連動検証2026-06-19 公開
完全失業者数と人材・求人株の相関検証——「失業が増えると人材業は儲かる?」を過去データで確かめる
「景気が悪くなって失業者が増えると、人材派遣や求人サービスは逆に活況になる」という声を聞くことがあります。再就職支援・派遣受注・転職サービスのニーズが高まるとも言えますが、実際の株価はどう動いてきたのか。総務省「労働力調査」の月次データ(1990年〜2026年4月)と、上場する人材・求人関連5社の株価を照合しました。
検証の設計
- 統計:総務省「労働力調査」完全失業者数(男女計)— e-Stat Dashboard(月次、1990年1月〜2026年4月)
- 株価:各社の月次終値(Yahoo Finance・調整後終値)
- 変換:統計・株価ともに前年同月比(YoY)に変換して相関を計算
- ラグ:統計が0〜6ヶ月先行した場合を走査し、|r|が最大のラグを採用
- 期間窓:①全期間(full)②コロナ期(2020〜2021年)を除外(ex_covid)の2種
- 判定基準:|r|≧0.5を「強い連動」、0.3〜0.5を「中程度」、0.3未満を「弱い/無相関」とする(本サイト共通)
測定結果
n は両系列が重なる月数。全期間のnは株価上場時期に依存します。
| 銘柄(コード) | r(全期間) | 最適ラグ | n(月) | r(コロナ除外) | n | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| パーソルHD(2181) | −0.43 | 0ヶ月 | 230 | −0.45 | 206 | 中程度(逆方向) |
| JACリクルートメント(2124) | −0.37 | 0ヶ月 | 224 | −0.35 | 200 | 中程度(逆方向) |
| エン・ジャパン(4849) | −0.31 | 0ヶ月 | 278 | −0.28 | 254 | やや逆方向 |
| ディップ(2379) | −0.24 | 0ヶ月 | 252 | −0.25 | 228 | 弱い逆方向 |
| リクルートHD(6098) | +0.21 | 6ヶ月 | 123 | −0.24 | 103 | 符号が窓で逆転 |
何が分かったか
「失業者数が増えると人材株が上がる」という通説は、過去データでは支持されない。むしろ大半の銘柄で逆方向の連動が観察されました。
最も顕著なパーソルHDは、失業者数前年比と株価前年比の相関がr≒−0.43〜−0.45(コロナ期除外後も安定)。「失業者が増えるほど株安」という過去傾向です。この方向は「景気悪化で企業の採用意欲そのものが落ち、派遣需要・有料職業紹介の受注が絞られる」という解釈と整合します。
一方、リクルートHDは全期間でr=+0.21(6ヶ月ラグ)、コロナ除外でr=−0.24と符号が反転します。データ窓の選び方で結論が変わる不安定さがあり、「効く/効かない」どちらとも言えない状態です。
ただし相関係数の絶対値はいずれも0.5未満であり、統計的にも「強い連動」ではありません。株価は売上高・採用単価・海外展開・M&A等の要因にも左右されるため、失業者数単体で人材株の動きを説明することは限界があります。
通説検証まとめ
- 「失業が増えると人材業は儲かる」→ 過去データでは逆の傾向(企業採用の縮小が優勢)
- ラグ0ヶ月(同時)で最大相関となる銘柄が多く、先行指標としての機能は確認できず
- コロナ期除外で相関係数がやや強まる傾向あり。コロナ時の特殊変動が一部ノイズになっている可能性
- リクルートHDは窓によって方向が逆転—単純な数値だけで判断するリスクの典型例
この指標の限界と注意点
- 「完全失業者数」は求職活動をしていない潜在的失業者を含まない(定義の制約)
- 月次測定のため景気の転換点前後で遅行しやすい
- 本検証は過去の傾向分析であり、将来の相関が継続する保証はない
- 相関の方向・強さは分析期間の選び方に依存する
基準日:2026年6月19日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。数字の読み方もあわせてご覧ください。
出典:統計:総務省「労働力調査」完全失業者数(男女計)、e-Stat Dashboard(月次)。株価:Yahoo Finance 月次調整後終値。測定期間:各銘柄の上場時期〜2026年4月。