にはならない——これがこの1本の持ち帰りです。
同じ「方向と振れを分ける」検証を、他のイベントで再現する
この記事の型は、SQ以外の「荒れると言われる日」——決算発表日、FOMC、雇用統計——にそのまま使えます。①方向(平均・中央値・勝率)と振れ(標準偏差・変動幅)を別々に測って下げるのか荒れるのかを分ける、②必ずベースライン(全営業日)と並べて「普段と比べて特別か」を見る、③平均と中央値が食い違うときは少数の極端日が効いている合図と疑う——この3点が揃って初めて、「◯◯は荒れる」は「よく聞く話」から「自分で確かめた数字」に変わります。同じ「翌日の反応」を測ったFOMC・日銀会合や米雇用統計も、まったく同じ型で分解した姉妹記事です。
基準日:2026年6月11日。メジャーSQ日は各月の第2金曜(休場時は直前営業日)として集計。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー検証の一覧もご覧ください。
出典:株価データはYahoo Finance(日経225 ^N225・日次・調整後終値)
SQ週の定義・読み方は相場用語ミニ辞典にもまとめている。