相関の寿命2026-06-15 公開
「円安=ファストリ高」は昔は逆だった——ドル円相関は−0.55から+0.76へ
いまでこそファーストリテイリングは「円安メリット株」と見られやすい。だが、ドル円と株価を前年同月比でそろえて全期間を見ると、相関は+0.13。ほぼ無相関だ。理由は単純ではない——昔は逆に動いていたからだ。当時のユニクロは円安が「悪材料」の内需デフレ株で、海外SPA化とともに円安が「好材料」へ。相関は逆から正へ反転して生まれた。第2号ソニー(正→逆)のちょうど裏返しだ。
「円安=ファストリ株高」は、昔はむしろ逆だった
いまでこそファーストリテイリング(9983)は、海外売上が半分を超えるグローバル企業として「円安メリット株」に数えられる。だが、それは最初からそうだったわけではない。ドル円とファストリ株を前年同月比で揃え、全期間(2001-2026・n=306)で相関を測ると——r=+0.133。ほぼ無相関だ。「円安=ユニクロ高」は通しで見ると、まったく成立していない。
これは第6号・日経平均や第2号・ソニーで見た「平均の幻」と同じ匂いがする。実際、窓に割ると正体がはっきり出た。ファストリはかつて円安が"悪材料"だった内需株から、円安が"好材料"のグローバル株へと変わり、ドル円との相関が逆符号から生まれた——第2号ソニーのちょうど裏返しの物語だ。
5年窓:−0.55から+0.76へ、符号が反転して生まれた
| 期間 | 相関 r | そのころのユニクロ |
|---|---|---|
| 2001-2004 | −0.555 | 国内フリースブーム・デフレ下の内需勝ち組(n=48) |
| 2005-2009 | +0.021 | 海外進出の助走・ほぼ無相関 |
| 2010-2014 | +0.761 | アジア出店加速・グローバルSPA化 |
| 2015-2019 | +0.647 | 海外売上が国内に迫る |
| 2020-2024 | −0.212 | コロナで海外休業・国内回帰の混在(窓注意) |
| 2025-2026 | +0.620 | 海外売上が国内を上回る(n=18・参考値) |
出典:ドル円・ファーストリテイリング(9983)とも前年同月比。相関は当サイト算出(同月相関・5年窓)。2000-2004はn=48、2025-2026はn=18で参考値。
2000年代前半は−0.555の逆相関。当時のユニクロは国内のフリースブームに沸くデフレ下の内需勝ち組で、円安はむしろ輸入コスト(中国生産の調達コスト)を押し上げる悪材料だった。それが海外出店を加速させた2010年代に+0.761の順相関へ反転。海外利益の円換算と海外事業価値の押し上げで、円安が好材料に変わった。連動は最初から在ったのではなく、会社の変貌とともに符号を変えて生まれた。

36ヶ月ローリング:min −0.67(2004)→ max +0.91(2016)
3年移動窓で追うと、min−0.67(2004年)からmax+0.91(2016年)まで振れた(std0.52)。この振れ幅はソニー(std0.54)に匹敵する、サイト最大級だ。マイナスの谷(内需デフレ株時代)からプラスの山(グローバルSPA時代)へ、相関が地殻変動のように移動している。直近の2020-24窓が−0.21とまた崩れているのは、コロナで海外店の休業と国内回帰が入り混じり連動が乱れたため(窓注意)。2025-2026は+0.62に戻っているが、n=18の参考値だ。
なぜ符号が反転したのか(見立て)
- 内需デフレ株だった時代:2000年代前半のユニクロは、国内のデフレ消費の象徴。生産は中国中心で、円安は調達コスト増=利益圧迫。しかも「安さ」が武器の内需株にとって、円安・インフレ方向はテーマとして逆風だった。だから円安と株価は逆に動いた。
- グローバルSPAへの変貌:2010年代に中国・東南アジアへ出店を加速し、海外売上比率が大きく上昇。海外で稼いだ利益を円に換算するとき、円安は増益要因になる。さらに「世界のユニクロ」という成長ストーリーが、円安局面(=日本株全体が買われる地合い)と重なりやすくなった。輸出企業に近い為替感応度を、後から獲得した。
- ソニーの正反対の経路:第2号ソニーは、円安メリットの輸出ハイテクから、為替に左右されにくいコンテンツ・金融の複合体へ変わり、相関が正→逆に転じた。ファストリは内需デフレ株からグローバル小売へ変わり、逆→正へ転じた。会社が向かう方向が逆なら、相関の生まれ方・死に方も逆になる。
ここで見たのは相関であって因果ではない。「いまは円安でユニクロが上がる」と断定する話でもない(直近もコロナで一度崩れた)。言えるのは、「円安メリット株かどうかは、その会社が今どんな会社かで決まり、時とともに変わる」ということだ。
第10の型:「誕生(逆相関から生まれた連動)」
- 第1号トヨタ:崩壊→復活/第2号ソニー:符号反転(正→逆)/第3号コマツ:ブーム→フェード
- 第4号三井物産:死なない/第5号村田:離脱→復帰/第6号 日経平均:崩壊→復活の指数版
- 第7号 京成:共振の幻/第8号 東京エレクトロン:不死/第9号 任天堂:離脱
- 第10号 ファーストリテイリング:誕生——内需デフレ株時代は円安が悪材料で−0.55の逆相関、グローバルSPA化で+0.76の順相関へ。連動は最初から在ったのでなく、会社の変貌とともに符号を変えて生まれた。第2号ソニー(正→逆)の正反対(逆→正)。
まとめ
- ドル円×ファストリの全期間相関は+0.133(ほぼ無相関)だが、これは逆相関と順相関を均した「平均の幻」。5年窓は2001-04 −0.55 → 2010-14 +0.76、36ヶ月ローリングは−0.67〜+0.91(std0.52)でサイト最大級の振れ。
- 内需デフレ株からグローバルSPAへの変貌で、円安メリットは後から生まれた(第2号ソニーの逆コース)。円安メリット株かは会社の今で決まり、時とともに変わる。同月一致で先回り不可・相関≠因果。
基準日:2026年6月15日。本記事は過去データの傾向を示すもので、将来の値動きを予測・保証するものではなく、投資助言でもありません。アノマリー・相関は時期によって効果が変わります。数字の読み方もあわせてご覧ください。
出典:ドル円・ファーストリテイリング(9983)株価とも前年同月比(Yahoo Finance・月次・調整後終値)。全期間 2001年〜2026年(n=306)。5年窓・36ヶ月ローリング相関は当サイト算出。2001-2004はn=48、2025-2026窓はn=18で参考値。両者は同月一致(lag0)で先行関係ではありません。相関は過去の傾向で将来を保証しません。基準日2026-06-15