相関の寿命2026-06-14 公開

「円安=トヨタ高」はいつ効いて、いつ壊れたか——相関の寿命 第1号

円安になればトヨタ株が上がる」——株クラ共通の常識です。実際、全期間(2001-2026年・n=314)の同月相関はr=+0.545。「やっぱり連動している」と思える数字です。ところがこの+0.545は、「平均の幻」かもしれません。ドル円とトヨタ株(7203)を5年窓に割ると、2010-14のアベノミクス円安期は+0.886(バキバキ連動)なのに、2020-24は+0.173(ほぼ崩壊)へ。36ヶ月ローリング相関では一時−0.48(逆相関)まで落ちた。相関は「生き物」で、効く時期と死ぬ時期がある——それを時系列で可視化するのが新シリーズ「相関の寿命」の核心です。第1号はこのサイトで最もよく知られたペア、ドル円×トヨタで始めます。

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全期間の相関:+0.545——でもこの数字だけ信じると危ない

ドル円(月次終値)とトヨタ自動車(7203)株価(月次終値)、いずれも前年同月比(YoY)で揃え、2001年1月〜2026年5月(n=314)の同月相関を測るとr=+0.545

この単一の数字だけ見ると「円安=トヨタ高の通説は正しい、+0.55は中程度の連動」という印象になります。しかし全期間を一本のrで要約するのは危険です。期間を5年ごとに割ってみると、まったく違う景色が見えてきます。

5年窓ごとの相関:激変のテーブル

期間相関 r局面
2005-2009+0.855リーマン前後も強く連動
2010-2014+0.886アベノミクス円安期——鉄板連動
2015-2019+0.794連動継続
2020-2024+0.173崩壊
2025-2026+0.637復活(n=18・参考値)

出典:ドル円・トヨタ株とも Yahoo Finance(月次終値・前年同月比)。相関は当サイト算出(同月相関・5年窓)。2025-2026窓はn=18で参考値。

ドル円×トヨタ株の36ヶ月ローリング相関(2003-2026年)——2010-14はプラス0.9近くで強連動、2020-24はゼロ〜マイナス圏へ崩壊、2025年に復活」style=
36ヶ月ローリング相関(2003-2026年)。min−0.48〜max+0.96(std 0.43)で激しく変動。全期間の単一r=+0.545は、この波の平均にすぎない。出典:Yahoo Finance(月次)、当サイト算出。

36ヶ月ローリング相関:min −0.48 〜 max +0.96

さらに細かく見るため、36ヶ月(3年)の移動窓で相関を計算すると:

「円安=トヨタ高」が「鉄板」だった時期(2010-14)は+0.9近くで推移。ところが2020年前後から急低下し、一時逆相関(−0.48)になった時期もあった。上のチャートがその軌跡です。

なぜ2020-24に崩れたか(見立て)

2020-24の崩壊(+0.173)については、以下の複合要因が考えられます(当サイトの見立て・断定ではありません):

  1. コロナ後の半導体不足と減産:2021-22年にかけてトヨタは半導体不足による大規模な減産を余儀なくされた。円安で「理論上の追い風」があっても、台数を売れなければ利益に乗らない。
  2. 「悪い円安」局面:2022年以降の急激な円安(1ドル=130円超え)は、資源・部品・エネルギーのコスト増を同時に招いた。為替差益を部材コスト増が相殺する「悪い円安」局面でも、通説は機能しにくい。
  3. EV競争・トヨタ固有の業績要因:EV戦略への転換期、株式市場はトヨタ固有の戦略リスクで独自に値動きした面もある(為替との切り離し)。

これらが重なり、「円安になってもトヨタ株が上がらない」——あるいは「円安なのにトヨタが下がる」——という期間が生まれた。

2025年に復活(+0.637)——ただし参考値

2025-2026年の窓(n=18)では+0.637と連動が戻っています。生産の正常化、最高益更新でトヨタの業績に再び円安メリットが効くようになったと見られます。ただしn=18は参考値——短い窓の高いrは方向の証拠にならない(ホテル株窓分解が典型)点には注意が必要です。

補足:変わらない連動もある——SOX×東京エレクトロン

すべての相関が「生き物」で変わるわけではありません。SOX(フィラデルフィア半導体指数)×東京エレクトロンは25年間でr=+0.855と、5年窓に割っても+0.6〜+0.9台で安定して連動し続けています。

当サイトが「変わる連動(ドル円×トヨタ)と変わらない連動(SOX×東エレ)がある」と言うのはそういう意味です。

「相関の寿命」シリーズの核心:単一の数字だけ信じると危ない

この記事が示したかったのは、一つのシンプルな事実です。

全期間の単一のr値は「平均の幻」であり、相関は時期によって効く・効かない・逆転するという「寿命」を持っている。

「円安=トヨタ高、r=+0.55」という数字を鵜呑みにして2020-24にトレードしていたら、「崩壊した連動」に乗っていたことになります。同じ問題は企業物価の窓長の罠でも実証しました——25年r=+0.44の商社株が直近5年では逆相関に見える。

「相関の寿命」シリーズは、こうした時系列での崩壊と復活を可視化していきます。相関は調べた瞬間から賞味期限が始まる——それがこのサイトの差別化の核心です。

基準日:2026年6月14日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。数字の読み方もあわせてご覧ください。

出典:ドル円・トヨタ自動車(7203)株価とも Yahoo Finance(月次終値・前年同月比)。全期間 2001年1月〜2026年5月(n=314)。36ヶ月ローリング相関と5年窓の同月相関は当サイト算出。2025-2026窓はn=18で参考値。相関は過去データの傾向を示すもので、将来を保証・予測するものではありません。基準日2026-06-14

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